大阪・東京で最悪“都市封鎖”か!? 「変異株第4波」猛威、国会でも「緊急事態」以上の措置を求める声 専門家「日本流の対策が重要」
新型コロナウイルスの「変異株第4波」の猛威が加速し、14日の新規感染者は大阪府、兵庫県などで過去最多を更新した。「蔓延(まんえん)防止等重点措置」実施から10日が経過しても感染は止まらず、3度目の緊急事態宣言もこれまでと同じ効果を期待できるかは不透明だ。欧米のような「都市封鎖(ロックダウン)」を行うしかないのか。
【イラスト】他人に「うつす」時期はいつから?
14日の新規感染者が1130人と2日連続で1000人を突破した大阪。府内の重症病床の使用率は数字上は9割強だが、実態として重症病床不足に陥っている。
吉村洋文府知事は同日の記者会見で、「強い危機感を持っている」と語り、重点措置の効果が不十分であれば、緊急事態宣言の発令を要請したいと言及した。その場合は「大幅な休業要請が必要」とし、百貨店やテーマパーク、ショッピングモールなども対象とすべきだと話した。繁華街がゴーストタウンのようになった昨年4月の1回目の緊急事態宣言並みの要請となる可能性がある。
兵庫も507人の感染を発表した。県の担当者は「想定をはるかに上回る速度で広がっており、医療崩壊が目前に迫っているとの危機感がある」と強調する。
東京医療保健大の菅原えりさ教授(感染制御学)は「大阪では、緊急事態宣言の解除から約1カ月で感染者数が一気に増加している。東京都も、21日に解除から約1カ月を迎える。東京も大阪と同じ程度まで感染者数が増加する可能性はあるだろう」とみる。
東京は14日の感染者が591人、神奈川県が205人と、いずれも3月の緊急事態宣言解除後で最多となった。神奈川、埼玉、愛知の各県は重点措置の適用を政府に要請する方針だ。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は「いわゆる『第4波』と言って差し支えない」と明言する。
過去2回の緊急事態宣言は大きな効果があった半面、首都圏の2回目の宣言時には解除直前に感染者を抑制できなくなるなど“宣言慣れ”の状況もみられた。第4波で感染力の強い変異株が本格的に広がった場合にも同様の効果があるのかという問題もある。
厚生労働省に助言するアドバイザリーボードは、感染力の強い「N501Y変異」を持つ変異株が5月前半に首都圏で8~9割程度、関西で90%台後半に達する見込みを示す。
国会でも、より厳しい措置を求める声が出始めた。9日の衆参両院の議院運営委員会で、日本維新の会の杉本和巳衆院議員は、感染封じ込めのためロックダウンに踏み切った欧州の事例を引き、今後の大流行に備えた「私権制限の議論が必要だ」と要請した。西村康稔経済再生担当相は、「国民の命を守るためにどういう法体系が必要か、不断に検討したい」と答えている。
前出の菅原氏は「ゼロベースで新型コロナを抑え込みたいならば、ロックダウンが効果的かもしれない。しかし経済的なダメージは計り知れず、また日本は欧米諸国と比べ圧倒的に感染者数も死者も少ないということから、重要なのは日本流の対策をしっかり実施することではないか」と語る。
強い自粛を実施した1回目の緊急事態宣言の際には、20年4~6月期の国内総生産(GDP)が年率28・1%減と戦後最悪の落ち込みを記録したのも記憶に新しい。
東北大災害科学国際研究所の児玉栄一教授(災害感染症学)は、「宮城県でも蔓延防止等重点措置を受け、新規感染者数はピークアウトしてきている。ロックダウンまで議論する必要はないように思う。感染対策は政府や地方行政機関が方針を立てるが、それを実行していくのは国民ひとりひとりだ」と語る。
局面を打開する切り札はワクチンだが、高齢者への接種が本格化するのは5月以降とみられる。
児玉氏は「米国では、国民の2~3割程度のワクチン接種率で感染者数が減少する傾向もみられたという。感染対策を継続する条件なら、国民の6割以上がワクチンを接種すれば間違いなく感染者数は減っていくだろう」と指摘した。