どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

自薦ポエム111 『風露のように寂しげに』

2021-12-15 00:24:59 | ポエム

AsamaFuuro 06f2560.jpg ヒメフウロ

  (ウェブ画像)より

 

にがい思い出は

いつまでも苦い

数十年の時を経て

なお胸底に沈んでいる

 

圭吾くん きのうどうしたの

待ち合わせしたんでしょ

エミちゃん駅で十一時まで

ずっと待ってたらしいわよ

 

そ、そんな おかしいよ

ぼくが誘ったとき返事もないし

下を向いて困っている様子

だから もうデートはない、と

 

でも けっこう強く押してたでしょ

女はそれで その気になるものよ

人目があるからOKできないけど

圭吾くんの誘い 嬉しかったのよ

 

まさか てっきり断られたかと

ばかだね あんた朴念仁だわ

すっぽかされた身になってご覧よ

あの子 とっても寂しそうだったよ

 

つらいつらい 言葉が出ない

弁当まで用意して 二時間も・・・・

胆汁のような後悔が 逆流する

自己嫌悪が全身を黄色に染める

 

にがい思い出を帳消しにしたくて

白い花をたずね歩いた

寂しそうに戻っていったというエミちゃんは

閑散とした駅構内のヒメフウロ

 

にがい思い出は

いつまでたっても 苦いまま

ひたむきな花びらは

正面からぼくを見つめる

 

半端な人生をたどった男など

さっさと見切ってよかったんだよ

だけど エミちゃんは白い風露のまま

にがい思い出は いつまでも苦いまま

 

(2018/06/17より再掲)

 

 

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