1976年初版 塩谷太郎/訳 岩井泰三/挿絵
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「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
ゴリゴリな冒険物語だった
親の仇なら殺人も正義だった時代
いかにも少年少女向けだな~と思いながら読んでいたら
実在する人物も登場させて、史実に基づいて書かれたと知ってビックリ
こんな野蛮な時代・国に生まれなくて、ほんとうに良かった・・・
仇をとるはずが、インディアン村の神に崇められて
心臓を切り取られる生贄にされそうになるのも生々しくて息が詰まる/汗
【内容抜粋メモ】
登場人物
トマス・ウィングフィールド
ルイザ 母
ジェフリー 兄
メアリ 妹
フアン・デ・ガルシア
<アズテク帝国>
モンテスマ 皇帝
オトミー 皇帝の娘
グァテモク モンテスマの甥 オトミーのいとこ
クイトラフア 皇帝の弟
マリーナ アズテクの女
<スペイン軍>
コルテス 指揮官
ベルナール・ディアス 隊長
アンドレス・デ・フォンセーカ セビリアの法律家
●あやしいスペイン人
トマスが18歳の時、馬に乗った男からヤーマスへの道を教えてくれと声をかけられる
名前を言うと、急に剣で襲ってきて、トマスは彼を木に縛って裁判官を呼びに行くが
ビリー・ミンスという男がワケを知らずに助けて、ガルシアは逃げた
帰宅すると、母はガルシアに胸を刺されて殺されていた
父:
あいつの息の根を止めてこぬかぎり、私はお前を呪い続けてやるぞ
お前がお母さんを殺したのだぞ(ひどい勘違い父親だな・・・
母はスペイン人でいとこのガルシアが許嫁だったが好きになれず
イギリス人の父と出会って結婚した
ガルシアは、恨みを晴らしてやると言ったため、ずっと怯えていた
トマスはスペインに行って、必ず仇をとると誓う
トマスが出発して1年も経たずして、父は急死
●セビリア
港で男女の別れの言葉を聞いて、ガルシアと気づいて決闘する
勝負が決まると思った時、ガルシアの恋人がつかみかかってきて
ガルシアに逃げられる
世話になっているセビリアの法律家フォンセーカにワケを話すと
ひと月前に話してくれてたら裁きを下せたのにという
ガルシアは他にも殺人の罪があり
ずる賢いから方々に問い合わせて探させようと約束してくれるが
その後、病死してしまう(不幸ばかり続くな
●奴隷船
貿易商になりすまして船に乗るが、嵐に遭う
トマスは10人ほどでボートに乗って脱出
飢えと渇きで次々死に、1そうの船に助けられる
そこに乗っていたのはガルシア!
彼はトマスがスパイで殺人犯だといい、鉱山で働く奴隷にしようと
足枷、首かせをして、他の奴隷と同じ船の底に閉じこめられる
200人いた奴隷は黄熱病にかかって次々死に
船員にもうつって、乗組員もどんどん死ぬ
食料と水を温存するために、奴隷を全員海から落とす
トマスも落とされて、樽に入り、潮に流されて陸に着く
●クェツァル神の御子
川で数人の原住民に会い、食べ物をくれて、カヌーに乗せられトバスコ町に着く
そこで美しい少女マリーナに出会い、世話をしてくれる
空地の中央に大きなピラミッドが立ち、てっぺんに神殿がある
戦の神フイツェルと、空の神クェツァルが祭ってある
酋長と僧侶により、トマスは生贄のグループに入れられる
マリーナは同情し、酋長にアナワクの皇帝モンテスマがテュール問題に悩み
トマスはもしかしたら神の御子かもしれないと提言して助かる
トバスコで暮らすうちにマリーナから言葉を覚える
皇帝の甥グァテモクと親友になる
ピューマが襲いかかった時に助けて命の恩人となる
●モンテスマの宮殿
メキシコ市にある宮殿に行くと、素晴らしく美しいオトミー姫に会う
モンテスマの愛娘でオトミー族の王女
だいぶ前からクェツァル神の御子が再来するという予言があったため
