お嬢さんがた 夕闇の中で鬼灯を鳴らさないで
赤い実を指先で揉みながら 種を取り出さないで
熟れた実を包む袋を いたずらに破かないで
緑から紅に変身する瞬間を うかつに摘み取らないで
時間を逆行することはできないと承知の上で
あなた方の無知を言い募るのは
根気よく抜いた鬼灯風船の空洞が
たそがれ時の邪気を吸おうとしているからだよ
知らないだろうが 口の中には禍いが棲む
ヴューヴューと呻く音は 魔物を呼び寄せる
背後から覆いかぶさる厄災に 油断は禁物
鬼灯市からの帰館は そう容易くはないのだ
目もあやな緑と赤の刺激よ
いきなりの成熟ほど悲しいものはない
臓器にも似て妖しげな鬼灯の袋には
あなた方の運命が刻まれているかもしれない
父となり母となり あたりに杞憂は満ち溢れる
子孫をつなぐ遺伝子は 鎖のように強靭なのに
個々に切り離されたヒト科の生物は ただウロウロ・・・・
鬼灯を鳴らした罪障に怯え 今夜もアルカロイドの夢を見る
(『鬼灯を鳴らさないで』2014/12/07より一部修正して再掲)
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