■ドラマ『海底の君へ』
作:櫻井剛
前原茂雄:藤原竜也
手塚真帆:成海璃子
前原小絵:水崎綾女
手塚瞬:市瀬悠也
立花隆之介:忍成修吾
中井裕也(中井くん):淵上泰史
水田:落合モトキ
浅野先生(医師):近藤芳正
須藤銀一(銀ちゃん):神戸浩
前原将司:モロ師岡
菊地明(社長):麿赤兒
▼あらすじ(ネタバレ注意
前原茂雄は同窓会で「僕と死んでください」と言う。
その2ヶ月前。ゲームセンターでバイトしていたシゲオ。
万引きで捕まった男子シュン。弟を迎えに来た姉マホ。
シゲオ「誰かに命令されたんじゃないかな」
シゲオは、結婚を控えた妹サエと父と3人で暮らしてる。
同窓会のハガキがきていた。
前のバイト先でお世話になった廃棄物処理場で働くギンに相談するシゲル。
マホはデパートの化粧品売り場で働いている。
シゲルは外で学生らの喧騒を見ても、学校でイジメられた記憶がよみがえってパニックが起きる。
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通りかかってそれを見かけたマホは付き添う。
「人に“ふつう” にできることが僕にはできないんです。
ちゃんと“ふつう”にならないと。もう迷惑かけられないんで」
弟をかばってくれた理由を聞く。
シゲル「分かるんです。僕も同じだったんで」
サエの車でドライヴに出かける2人。シゲルは「すいません」が口ぐせ。
昼食で入った店にも大勢の学生がいて入れない。
「中学の時、ひどい暴力を受けたんです。高校も通えなくてずっと引きこもって、
母は疲れて家を出て行ってしまい、家族がむちゃくちゃになったのも僕のせいで、
潰れた工場でなんとか住んでて、なにかあるとフラッシュバックしてパニックになって・・・」
「シゲちゃんは優しすぎるんだよ。そこがいいんだよ」
カウンセリングも受けている。
フラッシュバックの時にイジメた男子生徒の声が聞こえる。
うなされて起きることもある。
「早く“ふつう”になりたいです。どうしたら治るんでしょうか?」
医師「イジメ後遺症の原因は一度に取り除けるものではない。焦らなくていいんです」
(シゲルの言う“ふつう”とは具体的にどういう人、状況のことだろうか?
シュンとも話す。姉が楽しそうだったのは珍しいという。
「シュン君はどうなの、学校。ムリに行かなくてもいいんじゃないかな」
「オレより姉のほうを心配してやってよ」
マホ「シュンには辛い思いさせてるから。私が母親とこじれてるせいで。
父がアメリカに転勤して、母もついていったが、シュンは私のために残ったの」
家庭環境の事情もそれぞれ。そして、きょうだいや親もいっしょに重い傷を背負うんだな。
ナカイ「来年30なんだから同窓会に来いよ。タチバナから返事がないと連絡が来たぞ」
弁護士になったタチバナに声をかけるシゲル。
「僕はどうして君たちにあんなことをされたんだろう。イジメの原因は何だったの?」
「多少やりすぎてたかもしれないけど、よくあることだろ?
ゆすりに来たのかよ? もう忘れようぜ。前向いていこうよ」
そこでもパニックを起こすシゲオ。
「死ねばいいのによ」と言われた記憶がよみがえる。
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完全に忘れてるのかな? そもそも本人には相手を傷つけたという自覚がないのか。
バイトを2日休んだだけで辞めさせられる。
また廃棄場に戻りたいと頼みに行くが「病気が治ったら考える」と断られる。
ギン「甘えてるんだよ、結局」
シゲルはまた部屋に引きこもる。
父「お前は心配しなくていいから」
妹「私がいなくなったらどうなるの? みんな自分のことばっかり!!」という怒声にも脅えるシゲル。
マホが帰ると、シュンもボロボロになって部屋にこもり、学生服は切り裂かれている。
「オレ、明日から学校行かない。いいでしょ?」
シゲルにシュンのことを相談するマホ。
「絶対誰にも言うなって。イジメられてることのを認めることになるからって。どうしたらいい?
