メランコリア

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少年少女・新しい世界の文学 26 七人のオーストラリアの子どもたち エセル・ターナー/作 学研

2023-09-18 13:51:23 | 
1975年初版 1982年 第5刷 平松幹夫/訳 伊藤和子/挿絵 村松幹三/カバーデザイン

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


「少年少女・新しい世界の文学」シリーズはどれもほんとうに名作ばかり

てっきり著者の幼い頃の思い出を書いた物語だと思って読んでいたら
全部、創作なのか?!驚

本書を書いた時、母親ですらなかったことにもビックリ
ここまで子どもの心情、両親の思いを描き分ける才能が素晴らしい

作者のまえがきにもある通り、これは教訓めいた本ではなく
子どもたちは毎日、毎瞬、イタズラを連発
7人もの子育てを任された20歳の後妻の苦労が伝わる

父親は古めかしいタイプで、子育ては母親任せ
しつけのためにムチで打つって
子どもの心に傷と恐怖心を植え付けることでしかないのに・・・↓↓↓

ハードカバーのデザインが実写写真なのにビックリ
最後の解説を読んで、映画化、ドラマ化されたそうで、その時のキャスト?

映像化されると、美男美女の俳優に変わっちゃうけれども
原作ではそれぞれ個性的な面々で、イラストのイメージで読み進めた

この一家のつづきもあるから、ぜひ読みたい


【内容抜粋メモ】

登場人物
父 ウールコット大尉 子どもたちは“彼氏”と呼ぶ
母 エスター 20歳 父が再婚した若く美しい妻
メグ 16歳
ピップ 14歳
ジュディ 13歳 活発、イタズラ大好き
ネル 10歳 妖精のような容姿
バンティ 6歳 食べるのが大好き、泣き虫、ウソをつくクセ、太め
ベビー
将軍(ジェネラル) エスターの実子 末っ子 フランシス

家庭教師兼家政婦 マーサ
ハッサル エスターの父 ヤラハッピニにある広大な牧場主








●ごちそうのローストチキン
父は子どもたちの騒々しさにガマンならず、2階で食事をとらせている
お客が来ていて、ご馳走が並んでいるのがうらやましくて
1人ずつ1階に行って、鶏肉などをもらってくるw







これが不作法だったと叱られ、とても楽しみにしていた観劇を禁止される
子どもたちは、それぞれアイデアを出して、ピップは父の書斎で勉強して見せたり
ジュディは庭の芝生を刈ったりしてみせる







亡くなった先妻の最後の言葉は
「ジュディのことは、気をつけてやってください」だったが
なにを気をつけたらいいか分からない父

バンティは父の服のボタンを磨いていて、誤って正装にニスをこぼして汚してしまう
父がムチでぶつと、いつも「ぼくのせいじゃない!」と泣きわめく

エスター:私はやっと二十歳になったばかりなのに、子どもが7人も・・・あんまりだわ と泣く


●遊園地
ピップとジュディは将軍を連れて、エスターが必死にシミを取った正装を届けに行く
途中で気前のいい老大佐から銀貨2枚をもらって有頂天になり
ボンダイ海岸の遊園地に行こうと思いつく

ジュディ:自分の子の世話をするのは父として当たり前よ

2、3時間、兵舎の父のベッドに預けていき、存分に楽しんでから兵舎に戻ると
若い将校が父が赤ん坊を抱いて、馬車に乗った姿が滑稽だったと笑うのを聞いて反省する

帰りの船で将軍を抱いた父に遭遇し、罵倒の雨嵐の後
父:ジュディは来週の月曜から寄宿学校へ行くんだ!


●寄宿学校へ行く日

父:
なにか事件が起きる時は、いつもジュディが首謀者だ
厳しいしつけが必要なんだ
1学期分の学費を払った ムダにする気はない

きょうだいは、自分の一番大事な宝物をジュディにわたす
家族の懇願も空しく、ジュディは寄宿学校へ送られる








●初恋
メグは1つ年上のオールディスと仲良くなる
オールディスには、大人の姉が3人いて、オシャレや美容、恋愛の話が大好きなため
メグも影響を受けて、オートミールを水にまぜて(!)顔を洗ったり
借りた雑誌のマネをする

オールディス:
マーギュリート、ウエストが23インチもあったら
均整のとれた美しさだなんて絶対言えないわよ

メグは気にして、コルセットをムリに締めて、呼吸も苦しいほど







オールディス:
16歳で結婚する女性もたくさんいるわよ
アンドリュー・コートニーはあなたがカワイイって言ってたそうよ

週に2回のフランス語のレッスンの帰りの船で
オールディスとBFのジェイムズ・グレアムを見て
18歳のアンドリューもマネしたくなり、メグと仲良くなる

アンドリューの兄アラン・コートニーは大学生でフットボール選手
メグはアランのほうが好きで、あきれるくらいの詩を書いた
「悲しみ」「涙」「ため息」「死」などがしきりに出てきた
(10代ってそんな感じよなあ・・・

