どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム86 『ひねくれ姫辛夷』

2015-05-06 00:44:07 | ポエム

 

 

     姫辛夷

    (城跡ほっつき歩記)より

  

 

姫は少々ひねくれ者

空がこんなに青いというのに  

それに見合った花びらではなく

世をすねたくしゃくしゃ花弁を生み出すのだ

 

空が青いということは

地球が平和ということだ

人と人との対話がはずみ

ともに楽しく生きようということなんだ

 

だれよりも季節に従順なはずなのに

姫はなぜそのようにひねくれるのか

まるで不穏な雲を呼ぶように

春の猛りを演じて見せるのか

 

見てごらんよ

夏椿のすっきりとした立ち姿を

深山への登り口にたたずんで

ひかりを分け合っているではないか

 

姫には持って生まれた色がある

一族の已むにやまれぬ血を内包しているのか

いったんは恥じらいのピンクに花開きながら

不満だらけの令嬢のように唇をゆがめるのだ

 

世界はもっと素直なものじゃなかったのか

早春譜のメロディーを聞きながら

なぜ名のみの平和を掲げるのだ

茶番の舞台で得々と手を挙げる仕草を好むのだ

 

姫よ 美しい日本の姫辛夷よ

あなたの空はいま悪しき気配に覆われている

希望や願いをねじ伏せる快感に染まっている

制御不能の進行する怖さに気づかないのだろうか

 

夏の入口はあ~ら魔法の解ける時季

名水もただの水だし

うま酒も酔いが覚めればただ寂寥

闇にうごめく多財鬼の気配は熄まないが・・・・

 

姫は少々ひねくれ者

美しい日本の空と

美しい姫辛夷のピンクに飽き足らず

くしゃくしゃの花弁を創ってみたいのか

 

   


コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
個性的 (aqua)
2015-05-10 16:14:28
こんにちは

よく見ると花一つ一つが躍動的で
姿が違うのですね
モクレンは飛び立つ白い鳥のように見えるのですが
姫辛夷はこちらではあまり見かけず
モクレンをコンパクトにした花のように思えます

美しいのに花びらはくしゃくしゃしてますね
温暖化で不安定な気候を憂いているからでしょうか?
姫辛夷の警告のようにも思えますね
花を愛でながら
素敵なポエムが浮かんできたのでしょうから
とても魅力的な花だと思います


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春は足早に・・・・ (tadaox)
2015-05-10 23:12:37
(aqua)様こんばんは。
こちらでは、モクレンに先んじてコブシが咲きます。
ヒメコブシもコブシの一種で、はじめ仄かなピンクの蕾ですが、まもなく画像のようにねじれた花弁で花開くようです。

一方、詩のモチーフには本来の花の美しさとは異質の意図が含まれていますが、これらをも巻き込んで咲いて欲しいといつも願っています。
今回もコメントをいただき、ありがとうございました。
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