満月の夜
私は死んだ
紺色の制服の男の子に刺されて
満月の夜
私は死んだ
女子大生の運転する車に轢かれて
満月の夜
私は死んだ
不潔な男にプラットフォームから落とされて
満月の夜
私は死んだ
同窓生にストッキングで首を絞められて
満月の夜
私は死んだ
政府からの細々とした配給が切れて
満月の夜
何かを諭しそうで
傍観している月がある
夜気は寒く
こおろぎが鳴いている
最終バスがバス停で停まる音がして
疲れた女たちが黒い道路を見つめながら
歩いてゆく
私は自分の死体の横で
満月を見ながら膝を抱えて座っている
私は殺される前から
もうすでに死んでいたのだ
内からの崩壊
私はすでに死んでいた
だから私を殺した連中が
自分を責めたりしなきゃいいがと
心配している
私は怖かったんです
「何が怖いの?」
ひととうまく話せないから
―本当はそんなことじゃない
ひとが私を見ているから
―本当はそんなことじゃない
私は一人じゃうまく出来ないから
私は綺麗じゃないから
ひとから変な奴だと思われるから
―でもそれは本当のことじゃない
私は怖かったんです
お月さま
心臓が下からぼろぼろと
こう、ボロボロとはがれてゆくことが
脳が表面からぶくぶくと
そう、ブクブクと溶けてしまうのが
顔全体がべろべろと
こう、ベロベロと流れてゆくことが
でも恐怖も一緒に溶けてしまえば
すっかり楽だろう
そして誰も私を振り返らないだろう
私はニセのコンクリート道路の下
キス
キス、キス
見事な二次元円の月に口づけを
もしご迷惑でなければ
私は死んだ
紺色の制服の男の子に刺されて
満月の夜
私は死んだ
女子大生の運転する車に轢かれて
満月の夜
私は死んだ
不潔な男にプラットフォームから落とされて
満月の夜
私は死んだ
同窓生にストッキングで首を絞められて
満月の夜
私は死んだ
政府からの細々とした配給が切れて
満月の夜
何かを諭しそうで
傍観している月がある
夜気は寒く
こおろぎが鳴いている
最終バスがバス停で停まる音がして
疲れた女たちが黒い道路を見つめながら
歩いてゆく
私は自分の死体の横で
満月を見ながら膝を抱えて座っている
私は殺される前から
もうすでに死んでいたのだ
内からの崩壊
私はすでに死んでいた
だから私を殺した連中が
自分を責めたりしなきゃいいがと
心配している
私は怖かったんです
「何が怖いの?」
ひととうまく話せないから
―本当はそんなことじゃない
ひとが私を見ているから
―本当はそんなことじゃない
私は一人じゃうまく出来ないから
私は綺麗じゃないから
ひとから変な奴だと思われるから
―でもそれは本当のことじゃない
私は怖かったんです
お月さま
心臓が下からぼろぼろと
こう、ボロボロとはがれてゆくことが
脳が表面からぶくぶくと
そう、ブクブクと溶けてしまうのが
顔全体がべろべろと
こう、ベロベロと流れてゆくことが
でも恐怖も一緒に溶けてしまえば
すっかり楽だろう
そして誰も私を振り返らないだろう
私はニセのコンクリート道路の下
キス
キス、キス
見事な二次元円の月に口づけを
もしご迷惑でなければ