2000年末出版のこの本は既に絶版となっていますが、Amazonの中古本サービスで買い求めることができます。僕は以前に購入し通読していたものを改めて読み返してみました。最近よくそのようなことをしていますが、時代は進化して多くの情報が古びていきますが逆に変わらないものも良く見えてきます。
例えば、宅配便サービスのお陰でタイトなスケジュールになって大変だと愚痴が書かれていますが、音源データをブロードバンドで簡単に送られてくる現代に比べてまだ天国かも知れません。一方、自分で作詞して歌うアーティストが増えて、音楽業界で専門作詞家の仕事が厳しくなるという部分は、変わらず傾向に拍車がかかっているのではないかと想われます。作詞家の存在価値が一層問われる状況になっているのではないでしょうか。
著者は「1990年代、安室奈美恵、TRF、鈴木あみら、小室哲哉プロデュース作品の作詞を多く手掛けた」(Wikipedia)作詞家ということで、本の中にも自作品が時折りテーマに応じて添えられています。この種の作詞・作曲参考本では自作品をこんなに一緒に並べられる人というのは珍しいと想います。その多くは有名なヒット曲やスタンダードの分析を通じて、心の姿勢やノウハウなどを解説していくというものが多いと想います。自作品を分析的に紹介するというのはなかなか難しい問題でもあり、そういう意味では自作品を掲げて作詞・作曲参考本を書くというのには、作詞の実績やその能力への自信とともにとても潔い感じを受けました。
またCD印税の裏事情や「曲先」(曲を先に作り歌詞を後で乗せていく)による、はめ込み作詞の受注で始まる作詞家生活の現実や業界周辺にもいろいろと触れられていて、作詞家を目指してその辺りの情報も知りたい方は興味深く読めるのではないかと想います。
※ 「カメラを首にぶらさげて」というテーマの文章と連動して、各章の初めにモノクロームの街角スナップ写真に感度の良い言葉が添えられているのもオシャレです。有名な松任谷由実さんの作詞に関する噂ではないですが、こんな方法で日常の中で興味を惹かれた風景や感性を切り取って心にメモるというのは作詞の勉強になりそうです。
作詞のリズム (CREATORS’ HANDBOOKS) | |
前田たかひろ | |
リットーミュージック |
☆ 東日本大震災・津波復興支援チャリティーソング にご協力お願いします!