トマスは世界の造り主テズカットの再来、神の御子として崇められることになる
この国では、毎年、若い男がむりやり選ばれ
1年間、町を支配することができるが、最後はピラミッドで心臓をえぐられ
首をはねられる運命にあると教えるオトミー
1年も死を待つ恐怖に怯え、彼らの神に呪いを吐くトマス
●死の結婚
毎日、宴が開かれ、皇帝と僧侶はトマスの妃を選ぶ
グァテモク:
生きている間だけでも楽しんで、死ぬ時がきたら潔く死んでください
僕たちもいずれは死ななければならない運命なのです(冷たい親友だな・・・
オトミーが第一の妻に選ばれた
●とらわれの皇帝
ついにコルテスのスペイン軍がメキシコ市に侵入
そのそばにはマリーナが妻として寄り添っていた
モンテスマはスペイン軍に囚われ監視される
アルヴァラード将軍の命令でアズテクの貴族が600人も殺された
●いけにえの儀式
戦いを止めて、スペイン軍に従うよう説得するモンテスマを矢で射るグァテモク
トマスは裸の体に絵具を塗られ、ピラミッドのてっぺんに連れてこられる
いけにえを見るために何千人の群衆が集まる
いけにえの儀式は長く、その間にスペイン軍はピラミッドに押し寄せてくる
オトミーは妻として一緒に死ぬ権利があると、横に一緒に寝て
その勇気と愛に感動する
正午の太陽が胸に描かれた輪に来たら心臓が取られる
その前に刺したら、民と国に不幸が訪れると信じられている
オトミーはテュール人に助けを求め
僧侶がナイフを振り上げるが、スペイン軍に殺されて夫婦は死を免れる
テズカットは生贄を拒んだとして絶望する民
2人の傷から流れた血が混ざり、縛っていた綱を切ってくれたのはガルシアだと気づく!
コルテス:我々はキリスト教徒だ 人殺しをしに来たのではない と2人を逃がす
(これだけ原住民を大量虐殺しておいて、よく言うなな
テズカットの神像は壊され、一度も消されることのなかった神火が消える
オトミーはトマスを宮殿の部屋に連れていき、介抱する
トマス:あなたほど勇気に満ちた婦人はいない 僕はあなたを愛します
敵の血が流れているトマスを殺すかどうか会議が開かれる
オトミーはここでもトマスは味方となって働いてくれると言ってかばい
2人は正式に夫婦と認められ、トマスは永遠にこの国を守ると誓わされる
結婚はオトミーが死ぬまで続く
●恐怖の夜
トマスは水門を開いて、町を水びたしにする作戦を考えて
三千の弓勢の指揮官に任じられる
早速、大きな橋は壊される
敵味方も分からない状態で戦い、ガルシアと間違えた男を逃がすと
この恩は忘れないと言って去る
●宝をうずめる
モンテスマの弟クイトラフアが皇帝となり、再び神々の像がピラミッドにたてられる
スペイン軍から奪い返した財宝を隠す任務を与えられ
グァテモクらとともに丘の上の穴におさめて埋める
●メキシコ市の陥落
食料が尽き、木の皮、虫、生贄の捕虜の肉まで食べて!生きながらえる
死体から熱病が発生し、さらに死体が増えた
オトミーの乳が出なくなり、生まれたばかりの息子が亡くなる
新帝クイトラフアも亡くなり、グァテモクが後を継ぐが
とうとうスペイン軍に囚われる
コルテス:
わしは勇士を尊敬する あんたの身は安全だ
マリーナは宝のありかを知っているから生かしたほうがいい とかばう
スペイン軍についたトラスカラ人は、勝利した褒美に大金がもらえると信じていた
早く財宝を分け与えないとコルテスの身も危ないため
宝のありかを話せば、ヨーロッパに帰してやろうと約束するが
あくまで知らないと拒んだため、サルシダと名前を変えて
側近になっていたガルシアに拷問を任せる
拷問部屋ではすでにグァテモクが拷問を受けていた
トマスも両足に燃える石炭を押し付けられる
オトミーが面倒をみるよう言われて、次はオトミーが拷問を受ける番と言われて
辱めを受ける前に2人で命を絶とうと決心していると、マリーナが助けに来る