私怖い。どうやったらシュンを守れる?」
「僕はダメな人間だから。迷惑かけるから力になれない」
「私にはシゲちゃんが必要なんだよ!」
衝動的に海に飛び込むマホ。シゲルも飛び込んで助ける。
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「昔、この海に投げ込まれたんです。散々殴られて、モノみたいに担ぎ上げられて」
イジメグループは「泳ぎの練習なの」と言っていた。
「その時思った、こいつらにとって僕は死んでもいい人間なんだって。
自分は何のために生まれてきたんだろう。ぜんぶ僕のせいなんだって」
「シゲちゃんは絶対に悪くない」
父に呼ばれ、妹の結婚がダメになったという。
「もともと向こうの家族に反対されてたらしい。家庭環境がなんとかって・・・」
シュンがマンションから飛び降り自殺をはかり、入院して意識が戻らない。
学校側の弁護士はよりによってタチバナで、学校はイジメを認識していないと言い張る。
「遊びの延長ではないですか? 家庭環境に問題がなかったと言いきれますか?」
マホ「なんだか狂ってるよ。悔しかったねシュン。ごめんね、気づいてあげられなかった」
またタチバナに会いに行くシゲル。
タチバナは今回の弁護を「貧乏クジを引いた」と愚痴る。
「最近の子は我慢がきかないからな。自殺したほうはそれで終わりかもしれないけど。
死ぬ気があるなら、なんだって出来るだろ。
もめ事っていうのは、どちらか一方が悪いってことはほとんどないわけ。
イジメられた側にもそうされる理由があるってこと。
世界中から戦争がなくならないのといっしょだよ。
子どもの世界からイジメはなくならないよ」
「同窓会、出席するよ、必ず」
「それだけ直接言いに来たの? お前、ほんと変わってんな」
「なんにも変わらない、昔も今も。もう終わりにするよ。
オレ、思いついたんだよ。この世からイジメをなくす方法を」
爆発する仕掛けを作るシゲル。
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シュンは意識が戻った。
シゲル「シュン君に君は悪くないんだって、これからもずっと言い続けてあげて」
同窓会当日の夜。
シゲルは父にも「これまで本当に迷惑かけたね。サヤにもそう伝えて。今日までありがとう」と告げて家を出る。
同窓生らは、前原を覚えてない様子で、近況報告のコーナーが始まる。どんな仕事に就いたか、主婦になったとか。
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(私も同窓会とかほんとに苦手だから、これまで一度も行ったことがない。
誰が何をしているか興味がないのと、それぞれの近況を知って比べ合う感じがイヤ。
互いに探り合って安心したいのかな。
マホは心配してシゲルの家を訪ねる。
部屋に入ると、同窓会の模様がネット中継されている。
サイト名は「海底の君へ」
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「シゲちゃん死ぬ気だ」
シゲルのスピーチの番になる。
「僕は今無職です。その前はずっと引きこもってました。
今日はみんなにお願いがあるんだ。僕と死んでください。
タチバナ君。僕は海に投げ込まれたあの日からずっと海の底にいたよ。
一度も浮かび上がれず、息もしないで、でもそれも今日で終わりにするよ」
シュンのことも話す。
「分かってもらいたいんだ。僕らのいた海の底がどんなに暗くて、冷たいか・・・」
照明を消して、体に巻きつけたダイナマイトを見せる。
「この気持ちを、君たちだけじゃなくて、世界中の人に知ってもらいたいんだ。
教室や、社会で傷ついて、孤独に苦しんでいる人がたくさんいることを。
