「茂一」というのが殿の名前である「もいちさん」と、呼ばれるときがあり普通に返事をするので、ずっと「もいち」だと思っている人がいた。おまけに、ブランド名で「茂一(もいち)」という矢があり、それを「わしの矢や」などというので、まぎらわしい。弓道の人は「もいっちゃん」と、親しげに呼んでくれる。また「しげかずさん」と、呼ばれても訂正しない。いつも呼ばれるまま返事していた。
名前は呼び間違えられたりして、いちいち訂正すると小さなストレスとなるというのを聞いたことがあるが、殿の場合は訂正しないので、無頓着というかおおらかというか。
本当は「しげいち」と、呼ぶ。どちらかというと田舎っぽい呼び方だ。
若い時から「もげさん」と、いうあだ名で呼ばれていて、わたしが弓道協会へ入ったとき「もげ」という苗字かと思っていたくらいだ。先輩も「もげさん」と、さん付けで呼んでいる。わたしはさすがに結婚してからは「もげさん」とは言わなくなったが。
葬儀の時、中学からの友達のSさんが「弔辞」を読んでくれた。その時、読む前に私のところへやってきて「まこちゃん、もげってシゲイチやったんね」と、改めて聞きに来たので吹き出しそうになった。娘もそばで聞いていて、後で「受けたわぁ。」と、笑っていた。余談だが、そういうSさんは、葬儀屋の紹介の時「〇〇ひでかずさん」と言われていた。本当は「しゅういち(秀一)」なのに。
さて、そのもげさんは新たにもうひとつの名前がついて、娘たちは「しゅうもちゃん」と、呼んでいた。法名である。「宗茂」と、書く。
ずっと前に、殿と戒名の話をしたことがある。お釈迦様の弟子となるため名前が付くらしいけど、名前を変えないと弟子にしてもらえないのか。スナック「浄土」の源氏名みたいではある。そのような罰当たりなことを言ってはいけない。