私が持っている古い「世界美術全集」を処分しようと考えていたが、その前に伯母にも見せてからと思い、過日、数冊を持って行った。
伯母は随分前に一度だけ伯父とヨーロッパ旅行をした事があるので、「ゴッホ」や「セザンヌ」などの画集に興味を持つのではないかと思ったのだ。
「晩鐘」で有名な「ミレー」の作品では、働く農民を沢山描いている。
当時の画家は、王侯貴族の肖像画などを描いて収入を得ていたので、「ミレー」が農民を描いても少しも売れなかったに違いない。でも「ミレー」は、一生懸命働いて堅実な生活を送る農民の姿に惹かれたんだね、などと説明しながら農作業をして来た伯母に見てもらった。
伯母は「この絵は知っているよ。」と言いながら見ていた。
画集なので、小さな文字を読めなくても、何とか見えるようだった。
一昨日、施設に行くと、看護師さんから「部屋にある美術の本が要らないのなら『ディサービス』で来る人達に見せたいけど…」と言われた。
昨日は伯母の施設の入居費用を払うため、銀行で貯金を下ろして施設に行ったので、ついでに「ロートレック」や「ゴッホ」「ゴーギャン」の「美術全集」を3冊届けた。
大判で重い本なので、これからは行く度に数冊ずつ持参することにしようと思っている。
ところで昨日は伯母の部屋に行くと、丁度、図書館から借りた「巨大文字の民話」を伯母が見ていた。
どうかと聞くと、「東北地方の方言で書いてあるので、言葉が良く分からない。」という。方言の下に注釈が入っているが、小さくて見えないようだ。
そこで私が伯母の耳元で声を出して、方言の注釈もしながら「屁っこき嫁さん」という話を読んだ。
面白おかしく書いてあり、独特の方言の言い回しにも味があって、読んでいる間中、伯母は大きな声を出して笑い続けた。
そして「一人で部屋にいると笑うことなどないのに、この本はいいね~。」としみじみ言った。
私は「伯母さんも声を出して読んだらいいよ。」と言った。
この「巨大文字の本」は図書館の本棚1つにびっしりとあるので、また適当なのを借りて来て、時々は読み聞かせをして伯母を楽しませたいと思った出来事だった。