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Naoto Amaki
天木 直人
Naoto Amaki
Naoto Amaki
天木 直人
2015年01月25日
アブドラ・サウジ国王の死去に中東混迷の行く先を憂う
日本のメディアが邦人人質で大騒ぎしていた23日、アブドラ・サウジアラビア国王の訃報が報じられた。
日本のメディアは大きく取り上げなかったが、アブドラ国王の死が如何に大きな意味を持っているか、世界は知っているからこそ大きく取り上げた。
イスラム国という化け物が生まれ、中東の将来が誰も制御できないほど混迷しようとしているこのタイミングで、アブドラ国王が死去した事は暗示的だ。
私がアブドラ国王を最後に見たのはたしか2002年3月にベイルートでアラブ首脳会議が行われた時だった。
あの時、アブドラ国王は中東和平問題で、イスラエルの全占領地からの撤退と引き換えに、アラブ各国がイスラエルを承認するという関係を構築しよう、という提案を行った。
思えばあの時のアブドラ国王こそ、その絶頂期にあったと思う。
この提案は、トーマス・フリードマンという米人記者がすっぱ抜いて、レバノン紙の一面を飾った。
それを興奮して本省に送った記憶がいまよみがえって来る。
もちろん、この提案は実現に至らなかった。
サウジアラビアと言う国は、メッカを抱えるイスラムの総本山の国であるにも関わらず、最大の油田国として米国の庇護から逃れられない。
中東和平の最大の障害であるイスラエルと敵対出来ない。
アブドラ国王の苦悩がここにあり、そしてそれはそのまま後継者サルマン国王の苦悩でもある。
そしていま、中東和平がますます悪化している中で、イスラム国という本物の化け物が現れたのだ。
それはもちろん中東を不正義な形で支配し続ける欧米に対する挑戦だ。
しかし、かつてのアラファトがいみじくもそう叫んだように、保身や現実的利益の為に、宗教の本来の教えを捨て、パレスチナの同胞を見捨てた、アラブの支配者たちへの挑戦でもある。
実は、私が書いた「アマル それは希望」(元就出版社)の中の、サウジアラビア国王のモデルは、アブドラ国王だった。
あそこに出てくるイスラム武装抵抗組織のリーダー・ハッサン師が語る言葉、つまり中東和平が不正義のままで終わるなら、自分でさえも制御できない恐ろしい事態が来る、と予言させたのは、イスラム国の事であった。
私の近未来小説は、主人公の犠牲と引き換えにハンピーエンドに終わる。
その鍵は米国大統領とサウジアラビア国王の歴史的一大決断だった。
それをうながしたのは憲法9条を持つ日本の首相だった。
残念ながら現実の国際政治はその逆を行っている。
このままでは中東は、いや世界は、誰も制御できない更なる対立と犠牲の混迷に突入するだろう。
そして途方もない犠牲を前にしてはじめて和解の動きが起きる。
人類は血みどろの争いを永遠に続けることは出来ないからだ。
しかし、それは勝者のない不毛な混迷だ。
いずれ和解せざるを得ないなら、そこに至るまでの膨大な犠牲は無益な犠牲だ。
そうあってはならないという思いで、私はアマルを書いた。
昨年5月の事であった。
それから8か月。
事態は急速に悪化している。
連日同じような顔ぶれがメディアに登場して無意味な評論を繰り返している。
そんな評論をしている時ではない。
一刻も早く事態を解決する道を見つける事である(了)
2015年01月24日
日本政府が中田考氏を活用しない理由
今度の人質解放で、なぜ政府は中田考氏を活用しないのか、という問いが寄せられる。
確かにその通りだ。私も活用すべきだと思う。
安倍・菅政権もあらゆる手段を尽くすと言っているのだから活用しないほうがおかしい。
しかし、少なくとも現時点では、中田氏がみずからメディアに語っているように、政府からの直接の依頼はないという。
その理由は次の二つにつきる。
一つは外務官僚のプライドだ。
常日頃から活用して来た御用学者や有識者ならいざ知らず、見知らぬ民間人に重要な外交の一端をまかせるなどということはあり得ないことだ。
あの金正日総書記の料理人であった藤本氏の時もそうだ。
金正恩総書記とあそこまで緊密な関係にある藤本氏を外務省はまったく活用しようとしなかった。
もう一つの理由は、もっと重要だ。
そしてこれこそがおそらく政府・外務省が中田氏を使わない、使えない、理由であるに違いない。
その理由は米国との関係だ。
