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観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



女子シングル・フリー (代々木第1体育館)


濃密な時間が、あっという間に過ぎていった。トリノ五輪の最終代表選考会となる全日本フィギュアスケート選手権大会。女子シングル・フリーは、日本のトップ6が次々と完璧な演技を披露し、そのたびに超満員となった観客はスタンディングオベーションをすることになった。

最終グループ(6人)の最初の滑走者は荒川静香。彼女が始まりだった。ベテランらしい落ち着いたミスのない演技は、その後の熾烈な戦いを予感させる。続いて、トリノ五輪の出場権はないものの、いまや世界の頂点さえ手中にある浅田真央。プレッシャーのない浅田は公約どおり、トリプルアクセル(3回転半)を2度成功させ、ひときわ高いジャンプと笑顔で会場を魅了した。この日はじめてのスタンディングオベーションが起こった。しかし、クライマックスは、この後だった。

浅田の高得点に沸く場内が落ち着くのを待って、恩田美栄(おんだよしえ)が登場。キュートな浅田とは対照的な、パワフルでスピードのある恩田の演技。ノーミスで終わった瞬間のガッツポーズは、フィギュアスケートには似つかわしくなかったかもしれない。しかし、トリノを目指す戦いの場には、あって当然の姿だった。恩田の姿をみて、五輪の日本代表争いを目の当たりにしているということを、観客は再認識したはずだ。そして、本命、村主章枝(すぐりふみえ)。荒川の麗しさ、浅田の正確さ、恩田のスピード、そのすべてを備えた完璧なスケーターがいた。文句なしに会場も、そして審査員も虜にしていた。

5番目に滑った中野友加里も素晴らしい演技だったが、何かが足りなかった。恩田や村主の後だけに、余計にそう感じたのかもしれない。そして、最後の安藤美姫。練習の時から強張っていた表情が、最後のスピンを終え、フィニッシュした瞬間に、柔らかな笑顔になっていたのが印象的だった。安藤の笑顔を見て、観客もそれまでの緊張から解放された。

久しぶりに生でフィギュアスケートを見て、今さらながらに日本女子のレベルの高さに驚かされた。それぞれの4分間の演技が素晴らしかったと同時に、6人の演技がまるでひとつのステージかのように見入ってしまったことが、その証だろうと思う。

フィギュアスケートのトリノ五輪日本女子代表は、村主、荒川、安藤の3人に決まった。個人的には、恩田を応援していたので、少し残念ではあるが、順当な結果と言えるだろう。3選手には、トリノで悔いのない演技をしてもらいたい。



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日本サッカー協会による、ドイツ・ワールドカップの取材証の割り当て先が決まったらしい。日本サッカー協会が、FIFAから割り当てられた取材証の数は、記者100人分、カメラマン40人分である。テレビ中継に関する、いわゆるライトホルダーやインタネットメディアはFIFAが直接管理するため、各国のサッカー協会は新聞・雑誌などのリトゥン・メディア(=written media)関係者分のみを扱う。
先日、友人のS氏から記者証が取れたとの電話をもらった。一生懸命日本代表を追いかけて記事を書いていたことが認められたということだろう。2002年大会のときには、一緒に韓国に行って、右往左往しながら試合を見ていたことを考えれば、たいした出世だ。ドイツでの活躍を期待したい。
一方、師と仰ぐU先生は記者証がもらえなかった。1970年メキシコ大会から9大会連続で取材を続けてきたU先生は、来年、観客としてドイツに向かうことになる。取材証がもらえなかった理由としては、国内だけでなく海外まで、丹念に日本代表を追いかけて記事を書いているライターを優先した結果だろうとおっしゃっていた。大学で講義をもち、また高齢であることを考えれば、日本代表の追っかけも不十分になろう。
しかし、現地取材10大会目となるはずだったドイツ大会。足掛け37年という長いスパンのなかで、ワールドカップという世界的なイベントを語れる唯一の記者に取材証が与えられなかったのは、日本のサッカー文化が、まだまだ成熟には遠いことを表しているのではないか。なんともさびしいかぎりである。
取材者たちにも、当然、世代交代はある。先人たちに代わって記者席に座る若いライターたちには、その責任を十分に感じながら、ワールドカップに取り組んで欲しいと思う。

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