どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム47 『皇居に咲いたニリンソウ』

2014-05-11 04:09:17 | ポエム

 

      フキアゲニリンソウ

      (皇居で発見された新種)

 

 

わたし とうとう見つかっちゃった

吹上御苑の雑木林で 仲間と遊んでいるところを

目立たないように 淑やかに咲いていたのに

気づく人は 気づいてくれたのね

 

ときどき散歩に訪れる老夫婦は

いつも慈しむように わたしを見つめてくれた

「ああ、みちこ 今年もニリンソウが咲いたね」 

「はい、ほんとうに美しいこと・・・・」

 

腰をかがめ しげしげと見入る四つの瞳

毎年のように起こる災害の被災地で

膝を折って やさしく話しかける姿と変わりない

あのかぐわしい呼気が わたしを震わすのです

 

わたしが新種のニリンソウだと告げられた日

老夫婦は ほんとうに驚いたそうだ

わたしの白さが この国の未来であってくれと

いつにもまして つよく願ったのかもしれない

 

ひとの頭の中の好き嫌い

国の仕組みの中のねじり合い

ロシアも中国も そして日本のやることも

なんだか急に はやり病にかかったみたい

 

あなたたち 象徴って知っている?

象徴を生きるって どういうことか知っていますか

煩悩から解脱した高僧や 戦争を放棄した憲法や

わたしが身につけた 白の輝きと似ていませんか

 

フキアゲニリンソウと命名された日の朝も

老夫婦は わたしを見に来てくれた

仲睦まじく腕とりあって 天空を照らす日輪のように

世界の平和と 日本の人びとの安寧を祈りながら

 

  

 

 


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
やさしい光 (aqua)
2014-05-11 23:17:07
tadaoxさま こんばんは

老夫婦と寄り添って咲くニリンソウ
とてもよく似た境遇を
大切に慈しまれていたのでしょうね

新種のニリンソウだと知らされて
フキアゲニリンソウと命名された日も
やはり象徴の重さを感じられたのでしょうか?

凛として
支え合いながら咲く白い花に
やさしい光が差す光景が目に浮かびます

とても清々しい気分で
拝読させていただきました

ありがとうございました


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ニリンソウ (tadaox)
2014-05-12 15:53:54
(aqua)様、いろいろ配慮に満ちたコメントを戴きありがとうございました。
ニリンソウから想起される思いは、あくまでも白く、やさしさに包まれています。

イメージしたものを、あるがままに置いてみましたが、光のある光景を思い浮かべていただきましたことに、心から感謝申し上げます。
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吹上御苑に咲いたニリンソウ (いわどの山荘主人)
2014-05-13 16:22:10
このブログを印刷して二度三度と読み返しております。
老夫婦の美しい会話、本当に楽しいポエム、
作者のやさしい心遣いが伺われます。
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会話 (tadaox)
2014-05-13 23:57:09
(いわどの山荘主人)様、こんばんは。
うれしいコメントをいただき、ありがとうございます。

老夫婦の会話に触れていただき、感謝に堪えません。
きっと、この短いやり取りを目にしたニリンソウも本望だったのではないでしょうか。
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