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良く分かる経済の本

2008-07-21 22:53:14 | お薦めします

 一頃よく日本の国の借金総額1,100兆円という危機的な財政状況が言われ、カウントダウンのような感じで毎秒利子が嵩んでいく様子を見させられたりしましたが、最近は余りニュースでもそのような採り上げ方はされなくなりました。もちろん厳しい状況が変わったわけではないと思いますし、現在はより具体的な郵政民営化や年金問題、談合や天下り問題、また大阪府を始めとする地方自治体の財政立て直しなど、各論的に踏み込んだものとなってきています。
 ただ僕などは1,100兆円と聞いてもなかなか身近な感覚で理解し難いというのも事実です。今回ご紹介する新書本は導入部分で家庭の会計、つまり家計簿の感覚で国の財政状態を比喩的に語ってくれるので、それは大変な事だと実感が少し伴ってきます。家庭の会計に例えると年収が600万円であればローンでマンションを購入するとしても5倍の3,000万円くらいしか貸して貰えないところを、この家庭の夫婦は見栄っ張りで8倍の5,000万円ほどのマンションを購入し、30年ローンを組むとしても利子が付くので1億円ほどを払わなければならない状況のようです。そのような厳しい状況で新車を買う計画や子供の教育などにもお金が必要で、その上にこの夫婦はかなりの浪費癖があるのだと説明されています。
 また国の家計簿は一般会計とか特別会計など多くの家計簿に別れていて、そのことが国民に対して行政の誤魔化しや無責任さの隠れ蓑になっているということも分かり、「家計簿はやっぱり一括して作らないとそれじゃきちんと把握できないよ」、と庶民的なレベルの突っ込みも納得して入れられました。そのような調子で省庁の多重行政の無駄や問題山積の社会保障制度、そして時代意識との乖離が大きくなってきている官僚制度など、現状の課題と改革すべき方向性を示していきます。
 『中国が笑う‥‥』という書名は、「社会主義的な資本主義」が一番成功していた日本という逆説的な意味で使われています。金融資本主義の行き過ぎが地球規模の問題を提起している昨今を読み解くサイドブックにもお奨めできると思います。

中国が笑う日本の資本主義 (ヴィレッジブックス新書 8)
跡田直澄
ヴィレッジブックス
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※ 同じ慶応大学教授の竹中平蔵さんの北京大学で行った講演本も、構造改革行政の現場がよく分かり面白かったです。
竹中平蔵、中国で日本経済を語る
竹中 平蔵
大和書房
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※ 次期政権を狙うと噂される政治家の立場から、官僚の劣化と学閥ネットワークを「ステルス複合体」として批判して話題となっています。
官僚国家の崩壊
中川 秀直
講談社
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