休暇に4人でダブルデートしようとジェイムズが提案
アンドリューはメグにその時キスしたいとささやく

メグは断りきれず「アンドリューとは友だちでいたい キスは嫌いだからしないで」
という手紙を書いて、バンティにたくすも、友だちと遊んで、手紙をなくしてしまう
バンティはいつものように「渡した」とウソをつく

オールディスは風邪で来れないのも知らず、メグは夜中に家を抜け出して
待ち合わせ場所に行くと、待っていたのはアラン







アラン:
アンドリューはまだ帰っていない
なぜ君はあんなオールディスの言いなりになってるんだい?
妹のフロッシーがあの娘と仲良くなって、派手な服を着だしたら心配になるよ

もうこんなことはしないと約束するメグ

将軍が病気で、メグは子守唄を歌い、ピアノを弾いてあげるが
高熱で倒れてしまう

医師はなぜこんなにきつくコルセットを締めているのかと驚く
エスター:私は前の奥さんのように、子どもたちになんでもしてあげるなんてできないわ
と言って泣く

寝ているメグの青白い顔が、4年前に亡くなった妻にそっくりだと思う父
(前妻もこんなにたくさんの出産、子育てが負担で命を縮めたとか?


●バンティのウソ
バンティはウソをついた自責の念で、父の愛馬にクリケットのボールを当てて怪我をさせてしまう
使われていない物置小屋に隠れると、寄宿学校から自力で帰ったジュディがいて驚く!

77マイルの道のりを2日も食事抜きで歩いたため、すっかりやせ衰えてしまっている
なにか食べ物を持ってきてと言われたバンティ







バンティが時々食べ物を盗むため、マーサは食料貯蔵室にカギをかけている
そこに通じる窓の下にはサボテンがあり、飛び越える時にあちこち怪我をするバンティ

いろいろ盗んでいるのをマーサと父に見つかり、またムチで打たれる
ジュディは「まだ家に着かないの?」とうわごとを言って意識を失う

きょうだいが揃うと、どうやって学校を抜け出せたか話すジュディ
学校ではしかが流行り、生徒が実家に帰されることになり

友人のマリアンの家で世話になる代わりに
途中で列車に乗って自宅で1週間過ごすことにした
持っていたお金を落としてしまい、小屋に泊めてもらったり、野宿までした


●ピクニック
その後、布団、ポット、ランプ、食べ物もなくなり、フシギに思うマーサ
ジュディはみんなで川へピクニックに行こうと提案






食べ物の調達係になったバンティは父に見つかり
愛馬をケガさせたことを話して、また激怒される

父:お前のウソつきと卑しい精神をたたき出してやる! さもなければ叩き殺してやる!
(とんでもないDVだ↓↓↓

バンティ:ぼくじゃない! ジュディは家にいるよ 学校から逃げてきたんだ

父はバンティを小屋に監禁して
物置小屋にこれまで家からなくなったモノが散乱しているのを見る
子どもたちが川でピクニックしてるから、とエスターを散歩に誘う





父が来るとジュディはすぐに隠れたが、父は子どもたちを家にいれてカギを閉め
物置小屋に寝ているジュディを起こして、一緒に汽車で学校に戻れと命令するが
ジュディはひどく咳こみ喀血する(!!








●牧場主の招待
片方の肺が炎症を起こして、絶対安静を命じられるジュディ
父は回復するまで学校を休んでいいと言っていたとエスターから聞くと
驚くほど回復するジュディ







医師:
子どもが肺炎で死ぬ危険性はおおいにある
お嬢さまは活発で、想像以上の感情の浮き沈みを体験している
どうかしっかり見守ってあげてください
いつの日か素晴らしい女性になりますよ


この時も、どう見守ればいいのか分からない父

疲れ過ぎているエスターにも転地療養が必要で
エスターの実家から数週間遊びに来いと招待されて大喜び
大家族の切符は大変な費用だったが、2か月の独身生活が楽しみになる


●ヤラハッピニ牧場




エスターとジュディ以外、遠出は初めてで、最初は列車ではしゃいでいたが
すっかり飽きてしまう子どもたち

駅には二輪馬車で父ハッサルが迎えに来ていて
門を入ってからも家まで15分もかかる大豪邸!







みんなで全部の建物を探検して、その歴史を聞く
入植者は苦労の連続だったが、羊毛の値が上がってから生活が良くなった

食糧倉庫には、干しブドウ40ポンド、ハム、ベーコン
石鹸、ロウソクもすべて自家製!