ネットでこれを見ている人は、これを拡散してほしい。
軽い気持ちで人間を傷つけることが、どんなに人の人生をメチャクチャにすることか。
どうか伝えてください。そうすればきっとイジメで苦しむ人はいなくなる」
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タ「今さらオレたちに仕返ししたってどうにもならないだろうよ!!」
「仕返しじゃない。これは、警告。イジメが人の心を壊すってことの警告。
殺される人間にもそうされる理由があるって、タチバナ君、君がそう言ったんだ!」
ナカイ「なんでオレまで巻き添えなんだ。オレはお前に何もしてないだろ?!」
「ナカイ君は見て見ぬフリしてたよね。僕にとって、君もタチバナ君も同じだよ」
タ「悪かったよ、許してくれ!」と土下座する。
「みなさん、さようなら」
マホが来る。「それ離して!」
「僕はやらなきゃ。こんな世の中間違っているんだ。変えなきゃいけない」
「でも、このやり方じゃない。
たくさん人が死ぬんだよ。残されたたくさんの人が心に穴をあけて生きていかなきゃならないんだよ。
生きてよ、私のために!」
警察に取り押さえられるシゲル。
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ニュースではすっかり容疑者扱いとして「計画的な犯行」と報道される。
(私たちは毎日ニュースを見ているけれども、そこに映っている人がどんな人かほんとうは知らないんだな
町の声:なんか、違うことに向けられないのかなって思います。
ネットには「お前が死ね」という書き込み。
裁判では「情状酌量」が認められたが、懲役5年の実刑判決が下る。
5年後。
サエは結婚して妊娠。
「なにか変わったのかな。お兄ちゃんがしたことで」
釈放されたシゲルを迎えに行くマホとサエ。
「おかえり。待ってたよ」
「ありがと。生きていかないと」
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*
私の中学のクラスにもイジメがあった。
暴力というより、無視や避けるとかだった気がする。
一度だけ、列の順番を代わってほしいと頼んだが断られたことがあったのを今でも覚えている。
断られた残念さより、むしろホッとした気持ちと良心の呵責。
担任は、26歳くらいの熱血教師で、イジメた生徒に泣いて怒鳴り、腹を殴った記憶がある。
今ならPTAやマスコミが黙っちゃいないな。
担任は放課後まで私たちを残らせて、暗くなるまでとことん話し合いをさせた。
話し合いもなにもないもんだった。
自発的でなく、押しつけられた場だし、皆しらけて、意見も出ず、本人もさぞ気まづい思いだったろう。
ただただ無駄な時間が流れて、一方的な言い訳が続くばかりで、“インチキ臭い”というようなことを言った覚えがある。
他のクラスからは「○組はイジメがあって恐い」と言われて、それは違うとイヤな気持ちになった。
でも、実際、イジメはあったし、それを止める方法も分からず、止める勇気もなかった。
あのコは今、どうしているかと、今でも時々思い出す。
この世に生を受けた時点で、みんな成長の過程にいると私は思っている。
学校で生き辛いなら、行かなくてもいいとも思う。
皆と合わせられずに“ドロップアウトする人”、“道から外れる人”のほうが
ずっと繊細で、脆く、人の痛みが分かり、クリエイティヴな才を持っていることが多い。
それに気づいてくれる第三者、味方、共感して、寄り添ってくれる人が1人でもいるかどうか。
シゲルには必要としてくれるマホらがいた。
人を傷つけるのも、癒やすのも人。
人との関わり合いの中で、自分がどういう人間かを知ること。
社会のルール、世間体、あらゆる差別、しがらみは無限にあっても、
みんな、自由に生きる同等の権利がある。
私はまだ今も自分の居場所を見つけようと捜している。
一生捜し続けるかもしれない。
決めるのは自分しかいない。
自分がほんとうに居心地の良い場所はここにあるだろうか。
妥協せず、自分にウソをつかず、そのまんまでいいところ。
強く見える人も、同じことで悩んでいるかもしれない。
“カンペキな人間”なら、そもそもこの世に生まれてはこない。
なにか課題があるから生まれてきたんだ。
その答えは、“今の自分でいいんだ”と気づくことかもしれない。
“自分で居心地のいいところ、人を見つける・作る”ことかもしれない。
捜しつづける過程自体が生きることそのものかもしれない。
答えは1つじゃない。
たくさんのことを考えさせられるドラマだった。
作:櫻井剛
前原茂雄:藤原竜也
手塚真帆:成海璃子
前原小絵:水崎綾女
手塚瞬:市瀬悠也
立花隆之介:忍成修吾
中井裕也(中井くん):淵上泰史
水田:落合モトキ
浅野先生(医師):近藤芳正
須藤銀一(銀ちゃん):神戸浩
前原将司:モロ師岡
菊地明(社長):麿赤兒
▼あらすじ(ネタバレ注意
前原茂雄は同窓会で「僕と死んでください」と言う。
その2ヶ月前。ゲームセンターでバイトしていたシゲオ。
万引きで捕まった男子シュン。弟を迎えに来た姉マホ。
シゲオ「誰かに命令されたんじゃないかな」
シゲオは、結婚を控えた妹サエと父と3人で暮らしてる。
同窓会のハガキがきていた。
前のバイト先でお世話になった廃棄物処理場で働くギンに相談するシゲル。
マホはデパートの化粧品売り場で働いている。
シゲルは外で学生らの喧騒を見ても、学校でイジメられた記憶がよみがえってパニックが起きる。
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通りかかってそれを見かけたマホは付き添う。
「人に“ふつう” にできることが僕にはできないんです。
ちゃんと“ふつう”にならないと。もう迷惑かけられないんで」
弟をかばってくれた理由を聞く。
シゲル「分かるんです。僕も同じだったんで」
サエの車でドライヴに出かける2人。シゲルは「すいません」が口ぐせ。
昼食で入った店にも大勢の学生がいて入れない。
「中学の時、ひどい暴力を受けたんです。高校も通えなくてずっと引きこもって、
母は疲れて家を出て行ってしまい、家族がむちゃくちゃになったのも僕のせいで、
潰れた工場でなんとか住んでて、なにかあるとフラッシュバックしてパニックになって・・・」
「シゲちゃんは優しすぎるんだよ。そこがいいんだよ」
カウンセリングも受けている。
フラッシュバックの時にイジメた男子生徒の声が聞こえる。
うなされて起きることもある。
「早く“ふつう”になりたいです。どうしたら治るんでしょうか?」
医師「イジメ後遺症の原因は一度に取り除けるものではない。焦らなくていいんです」
(シゲルの言う“ふつう”とは具体的にどういう人、状況のことだろうか?
シュンとも話す。姉が楽しそうだったのは珍しいという。
「シュン君はどうなの、学校。ムリに行かなくてもいいんじゃないかな」
「オレより姉のほうを心配してやってよ」
マホ「シュンには辛い思いさせてるから。私が母親とこじれてるせいで。
父がアメリカに転勤して、母もついていったが、シュンは私のために残ったの」
家庭環境の事情もそれぞれ。そして、きょうだいや親もいっしょに重い傷を背負うんだな。
ナカイ「来年30なんだから同窓会に来いよ。タチバナから返事がないと連絡が来たぞ」
弁護士になったタチバナに声をかけるシゲル。
「僕はどうして君たちにあんなことをされたんだろう。イジメの原因は何だったの?」
「多少やりすぎてたかもしれないけど、よくあることだろ?
