「雪国」
あさだ
かがやく雪嶺の朝だ
三国峠の新雪をきしきしと踏めば
脚絆の足首がここちよく引き締まる
断崖から無数に垂れさがる氷柱を
なににたとえよう
石の手摺に寄りかかり地獄谷を覗きこむ
ーーめまいの奥で
放射状の枝は何を呼びかけようとしたのか
隧道を風とともにくぐり抜ける
国境の雪の下に
せせらぎが音をたてていた
林道を横ぎる野うさぎの雪跡
くっきりと刻んだ僕の足あと
挨拶をかわして過ぎた若者たちの道筋も
すべて躍動する命のしるしだ
淡いひかりの中を
風花が舞っている
時の流れを量るように
ゆっくりと落ちてくる
見上げる山脈の向こうには
ぼくの心の雪国がある
駒子は風花となってなおも降りかかり
無心に唄う葉子の澄んだ声は
白い尾根を越えて
ひがしの空へ吹きわたっている
にほんブログ村
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます