続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

『城』1364。

2013-08-15 05:58:06 | カフカ覚書
 Kがまだ灯りのともっていない縉紳館のところまでやってきたとき、二階の窓のひとつが空いて、毛皮の上着を着た、よくふとった、ひげをきれいに剃った若い男が、身をのりだすようにして、いつまでも窓から下を見おろしていた。Kが挨拶をしても、かすかな会釈さえ返さないようにおもわれた。

 灯りのともっていない/unbeleuchteten→unbe leute/否定・庶民。
 縉紳館/Herrenhof→Hof/太陽の暈・ハロー。
 かすかな/leichtesten→Leiche/死体。
 窓/Fenster→Finster/(天文)蝕。
 太った/dikker→decken/覆う、隠す。

☆Kがまだ人でない人たち(本当の意味で死んでいない人たち)が太陽の暈/ハロー(生命の出入口)のところにいて、先祖が蝕(死の入口)で拘留されているのを見た。先祖の男が完全に破壊(死んでいる)しているのを隠して人間の皮を着て身を乗り出すようにしていつまでも蝕(生死の入口)に留まっていた。
 Kの挨拶にも、死体は肯き返すこともなかった。

どこへ消えたの?

2013-08-14 06:42:03 | 日常
 女子高生の不明事件が起き、すでに一ヶ月。何ら手掛かりを得られないままニュースも途切れがち・・・。ご家族の不安焦りを思うと胸が詰まる思いがする。

 車で通りがかった男(推測に過ぎないけれど)に、道を尋ねられる「ちょっと分からないからこの車に乗って」などと言われれば親切心から軽い気持で乗ってしまうことは十分考えられる。
 一人で女の子が歩いている、きわめて危険なことであっても、いつもどおりであれば警戒心は低い。

 その手の男は昔からいた。家には至近の国道を歩いていて背後から車が停まる・・・なにやら誘うべく言葉をかける。
 男のほうにもヤバイ空気が醸し出されているから、不審というより緊迫した状況に変化する。近くに人が居ないとなれば大声も出せない(というか、まだ事件は起きていない)。とにかく逃げる・・・。
 後になって考えてみると、男はやくざ風でもなく、ごく普通の態なのである。豹変、悪魔の囁き・・・、逃れた後の安堵。

 駄菓子屋を営んでいたAさんは、「恐いわよ、車の中から子供たちの様子をじっと見ているの。物色っていう感じかしらね。ナンバーを確認する振りをしたら、いなくなってホッとしたことがあるわ」と言ったことがある。


 どこへ消えたの?一日も早く無事な姿を見せてくれることを願っている。

『ポラーノの広場』58。

2013-08-14 06:36:12 | 宮沢賢治
「するとも、昨夜なんかとてもひどいんだ。今夜はもうぼくどうしても探さうとおもって羊飼のミーロと二人で出て来たんだ。」


☆朔(新月)也。
 昏(日が沈んで暗い)也。
 譚(話)の要(かなめ)は、詞(ことば)と字(文字)で図り、推しはかることを頼りにしている。

『城』1363。

2013-08-14 06:02:19 | カフカ覚書
こうした印象は、きょうも意外に早い夕ぐれのせいでなおさら強められた。ながく見つめていればいるほど、ますます見わけがつかなくなり、すべては、ますます深く黄昏のなかに沈んでいった。

 印象/Eindruck→Ahn druck/先祖、圧迫。
 長く/langer→Rage/憤怒。
 黄昏/Dammerrung→Demutigung/蔑視、屈辱。

☆こうした先祖への圧迫は、今でも不時(思いがけないとき)に、不明瞭に強められている。憤怒はわずかしか認識できないが、ますます深く、全ては屈辱の中に沈んでいる。

とにかく暑い。

2013-08-13 06:40:54 | 日常
「ああ、ダメだ」(お前の言うことは聞かないぞ)とばかり夫はエアコンを点けた。

「涼しい!」(最高の気分)

 ヒンヤリってこんなに気持がいいものだったの。《年寄りが無理をして熱中症になるケースが増えています》という警告。
(まさか)が、危険。

 確かに暑いけど耐えられない暑さではない。むしろ懐かしい暑さ・・・。何にもしないでボォーッとしていたあの夏の日。


「生活保護でもエアコン設置には補助が出ます。車はダメでもエアコンは生命にかかわりますから」と諸事情に詳しいMさん。

 夫は病弱というほどではないけれど、定期的に病院通いの身。わたしみたいな鈍感と違って、微妙な差異にも反応、寒いの暑いのと一年中ぼやいている。本来無口な夫が振り絞って出している叫びだとしたら、それを笑うわたしは《鬼》ということになる。

 とうとう点けたエアコンにしばし歓喜。わたしの顔色を見ながら、点けたり消したりの夫。ケチな女房でゴメン!


