唐突に、膝枕。
「膝枕」とは言いますが、枕にしているあそこは膝ではない。どちらかと言えば腿。
本当に膝を枕にしたのでは具合が悪いでしょう。
腿なのになぜ「膝枕」と言うか、という話。
他人の脚、腿の部分に頭を置いてゴロゴロしてきたのは猿の時代からかどうかは知らない。
しかし、それを「膝枕」と命名したのはそれほど古いことではないのではないか。近世?おそらくは男性。
想像してみるに、正座をした和服のご婦人の「腿」の部分に頭をつけた殿方。少し酔いも回って温かく柔らかくほのかな香りも心地いい。その殿方の目に映っていたのは、「膝」。膝頭を撫でたかどうかは別にして、その丸みを帯びた脚の途中の屈折する部分は、腿の側から見るとなんとも愛おしく見えたに違いない。笑うと震えるお腹の振動が後頭部に触れるのもいい。かんざしか何かで耳なぞをほじくられながら、得も言われぬくすぐったい快感を覚えたことでしょう。
その快感は、唯一目に映る「膝」として脳裏に刻まれたのではないか。
もうそれは「膝枕」と呼ばれても致し方ないと、受けとめざるを得ません。
・・・たかだか膝枕ぐらいでそんな大げさな、というご批判はご尤もです。
でもですね、あの何とも言えない距離感は、男にとっても女にとっても不思議な感情をもたらすものと思えるのです。大人も子どもも。