時間があるときに、小川プロダクションの『三里塚』シリーズを観ているが、白黒映画とカラー映画が混ざるので、この違いについて注意しながら考えている。あと、声ね……。甲高いおばちゃんたちの方言むき出しの声が印象的であるが、戦争をくぐり抜け開拓をし夫の横暴に耐えてきた(みたいに描かれている)この人たちの存在はこのドキュメンタリーの中ではかなり大きいように思われた。このドキュメンタリーは、学生たちや農民たちが対位法のように扱われ、おばちゃんたちもその一部であり、――音楽の使い方からみても、一種の交響曲のようにつくられている。ゆえに、実際の運動においてどうだったかは慎重に考えなくてはならないが……。このことの意味については別に論じるとしても――、これを戦後のフェミニズムがどう捉えたのか、ちょっと考えさせられる。
一老櫻の側に、『牝馬吾妻之塚』と題する木標立てり。其の木標は新らしくして、この頃建てられたるものと見ゆるが、裏面には、明治九年に死せる由を記せり。舊墓標朽ちて更に新たに建てられたるにや。
――大町桂月「三里塚の桜」