本澤二郎の「日本の風景」(4870)月刊タイムス2023年8月号掲載記事
<護憲リベラルの宏池会会長・岸田文雄の改憲超軍拡政治の黒い闇>
生前の平和軍縮派の巨頭・宇都宮徳馬は「今の政治家は信念がない。みなカネで動く」と嘆いた。それでも有権者の洗礼に配慮して、自民党議員でさえも増税や「改憲軍拡」を口に出す者はいなかった。したがって非戦の憲法下、「武器弾薬に43兆円」と公然と予算化するとし、武器弾薬メーカーに血税を流すなどという芸当を、今を生きるジャーナリストには予想さえも、夢に見ることさえも出来なかった。護憲リベラル・宏池会会長のどす黒い闇が存在する!
1,地獄へと舵を切った戦争準備43兆円の大罪
43兆円を貧者や福祉に回したらこの国は明るく一変する。岸田のそれは
あたかも日本政府が、そっくり「死の商人」に変身したことを内外に誇示するものだから、隣国は驚愕しながら身構え、国際社会はアメリカを含めてあっけに取られた。G7ヒロシマ首脳会議に姿を見せた国連事務総長は、会議がロシア・ウクライナ戦争を終結させるための話し合いの場では全くなく、ロシア退治の談合だったことにひどく衝撃を受けた。
しかし、この大事な評価が活字や映像になることはなかった。
怪しげな一面を有するバイデンのためのG7会議にもかかわらず、批判めいた西側報道はほとんど見られなかった。日本の新聞テレビはというと、こぞって会議の議長である岸田を持ち上げ、岸田向けのまじかに具体化するであろう解散論に拍車をかけた。事務方は内外の記者向けには、例によって贅沢な酒と食事をたっぷりと用意したG7サミットだった。
自民党内では今も「年末の岸田の倅の忘年会写真が露見しない、さらには岸田の知恵袋で作戦参謀の木原誠二(官房副長官)の、愛人宅から愛人の運転で官邸に飛び込む様子が週刊誌に掲載されなければ、最高の解散の機会だった。残念の極みだ」と歯ぎしりしている。くせ球は日本人全てに首輪をつけるマイナンバーカードだったのだが。
どうだろう、戦争準備のための43兆円=軍需産業死の商人に法制度面から支援=軍事要員の確保=異次元少子化対策という一連の流れが何を意味するのか。子供や孫に男子のいる家庭は、内心衝撃を受けている。まさかの軍靴の音が鳴り響いてきた!
ロシア退治の戦争に並走しての日本の43兆円超軍拡計画を非難する国際世論は、ついぞ表面化しなかった。強いてマイナス要因を探すと、LGBT法案にかこつけた米紙の神道政治連盟・日本会議への警鐘乱打だった。
2,安倍晋三以上にA級戦犯の岸信介路線を踏襲した岸田文雄
宏池会の宮澤喜一内閣が誕生する直前に、週刊文春記者から出版社(ぴいぷる社)を立ち上げた恩田貢からの急な依頼で「総理大臣 宮澤喜一」を書き上げた。理由は宮澤は宏池会きっての護憲リベラリストで、信頼に足る信念の政治家だったし、戦後の日米外交に自ら首を突っ込んだ稀有な、戦後政治を知悉した人物だったからだ。戦争に蓋をかける日本の平和主義者との思いも強かった。
彼は生前、親類先の岸田文雄にそれなりに薫陶をして、多少の期待もしていた。文雄の実父・文武は、いつもにこやかな表情で宮澤政権の誕生に汗をかいてくれていたことも、文雄への思いとなっていた。日本外交の基軸となる非戦の憲法9条は、日本の弱点ではなく、むしろ核兵器の時代には、むしろ強みであることを順々と説いたはずである。
思い出すと、宮澤政権誕生の少し前には、政界の悪役フィクサーで知られる渡辺恒雄が「改憲に汗をかくのであれば、全面的に読売グループ挙げて応援したい」と野蛮で危険なボールを投げてきたというが、彼は跳ね飛ばして相手にしなかった。だが、今の岸田文雄は全く違う。宮澤政治の対極にある。「安倍以上に安倍」は本当である。
現に政権を担当した岸田の今を、宏池会を知る誰もが「安倍晋三以上の右翼人士だ」と心底驚きを隠さない。ご存知安倍は、A級戦犯の岸信介の薫陶を受けて、それを政権で容赦なく強行してきた。
その最たるものが集団的自衛権の行使だ。歴代の政府が違憲と判断してきたというのに、安倍は公明党の太田ショウコウ(昭宏)・山口那津男・北側一夫ら右翼トリオと組んで、自衛隊参戦の法律を強行した。戦争する自衛隊を誕生させてしまった。武器弾薬を保持することを禁じた、非戦の9条を否定した明白な憲法違反法である。
