伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ダムの科学

2013-01-03 20:29:43 | 自然科学・工学系
 ダムの効用、建設・運用、技術などについて、「学・官・民の連携によりダム工学の発展、普及を図る近畿・中部地区の専門家チーム」が解説した本。
 基本的に見開き2ページ構成で写真・イラストを多用する一般向け解説用のスタイルをとっており、現に多くの部分はわかりやすく書かれているのですが、知りたい部分がさらりと流されたり触れられていないもどかしさを感じるところも多く、他方第4章のダムの先端技術のところはあまり素人にわからせようという意欲を感じない文章も目につきイラストの工夫が今ひとつ足りない感もあり素人には理解しにくい部分が多々あるように思えました。
 全体として近年のダムに対する批判的な世論と民主党政権の動きに対抗する意識で書かれていることがありありと感じられる本で、世界のダムでの批判や問題点については触れられても(80~81、88~89ページ)、日本のダムについての個別の問題への言及はなく、ダムの環境問題についても技術的に解決できるということに力点が置かれているように思えます(第6章:178~201ページ)。一般論として技術的に可能だということと現実にどれだけのダムでその対策が実施されているかにはおそらくかなりの隔たりがあると思うのですが、そこはこの本を読んでも見えてきません。
 華厳の滝の水量は上流のダムの放流操作で調節されており観光に配慮して操作されている(50ページ)とか。日本3名瀑もこういわれると魅力がかなり失われる感じがします。


一般社団法人ダム工学会 近畿・中部ワーキンググループ 
ソフトバンククリエイティブ(サイエンス・アイ新書) 
2012年11月25日発行
コメント
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