ゆすりに来たのかよ? もう忘れようぜ。前向いていこうよ」
そこでもパニックを起こすシゲオ。
「死ねばいいのによ」と言われた記憶がよみがえる。
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完全に忘れてるのかな? そもそも本人には相手を傷つけたという自覚がないのか。
バイトを2日休んだだけで辞めさせられる。
また廃棄場に戻りたいと頼みに行くが「病気が治ったら考える」と断られる。
ギン「甘えてるんだよ、結局」
シゲルはまた部屋に引きこもる。
父「お前は心配しなくていいから」
妹「私がいなくなったらどうなるの? みんな自分のことばっかり!!」という怒声にも脅えるシゲル。
マホが帰ると、シュンもボロボロになって部屋にこもり、学生服は切り裂かれている。
「オレ、明日から学校行かない。いいでしょ?」
シゲルにシュンのことを相談するマホ。
「絶対誰にも言うなって。イジメられてることのを認めることになるからって。どうしたらいい?
私怖い。どうやったらシュンを守れる?」
「僕はダメな人間だから。迷惑かけるから力になれない」
「私にはシゲちゃんが必要なんだよ!」
衝動的に海に飛び込むマホ。シゲルも飛び込んで助ける。
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「昔、この海に投げ込まれたんです。散々殴られて、モノみたいに担ぎ上げられて」
イジメグループは「泳ぎの練習なの」と言っていた。
「その時思った、こいつらにとって僕は死んでもいい人間なんだって。
自分は何のために生まれてきたんだろう。ぜんぶ僕のせいなんだって」
「シゲちゃんは絶対に悪くない」
父に呼ばれ、妹の結婚がダメになったという。
「もともと向こうの家族に反対されてたらしい。家庭環境がなんとかって・・・」
シュンがマンションから飛び降り自殺をはかり、入院して意識が戻らない。
学校側の弁護士はよりによってタチバナで、学校はイジメを認識していないと言い張る。
「遊びの延長ではないですか? 家庭環境に問題がなかったと言いきれますか?」
マホ「なんだか狂ってるよ。悔しかったねシュン。ごめんね、気づいてあげられなかった」
またタチバナに会いに行くシゲル。
タチバナは今回の弁護を「貧乏クジを引いた」と愚痴る。
「最近の子は我慢がきかないからな。自殺したほうはそれで終わりかもしれないけど。
死ぬ気があるなら、なんだって出来るだろ。
もめ事っていうのは、どちらか一方が悪いってことはほとんどないわけ。
イジメられた側にもそうされる理由があるってこと。
世界中から戦争がなくならないのといっしょだよ。
子どもの世界からイジメはなくならないよ」
「同窓会、出席するよ、必ず」
「それだけ直接言いに来たの? お前、ほんと変わってんな」
「なんにも変わらない、昔も今も。もう終わりにするよ。
オレ、思いついたんだよ。この世からイジメをなくす方法を」
爆発する仕掛けを作るシゲル。
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シュンは意識が戻った。
シゲル「シュン君に君は悪くないんだって、これからもずっと言い続けてあげて」
同窓会当日の夜。
シゲルは父にも「これまで本当に迷惑かけたね。サヤにもそう伝えて。今日までありがとう」と告げて家を出る。
同窓生らは、前原を覚えてない様子で、近況報告のコーナーが始まる。どんな仕事に就いたか、主婦になったとか。
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(私も同窓会とかほんとに苦手だから、これまで一度も行ったことがない。
誰が何をしているか興味がないのと、それぞれの近況を知って比べ合う感じがイヤ。
互いに探り合って安心したいのかな。
マホは心配してシゲルの家を訪ねる。
部屋に入ると、同窓会の模様がネット中継されている。
サイト名は「海底の君へ」
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「シゲちゃん死ぬ気だ」
シゲルのスピーチの番になる。
「僕は今無職です。その前はずっと引きこもってました。
今日はみんなにお願いがあるんだ。僕と死んでください。
タチバナ君。僕は海に投げ込まれたあの日からずっと海の底にいたよ。
一度も浮かび上がれず、息もしないで、でもそれも今日で終わりにするよ」
シュンのことも話す。
「分かってもらいたいんだ。僕らのいた海の底がどんなに暗くて、冷たいか・・・」
照明を消して、体に巻きつけたダイナマイトを見せる。
「この気持ちを、君たちだけじゃなくて、世界中の人に知ってもらいたいんだ。