剣で木製の窓格子を切り、兵士の服を着ていれば逃げられるかもしれない
番小屋にはガルシアがいて、トマスはオトミーにつかまりながらなんとか逃げるが
1人に見つかり、オトミーは隙を見て切りつける
●ピネスの町
そこに8人ほどのオトミー族の兵が来て、2人は助かる
オトミー族の町に行くと、夫や息子を戦争で亡くした女たちが呪いの言葉を投げつける
宮殿から町の人に話すオトミー
代表者マクストラと話し、それを聞いて判断をあおぎたいと伝える
そのそばにはコルテスの使者もいて、トマスらを連れて行こうとしている
オトミー:
私は事態を説明した上で、みなさんにどうするか決めるよう言った
戦えと強制はしなかった
みんな1つになって白人に向かわなければ滅ぼされるとも言ったが
結局は、同じ種族からトラスカラのような裏切り者が出てアナワクは滅びた
トマスも勇ましく戦った そしてむごい拷問を受けた
この山国にこもれば追い返すことができる
いずれは死ぬのなら、奴隷としてでなく、自由の民として死んでください
この演説で人々の心は一変し、コルテスの使者は逃げだす
●降伏か死か
その後、何年かトマスとオトミーは平和に暮らし、息子も生まれた
しかしまたオトミー族を皆殺しにするため
ベルナール・ディアスの指揮するスペイン軍が来る
ディアスは以前、トマスが命を救った男
トマスはスペイン軍を狭い所に追い込み、上から岩を落とす作戦に持ち込むが
後ろからも攻められて、町の門まで逃げる
またもやガルシアがが総督代理として来て、無条件降伏をうながす
トマス、オトミーらは公衆の前で絞首刑という条件
オトミーは再び民に選ばせると、奴隷になるより、自由の身で死ぬほうを選び
ピラミッドの上で籠城する
ディアスはトマスらの助命、土地、財産は没収という譲歩をしてくる
トマスの息子はイギリスに帰ろうと提案
ディアスはトマスが命の恩人だと気づき、キリスト教徒に戻らないかと言う
●噴火口に消える
トマスはディアスにガルシアとの因縁を話す
ガルシアはメキシコ市に発つ前に、トマスの息子を殺してしまう
トマスはすぐさま後を追うと、ガルシアはクサカ火山の噴火口まで逃げ、もうあとがない
ガルシアを憎む気持ちさえ消え失せ、なぜ家族をこれほどの目にあわせたのか理由を聞くと
ガルシア:
おれはお前の母親が好きだった
お前の父親と結婚し、イギリスに逃げてしまい
20年後、たまたま居場所を知り、殺すつもりはなかったが殺してしまった
その時、彼女は言った
「あなたはいつか、私の血を受けた者に、火と岩と雪のある所で殺されるでしょう」
それ以来、恐怖のとりこになった
お前も、お前の息子もおれにとっては危険だから殺したが
今のおれにはあれの亡霊が見える
ガルシアは見えない敵と戦って、噴火口に落ちて死ぬ
●オトミーの死
オトミー:
あなたは一度も心から私を愛したことはありませんでした
心の底ではインディアンの血を憎んでいたのです
私が死ねば、あなたはこの国の神々の絆から解かれます
私は死んで日の神の国へまいります
オトミーは毒薬を飲んで自ら命を絶つ
呆然としたトマスはディアスがすすめるままにメキシコ市に向かう
(この時まだ40歳前後って/驚
●ふるさとの教会
実家に戻ると、ビリー・ミンスから父も兄も亡くなったと聞く
トマスも海で死んだことにされていた
家にはメアリと夫、その子どもたちがいて
泣いて再会を喜ぶ
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あとがき
本書の原題は『モンテスマの娘』
メキシコを舞台にアズテク帝国滅亡の悲劇を書いた歴史冒険小説
史実がもとで、ディアス、モンテスマ二世、グァテモクなどは実在人物
ヘンリー・ライダー・ハガード
1856年 イギリスのノーフォーク州生まれ
19歳でアフリカに行き、約25年間総督府の役人をした
『ソロモン王の洞窟』
『洞窟の女王』
『アラン・クォータンメン』