Energy

ナイフのきっさきで　オレの胸を刺したとき
考えていたことがあるんだ

青い沼の上でバレエを踊っているあの少女のことを
透きとおる服を着て　くるくる回っていやがった
オレにちっとも気づきやしないで

足を出して　手を引っこめて
そこいら中の空気をかきまわしていた

沼の向こうはすっかり危なっかしくて
吸いこまれそうに真っ黒い様子だったのに
それさえも思いつかなかったように



ナイフのきっさきが　オレの心臓を突いたとき
考えていたことがあるんだ

乾いてキチキチに固い土の上で　真っ直ぐに立っているあの彼女のことを
胸にポイントの入ったＴシャツを着て　スッと音もなく立ってたよ
足をキチッと前後ろに並べて
一枚の一瞬がそこにはあった

灼けつく日差しは影をも照らして
オレや他にゾロゾロと列をなして座っていた奴らを全部消し飛ばしていたのに

それさえ思いもつかなかったように






memo;
「固い土の上で真っ直ぐに立っている彼女」とは、
当時好きだった、女子テニスプレーヤーのクリス・エバートのこと。
対戦相手はライバルのナブラチロワだったかな？
相手に勝って、ウィンブルドンカップを制したシーンだった。