教室や、社会で傷ついて、孤独に苦しんでいる人がたくさんいることを。
ネットでこれを見ている人は、これを拡散してほしい。
軽い気持ちで人間を傷つけることが、どんなに人の人生をメチャクチャにすることか。
どうか伝えてください。そうすればきっとイジメで苦しむ人はいなくなる」
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「仕返しじゃない。これは、警告。イジメが人の心を壊すってことの警告。
殺される人間にもそうされる理由があるって、タチバナ君、君がそう言ったんだ!」
ナカイ「なんでオレまで巻き添えなんだ。オレはお前に何もしてないだろ?!」
「ナカイ君は見て見ぬフリしてたよね。僕にとって、君もタチバナ君も同じだよ」
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「みなさん、さようなら」
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「僕はやらなきゃ。こんな世の中間違っているんだ。変えなきゃいけない」
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生きてよ、私のために!」
警察に取り押さえられるシゲル。
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ニュースではすっかり容疑者扱いとして「計画的な犯行」と報道される。
(私たちは毎日ニュースを見ているけれども、そこに映っている人がどんな人かほんとうは知らないんだな
町の声:なんか、違うことに向けられないのかなって思います。
ネットには「お前が死ね」という書き込み。
裁判では「情状酌量」が認められたが、懲役5年の実刑判決が下る。
5年後。
サエは結婚して妊娠。
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釈放されたシゲルを迎えに行くマホとサエ。
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「ありがと。生きていかないと」
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暴力というより、無視や避けるとかだった気がする。
一度だけ、列の順番を代わってほしいと頼んだが断られたことがあったのを今でも覚えている。
断られた残念さより、むしろホッとした気持ちと良心の呵責。
担任は、26歳くらいの熱血教師で、イジメた生徒に泣いて怒鳴り、腹を殴った記憶がある。
今ならPTAやマスコミが黙っちゃいないな。
担任は放課後まで私たちを残らせて、暗くなるまでとことん話し合いをさせた。
話し合いもなにもないもんだった。
自発的でなく、押しつけられた場だし、皆しらけて、意見も出ず、本人もさぞ気まづい思いだったろう。
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でも、実際、イジメはあったし、それを止める方法も分からず、止める勇気もなかった。
あのコは今、どうしているかと、今でも時々思い出す。
この世に生を受けた時点で、みんな成長の過程にいると私は思っている。
学校で生き辛いなら、行かなくてもいいとも思う。
皆と合わせられずに“ドロップアウトする人”、“道から外れる人”のほうが
ずっと繊細で、脆く、人の痛みが分かり、クリエイティヴな才を持っていることが多い。
それに気づいてくれる第三者、味方、共感して、寄り添ってくれる人が1人でもいるかどうか。
シゲルには必要としてくれるマホらがいた。
人を傷つけるのも、癒やすのも人。
人との関わり合いの中で、自分がどういう人間かを知ること。
社会のルール、世間体、あらゆる差別、しがらみは無限にあっても、
みんな、自由に生きる同等の権利がある。
私はまだ今も自分の居場所を見つけようと捜している。
一生捜し続けるかもしれない。
決めるのは自分しかいない。
自分がほんとうに居心地の良い場所はここにあるだろうか。
妥協せず、自分にウソをつかず、そのまんまでいいところ。
強く見える人も、同じことで悩んでいるかもしれない。
“カンペキな人間”なら、そもそもこの世に生まれてはこない。
なにか課題があるから生まれてきたんだ。
その答えは、“今の自分でいいんだ”と気づくことかもしれない。
“自分で居心地のいいところ、人を見つける・作る”ことかもしれない。
捜しつづける過程自体が生きることそのものかもしれない。
答えは1つじゃない。
たくさんのことを考えさせられるドラマだった。