これだけ大量にあっても、労働者が多いため、半年に1回補充される
子どもたちはそれぞれ馬を選び、ここにいる間自由に使うのを許される








●牛の選別
ピップはハッサルから小さい銃をもらって、ウサギ、野ネズミなどを撃っては自慢する
大イベントの牛の選別は危険なので、子どもは禁止だが
ピップがあまりに張り切っていたので連れて行く

数百頭の牛を大勢で囲んで前進させ、1日がかりでレベルごとに分けていく
最後のゲートには、ひと目見ただけで等級に分ける男がいる

その日の興奮を話すと、子どもたちは牧場で働く夢を抱く
食いしん坊のバンティは、ギレットさんのような倉庫のカギを持つ人になりたいと言う(w


●カモの池のピクニック
エスターは舞踏会に出かけたため、子どもたちはカモの池にピクニックに出かける





ギレットはメグのリボンが欲しいと言う

ギレット:
あなたを見ると死んだ妹を思い出しますよ
もし生きていたら、私はこんな見下げ果てた男にになってなかったでしょう

その後、ギレットがまた酔って騒ぎを起こした話を聞いて
失望し、なんて弱い人間だろうと軽蔑するメグ

ギレットがリボンを返しに来て、黙って受け取ると

ギレット:
お願いだから、もう一度リボンをください
あなたの弟さんも、いつか人生の道を誤ることがあるでしょう
その時、あまり厳しくしないでください

あなたは純白で、弟の心は真っ黒だと決めつけないでください
彼らもそれは十分わかっているのです

世間は限りなく冷たい言葉を浴びせるものです
姉妹までがそんなことをしないで、世間に任せておいたらどうでしょう

私には1つ上の姉がいます とても厳しい人でした
メグさんまでそうなると思うと耐えられなかったのです

メグはリボンを渡して泣く


●悲劇




ジュディは将軍と遊んでいて、ダニが体に食いこんで取り出している間
枯れ木が将軍の上に倒れてきて、とっさにその下敷きとなる!
将軍はケガひとつしなかったが、ジュディは動けない

戸板に乗せて小屋に寝かせ、ピップに医者を呼ぶよう指示し
ギレットは屋敷から馬車を持ってくる間、メグに付き添うよう頼む

ギレット:背骨が折れているかもしれません それは死を意味します
メグ:ジュディは死ぬでしょうか? 私1人の時に・・・
ギレット:神さまだけが知っています







ジュディ:私、とても怖いわ 
メグ:天国は、、、暗くないわ

ジュディに頼まれて、いろんな讃美歌を歌うメグ

日はくれて 四方はくらく
わが魂はいとさびし
よるべなき身のたよる
主よ ともに宿りませ

十字架のくしきひかり
閉ずる目にあおがしめ
みさかえにさむるまで
主よ ともに宿りませ

メグ:お母さんがいらっしゃるのよ 寂しくないでしょう?

風がすーと吹いて、ジュディはそっといってしまった


●最後に
大尉は家族を連れて帰る前に、ハッサルは墓をつくる







メグはこの件の後、すっかり大人になり、もう昔のような子どもには帰れなくなった
ピップらはやがて笑顔が戻るが、時々、憂鬱になると
たとえフットボールの試合中でも急にその場からいなくなる

バンティはあまりウソをつかなくなる

大尉はあとの6人の子どもを一層可愛がるようになるが
その気持ちを表に出すことはなかった

将軍は2つの命をもらったとして家族に崇められた

最後の2章を書く時、なかなか進みませんでした
みなさんをさらに悲しませないよう、ここでペンを置きます
もし聞きたいのなら、少し時をおいて、お話したいと思います
それまでごきげんよう さようなら




訳者あとがき
原題は“Seven Little Australians”
1972年 オーストラリアでテレビ映画化
日本でも『リバーハウスの虹』としてNHKが連続放映した







エセル・ターナー(1872~1958)
イギリス生まれ 9歳の時、家族とオーストラリアに移住
22歳で本書をロンドンで出版し成功

同じ一家の物語
『ミスルールの一家』
『かわいい不良少年』
『かわいい母親のメグ』


裁判官と結婚、ジーンが誕生
彼女も姉リリアンとともに少年少女小説作家になった

エセルは生涯で長編38巻、詩集6巻を出版

本作の舞台は19世紀のシドニー市郊外
オーストラリアは長い間、イギリスの植民地だったが、1901年に独立

工業国の日本にとって欠かせない原料の大半をオーストラリアから輸入
輸出入ともにアメリカに次ぐ2位
オーストラリアにとって日本は第1位の輸出国


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