ヒメフウロ
(城跡ほっつき歩記)より
にがい思い出は
いつまでも苦い
数十年の時を経て
なお胸底に沈んでいる
圭吾くん きのうどうしたの
待ち合わせしたんでしょ
エミちゃん駅で十一時まで
ずっと待ってたらしいわよ
そ、そんな おかしいよ
ぼくが誘ったとき返事もないし
下を向いて困っている様子
だから もうデートはない、と
でも けっこう強く押してたでしょ
女はそれで その気になるものよ
人目があるからOKできないけど
圭吾くんの誘い 嬉しかったのよ
まさか てっきり断られたかと
ばかだね あんた朴念仁だわ
すっぽかされた身になってご覧よ
あの子 とっても寂しそうだったよ
つらいつらい 言葉が出ない
弁当まで用意して 二時間も・・・・
胆汁のような後悔が 逆流する
自己嫌悪が全身を黄色に染める
にがい思い出を帳消しにしたくて
白い花をたずね歩いた
寂しそうに戻っていったというエミちゃんは
閑散とした駅構内のヒメフウロ
にがい思い出は
いつまでたっても 苦いまま
ひたむきな花びらは
正面からぼくを見つめる
半端な人生をたどった男など
さっさと見切ってよかったんだよ
だけど エミちゃんは白い風露のまま
にがい思い出は いつまでも苦いまま
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むろん日本固有種とされる石灰岩地由来のものではありません。
恐らくはハーブの一種として園芸用に栽培されていた個体から飛ばされた種が発芽し自生したものと推定されます。
撮影当時はサザンカ、ヤブツバキなど丈の高い草木に囲まれつつも、根元に生じた僅かな隙間などを利用して健気に生育していました。
時々除草などにより他の野草と共に一斉に刈り取られてはいますが、この撮影以降もほぼ毎年生息を確認していました。
その後もその生息域はほとんど拡大することはなく、いつも同じような場所にひっそりと径10ミリに満たない小さな花を咲かせていました。
しかし近年サザンカ、ヤブツバキの大がかりな剪定が行われ、そうした藪(隙間)がすっかり消滅してしまいました。
環境の変化が大きかったのか、その後はこのヒメフウロの姿を目にすることは無くなりました。
いつも画像のご紹介をいただき有難うございます。
小生の場合には当時撮影しました生育環境から「隠遁者」というような窮したイメージしか湧きませんでした。
ふと姿を消したヒメフウロに成り代わりましてお礼申し上げます。
ひっそりと生きている感じは、イメージ通りでした。
それだけに、理解が足りなかったことが、いつまでも苦い記憶として残るのかもしれません。
引っ込み思案の性格は、多かれ少なかれ水面のさざ波のように引っかき傷を残すのでしょうか。
今回も画像を提供していただき、ありがとうございました。