本日聴いていた曲はバッハの「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」全6曲。ヴァイオリンはヘンリック・シェリング、チェンバロはヘルムート・ヴァルヒァ。1969年の録音。1990年の発売のようだから、その翌年頃には購入していたと思う。
私の生涯の中でもかなりきつく、厳しい時期にあたり、癒しをもとめて深夜の1時から2時ころに、リビングルームの再生装置で妻や小学生の子どもの安眠を妨げないように小さな音で聴いていたはずである。それでも当時のワープロを打つ音や、感熱紙での印刷の音で迷惑をかけていたと思う。
にがく、苦しい思い出が沸きあがってくる曲でもあるが、半面、労働組合の仕事が終わってぬるくなった風呂で静かに体を洗うまでの時間、就寝前のホッとする時間を思い出させてくれるCDでもある。当時は朝ひげを剃る時間ももったいないので、この風呂の時間にひげを剃っていたことを今思い出した。
実は私はシェリングのヴァイオリンの音色よりも、ヴァルヒァのチェンバロの音色と演奏に惹かれている。少し金属的な音がするシェリングの音を柔らかく、なめらかに聴かせてくれる。曲そのものがそのような構造なのか、両者の音の特質なのか、録音の問題なのか、いまだにわからない。
シェリングのヴァイオリンはベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団、ハイティンク指揮、1973年録音)をもっているが、こちらは鋭い音の響きではあるが、金属的な音色とは違って心地よい響きである。高音に比べて低音はとても柔らかい響きがする。
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