参考までに非戦論を唱えた最初の日本人は、足尾鉱毒事件取材で一躍有名になった当時の毎日新聞女性記者の松本英子。明治期の上総の国望陀郡茅野村(現在の木更津市茅野)の出身だ。日本国憲法9条が誕生する20年ほど前に、滞在中のアメリカの邦字紙に繰り返し発表している。非戦の生みの親は日本人ジャーナリストである。中曽根ら国家主義者は「マッカサー憲法の英訳」では全くなかった。この史実は「松本英子の生涯」(府馬清著)に詳しい。
それはさておき自公連立の危うさとは、安倍の思い込みに公明党が金魚のフンよろしく従っていく無節操な政治姿勢にある。それがたとえ憲法に違反していても強行する。カルト教団の怖い点を公明党創価学会は、安倍死後に表面化した統一教会国際勝共連合そっくりのカルト教団であることを内外に知らしめている。
岸田の自公政権は、この安倍路線をさらに深化させ、軍国主義・軍事大国へと突っ込んでいる。護憲リベラルの伝統を有する宏池会の岸田文雄が大胆不敵に演じている。岸田家のルーツがそのことを裏付けている。神道政治連盟・日本会議の中枢の安倍・清和会構成員から岸田批判の声は、まずほとんど聞こえてきていない。
3,ウクライナ・ロシア戦争に介入した厳島神社サミット
政治記者20年を、誰もまねすることは出来ない。一人いた!NHKの安倍番の岩田?筆者は自民党担当の平河クラブと首相官邸の永田クラブに席を置くことが出来た幸運が、今を生かしてくれている。大手新聞では考えられない。しかし、一つだけ大きなミスを犯していた。
それは自民党もまた、公明党同様の政教一致のカルト政党だったのだが、政権政党はうまくそのことを隠すことに成功してきたこともあったろうが、取材記者にも甘さがあった。自民党本部の地底深く巣食う神社本庁の神道政治連盟を全く見逃してきたことだ。昨今は日本会議を名乗っている。戦前の国家神道を引きずる極右の元凶である。
自民党議員はよく町内会・地域の祭りに顔を出していたが、その理由に目を向けなかった。盆踊りなどの祭りが神社神道の祭礼であることさえ理解しなかった。選挙になると、事務所内の中央に「神棚」を祀っている不思議さえも意識しなかった。うかつにも神道の政治グループが自民党そのものだったことを無視してきた。
役所が建物を建てる際に「地鎮祭」なる不可解な行事をする。原始的お祓いカルト教に疑問さえ持たなかった。政府自民党や中央地方の役所、さらには財閥も、このまじないか占いレベルのお祓い原始宗教にからめとられていることも。正月に首相が伊勢神宮参拝と記者会見のことにも。自民党政府は、戦前の国家神道そっくりの行事をこなしていることも認識しなかった。
要するに、憲法20条の政教分離がズタズタにされていたことに気付かなかった。公明党創価学会どころではない。政権は政教一致の自民党と公明党で動いている。憲法を少しは学んできたものの、肝心要を忘却したまま20年を過ごしてしまった。悔やまれてならない。
疑獄のデパートと評される森喜朗が、首相として「日本は天皇中心の神の国」と公言したのは神道政治連盟の集会だった。初めて凡人ジャーナリストは目を覚ました。気付くのが遅すぎた。
国家神道は戦前の神社群の総体である。今の自民党を牛耳っている極右の震源地である。日本会議と神道政治連盟は一体である。統一教会と国際勝共連合もまた一体なのだ。相手次第で姿かたちを変えるワルの手口である。それは公明党と創価学会もまた同様である。
言論界に筆者のような不勉強な人間が多い証拠でもある。それでも自衛隊基地内の神社や司令官室の神棚には、おかしいと疑問を抱いた。戦前の体制が政府や官界財界に今も継承されている。岸田が安倍路線に突っ込んでいった政治環境だ。戦争神社は戦争を好む。ロシア・ウクライナ戦争を好事と判断し、それに沿った形でのヒロシマG7首脳会談だった!平和のヒロシマではなく、厳島神社サミットによるゼレンスキーへのテコ入れ会議だった。
これにおかしいと気付いたのは国連のグティレス事務局長くらいか。
4,アベノミクスは日銀・黒田東彦から学者馬鹿・植田和夫起用の円激安株高物価急騰財閥暴利策!
