仕事中にかかってくる電話…対応に時間がとられるため「メールで済ませればいいのに」と思ったり、飛び込みの営業電話を迷惑と思ったりすることはないだろうか。
「教えて!goo」でも
「会社に掛かる営業電話の断りかたについて」相談している新社会人もいるようだ。
また、最近ではプライベートな時間でも、メールやスマートフォンでLINEなどのメッセージングアプリを使いこなす年代からすれば、電話を受ける側の都合を考えると相手の時間を奪うってしまうため、電話を避ける傾向があるようだ。
さて、この時期は現場に配属されたばかりの新卒営業マンによるテレアポも増える時期だ。今回は電話で相手の時間を奪う行為の違法性について考えてみようと思う。電話をする方も、受ける方も参考になれば幸いだ。
■電話によって問われる可能性がある4つの違法行為
電話をするだけで罪に問われる事はないが、意図や態様などによっては、違法性を帯びることもある。話を伺ったのは富士見坂法律事務所の井上義之弁護士だ。
(1)業務妨害罪
「中華料理店に対し3か月の間に970回にわたり無言電話をかけた行為について偽計業務妨害罪にあたると判断された裁判例があります(東京高判昭和48・8・7)。数年前にも、法律事務所に対し6日間に330回にわたり『死んでしまえ』などといった電話をかけた人物が業務妨害の疑いで逮捕された、との報道がありました」(井上義之弁護士)
(2)軽犯罪法違反
「軽犯罪法1条は、他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者(31号)を拘留又は科料に処する、と定めています。前述した業務妨害罪とまではいえないようないたずら電話であっても、軽犯罪法に違反する可能性があります」(井上義之弁護士)
(3)特定商取引法違反
「特定商取引法は電話勧誘販売の方法を規制しています。電話勧誘の際、勧誘者は、事業者名、勧誘者の氏名、何を販売しようとしているのか、勧誘目的である旨を電話の相手に伝えなければなりませんし(16条)、電話の相手が断ったらさらに勧誘してはいけないことになっています(17条)」(井上義之弁護士)
(4)民事上の不法行為責任
「不法行為によって時間を奪われた場合、被害者は加害者に対し被った損害の賠償を求めることが出来ます。例えば、さきほど述べた中華料理店への多数の無言電話のようなケースは、刑事上、業務妨害罪にあたるとともに、民事上も不法行為にあたると考えられますので、中華料理店は加害者に対し電話により業務が滞ったことに伴う損害の賠償を求めることができるでしょう」(井上義之弁護士)
個人的には(3)に驚いた。会社名や氏名、商品、勧誘目的であることを告げないとならないということを知っている営業マンはどれだけいるのだろうか。また断られたら、それ以上勧誘してはならないことも初めて知ったが、こういったことを営業研修では教えているのだろうか。個人的にはもっと周知されていい気がした。
■時間をお金に換算するのは難しいが…
時間とお金の価値をどう計るかは無理難題だが、一つの基準になり得るのは刑事補償法だ。本法は無罪であることが確定した方に対して、拘束された期間に応じて補償金を払うことを制定しており、その金額は1日当たり最大12500円だ。この金額の妥当性について井上義之弁護士にどう思うか聞いてみた。
「身柄を拘束された結果、職を失い人生が全く変わってしまう、住宅ローンが払えずに家を失ってしまう、といったように、1日12500円では到底填補できない不利益を被ることは充分ありえます。個人的には、この上限は低すぎると思います」(井上義之弁護士)
■時間の価値が増してきている?
情報伝達は大昔、狼煙や太鼓だったという。紙の製法が確立されると情報の運搬が楽になった。飛脚は親書の伝達に役立ったし、伝書鳩は軍事利用もされた。電信機が発明されてからの伝達手段の技術発展は目覚ましく、モールス信号などの電信サービスを始め、電話、無線電信など次々に開発された。1900年代は無線通信、FAX、ポケットベル、電子メールなどが普及した。
情報伝達の手段が増え、スピードが増し、伝達量が増えることで、誰でもいつでも情報を伝達することが可能となった。しかし、それは情報伝達が容易になったというだけで、情報自体の質には一切関与しない。むしろ必要のない情報で埋もれてしまう可能性すらある。となると我々はその情報の良し悪しを見極めるための時間が必要となる。情報伝達の技術革新は、時間の価値を相対的に上げているのかもしれない。
専門家プロフィール:弁護士 井上義之
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