22年前に河北町谷地に住んで何年かしてから、「谷地」という地名が「アイヌ語」だということを知り、それ以来地名とアイヌ語に興味を持つようになった。
正確にはアイヌ語というよりは、アイヌ語と同じ言語の地名と言うべきだが、ここ東北地方では「谷地」はほとんど「湿地帯」というそのままの意味で使われているように思う。
谷地、谷地田、谷地小屋など、地名も散在する。
古代の日本の地形は葦が生い茂った湿地帯が多かった。だから、湿地帯を指す言葉が多く生まれた。「ニタ」「サラ」なども湿地の意味で、仁田山、皿沼なども、これらの転用かと思われる。
アイヌの人々も、縄文の人々も、言語はあっても文字を持たなかった(文字に代わるものがあったのかどうかは知らない)。それらの人々が住み、呼び習わしてきた土地の名前に、後の人々が外来の漢字をあてたのが現在の地名だ。もちろん後からやってきた人々がつけた地名や改名した地名もある。
古い地名で、現在の日本語では意味がよくわからない場合など、アイヌ語で読んでみるとその地形にピッタリの意味が浮かび上がってくることがある。
そんな時、古代の人々がここでどんな生活をしていたんだろうと想像するとワクワクしてくる。
厳しい自然環境の中で、子を産み育て、争ったり協力をしながら子孫を残してきた。それが我々の祖先だ。
地名にはそんなことを考えさせてくれる魅力がある。