支配する側からすると、日本国民は穏健で実に好ましい。フランス人の真似をすることは無理か。最大の原因は、言論界が衰退し、真実に蓋をしてしまっていることと無関係ではない。正義の言論を言論界が封じ込める?それ以上に編集人がカネに左右されている。電通が幅を利かすマスコミ界!
アベノミクスで暴利を手にしたのは、財閥である。内部留保は500兆円を軽く超えているとみたい。それに貢献しているのが庶民・大衆と労働者である。奴隷扱いされても「沈黙は金」だとほざいている。図星ではないだろうか。
日銀の金融政策に精通していなくても分かるだろう。10年後の黒田東彦の責任が今も問われている。岸田の下で交代した学者馬鹿といわれる植田和夫もしかりだ。円激安路線の儲けは、ほとんどが財閥と海外の投機筋の懐に入っていく。円紙切れ政策と言っても過言ではない。ハイパーインフレの主役は、中央銀行と言われかねないだろう。物価の番人という大事な使命を放棄して恥じない。
このことが議会でさえも追及されない不思議日本!そこに岸田の43兆円超軍拡計画が驀進している。なぜだ!
5,LGBT法で気付いた米高級紙NYTが指摘した神道政治連盟の「神の国」
6月20日に閉幕した国会の最終局面で新聞テレビが大きく報じたLGBT法案の審議で、話題を集めた点は、自民党内の確執だった。
党議拘束を撥ねつけるような保守・極右の自民党議員を、米紙ニューヨークタイムズは「神道政治連盟」と報じて注目を集めた。統一教会も仲間だが、森喜朗の「神の国」信者ということになる。
森内閣発足に貢献した中曽根は「天皇国家元首論」を改憲理由の一つにしている。戦前の現人神復活を夢見ている。LGBT法案の抵抗右翼が神道政治連盟だった。岸田の43兆円超軍事大国化推進グループである。
6,岸人脈に乗って満洲でぼろ儲けした祖父の岸田正記!
岸田文雄の祖父・正記はなかなかのやり手だった。岸田家の研究家・古田二三子は自身のFB(フェイスブック)で以下のような記事を書いて、事情を知らない国民に向かって叫んでいる。正記は岸の配下、満洲人脈の人だった。特権を手にして「幾久屋」百貨店を立ち上げて、独占的に暴利を懐に入れた、今でいう政商である。世界入りしたが敗戦直前に足元に原爆を投下された。
安倍は祖父・岸信介から、岸田は祖父・正記のカネで優雅な暮らしをして少年期を過ごしてきた。安倍側近の下村博文は「岸田家ってやっぱり非常に一般の人から見ると、特権階級的、ブルジョアですよ。日本人はやっぱり家系とか家柄、血統というか、なんとなく安心する部分があるんですよ」とやや皮肉気味にコメントしている。
古田のFBコメントはきつい。
「ちょび髭の極悪人の名は、岸田正記。岸田文雄の祖父だ! 普通なら、国内で実績抜群の白木屋、高島屋が満州に進出するでしょ?しかし、岸田正記は岸信介と結託した!日本には一軒もない「幾久屋」百貨店を満州に作った。「既得権益を排除する」というヒトラーの「疑似社会主義」思想だ!かくして、ファシスト・岸田正記は巨万の富を得た。
<東京・千駄ヶ谷の穏田にあった岸田の邸宅は白亜の洋館で、「穏田マンション」と呼ばれた。これは東京で「マンション」と呼ばれた初めての建物であった>
ここで「銀のスプーン」をくわえて生まれてきたのが岸田文雄! そして、息子・岸田朔太郎だ!
<岸田首相、長男を秘書官辞職後も公邸に住まわせる“異次元”待遇に「親離れ、子離れできてない」呆れる声>
岸信介も岸田文雄も同じ満洲人脈の戦犯。安倍も岸田も同じ穴の貉・護憲リベラルの人ではなかった。
2023年6月20日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)
コメントを書く