 とにかく暑い!日本中がそう言っている。

『ポラーノの広場』57。

2013-08-13 06:32:53 | 宮沢賢治
「たうとう来たよ、今晩は」と云ひました。
「あゝ、先頃はあちがとう。地図はちゃんと仕度しておいたよ。この前の音は今でもするの」


☆雷(神なり)の魂は万(すべて)の運/めぐりあわせである。
 千(たくさん)の計(もくろみ)は字で図る。
 詞(言葉)に託す全ての隠された魂。

『城』1362。

2013-08-13 06:02:20 | カフカ覚書
しかし、そのうち、いやでも観察されていることに気づくにちがいない。それでも、彼の平静さは、すこしも崩れないのだ。すると、これがその原因なのか、それとも結果なのかはわからないが、観察者の眼は、焦点をさだめられなくなって、ずり落ちてしまう。

 平静/Ruhe→rufen/叫び
 原因/Ursache・・・理由、因果。
 結果/Folge・・・連続、服従。

☆全ての先祖が、誰も観察されていることに気づかない。しかし、やがて観察者に気づくに違いないが、真の叫びは少しも崩れない。すると、このことが因果としての服従なのかは分からないが、目撃者の洞察はしっかり定まらず、ずり落ちてしまう。

化粧品。

2013-08-12 06:39:34 | 日常
 ほとんどスッピンで暮らしている。朝からきちんと身づくろいをすることは大変な努力が要るけれど、到底及ばないので不細工は承知の上でそのまま過ごしている。

 化粧は化粧水と称されるものを手の平に叩いて乗せるだけというシンプルさ。398円/500ml(ドクダミ化粧水)を使用しているけれど、特別難はない。

 四十年も前の話になるけれど、妹が某医療センターの皮膚科にいたとき、化粧品会社から成分などの確認を委託された医師が「スゴイなぁ、こんな薬、恐くて使えないよ」と漏らした一言が今も脳裏に焼きついている。

 経済的な事情もあって安価な化粧水で満足しているけれど、まだらに白くなるような恐い思いはしていない。


 比較的倹しくやりくりしている主婦が、化粧水は一万円もするような高級品を使っているのを見て驚愕。美への執着は忘れてはいけないものかもしれないけれど・・・。


 口紅は百円ショップのものを愛用、髪の毛は百円ショップのカッターで自分でカット、服は下手な手作り。
 自分では気づかなくても、どこか貧乏、プアーな雰囲気が漂っているかもしれない。(まずいわ)
 知らぬが仏、笑われても自分流で行く。

『ポラーノの広場』56。

2013-08-12 06:30:38 | 宮沢賢治
   二、つめくさのあかり

 それからちゃうど十日ばかりたって、夕方、わたくしが役所から帰って両手でカフスをはづしてゐましたら、いきなりあのファゼーロが戸口から顔を出しました。そしてわたしがまだびっくりしているうちに


☆自由な化(形、性質を変えて別のものになる)幽(死者の世界)。
 法(方法)は訳(ある言語を他の言語で言い換える)諸(もろもろ)を記す。
 霊(死者の魂)が納める途の講(はなし)を信仰で推しはかる。

『城』1361。

2013-08-12 06:07:34 | カフカ覚書
Kは、城をながめていると、静かに腰をかけて、ぼんやり前方を見やっている人間の様子をうかがっているような気がすることがときおりあった。相手はもの思いにふけっていて、そのためにすべてのことに無関心になっているというのではなく、自分はひとりきりで、だれも自分を観察などしていないと言わんばかりに平然と安心しきったように腰をかけている。

 城/Schloss→Schluss/終末。
 ときおり/mannchmal→manch mal/いくつもの、傷痕。

☆Kが城(終末=死)を注視していると、静かに腰をかけ、前方(来世=本当の死)を見やっている人間(誰か)の様子を観察しているような気がし、幾つもの傷痕を見るようだった。相手は、もの思いにふけっていて、そのために死に無関心になっているというのではなく、周囲から孤立しており、自由や無頓着というのではなかった。