米国では、少しでもイスラム国と関係を持った国民はすぐに逮捕され刑を科される。
なぜならば、彼らこそホームグローンテロリストの危険性があるからだ。
それは当然と言えば当然だ。
なにしろ、国内の自爆テロに何度もさらされ、しかもますますその危険性が高まっているからだ。
ところが日本は幸いにもそのようなテロに遭遇した事は一度もなく、従ってまたテロに対する実感としての脅威はまるでない。
そのことと関連して、私には次のような実体験がある。
かつて私がレバノンに勤務して来た時の話だ。
反米イスラム抵抗組織であるヒズボラの親分であるハッサン・ナスララーという人物に接触することを外務省は許していた。
だから私もナスララーと直接会って話すことが出来た。
ところが米国にとってヒズボラは最も警戒すべきテロ集団だ。
その組織の親分と接触する事自体が国益に反することだ。
だから米国では政府の方針としてナスララーへの接触が禁じられていた。
おそらくある時点で米国からねじ込まれたのだろう。
その時を境に、ナスララーと接触する事が禁じられ、以来私は一度もナスララーに会うことなくレバノンを去った。
おそらく今も日本の大使はナスララーに会えないはずだ。
イスラム国と直接のパイプがあり、実際のところシリアを往復してイスラム国と交流があり、日本の若者をシリアに渡航させようと手伝っていた実績のある田中氏は、米国にとってはれっきとしたイスラム国の同志であり、真っ先に逮捕・拘留される人物だ。
そのような人物に頼み込んで人質解放をはかるなどという事は、米国が聞いたら腰を抜かすほど危険な事なのである。
今度の人質事件で米国が中田氏を使うなと安倍首相に注文をつけたかどうか知らない。
しかし、たとえそのような干渉が無かったとしても、米国の意向を忖度して政府・外務省が中田氏を使わない方針を固めていたとしてもおかしくはない(了)
2015年01月24日
日本はテロの脅威に耐えられるか
きょう1月24日の日経新聞が書いていた。
邦人拉致が起きて政府は23日、対テロ警戒態勢を一段と強化せよと命じたと。
政府高官が、これ以上ないテロ対策の強化だ、限界まで強化したということだ、と語ったと。
日経新聞は何をのんきなことを書いているんだ。
そんなとぼけたことを言っている政府高官はどこのどいつだ。
日本がイスラム国との戦いに参加するのはこれからだ。
イスラム国が本気になって日本を標的にするのはこれからだ。
原発再稼働も東京五輪も危うくなる。
それどころかせっかく増えたと喜んでいる観光客など吹っ飛んでしまう。
経済回復どころではない。
対テロ強化策はこれからが本番なのだ。
それを、テロとの戦いも始まっていないうちから、これ以上ない対テロ警戒対策を講じたという。
これが限界だという。
これじゃだめだ。
日本はテロの脅威には耐えられない。
悪いことは言わない。
安倍首相はさっさとテロとの戦いから手を引いたほうがいい。
いまからでも遅くない。日本はテロに敵対されないような国を目指すべきである(了)
2015年01月24日
安倍首相の対テロ首脳会議出席はイスラム国への宣戦布告だ
きょう1月24日の産経新聞が一面トップで書いた。
安倍首相は2月18日からワシントンで開かれるテロ対策の首脳会議に出席する方針を固めたと。
これは日本の命運を決める一大政治決断である。
日本はこれまで対イスラム有志連合の会議には参加してこなかった。
仏紙銃撃事件を受けて米仏主導で決まったこの首脳会議が発表された時も、この首脳会議への参加については一切報道されることはなかった。
つい2日前の22日にロンドンで開かれた「イスラム国」対策を話し合う有志国の外相級会合にも、日本は参加しなかった。
それには理由があった。
日本はイスラム国を軍事攻撃する有志連合と距離を置くことによって、テロの脅威から一線を画すという明確な意図があったからだ。
それが今度の邦人人質事件で変更を余儀なくされたのだ。
今度の安倍首相の中東訪問における一連の言動によって、もはや直接軍事攻撃に参加しなくても、イスラム国攻撃に加担する国と見破られ、敵だと明言された。
今度の邦人人質事件によって、邦人殺害の場合はもとより、たとえ邦人が無事救済されたとしても、もはや日本はイスラム国との戦いに参加せざるを得なくなった。
それでも日本がこの米・英・仏主導の対テロ首脳会議に参加しない選択はもちろんある。
そして私は何としてでも参加すべきではないと考える一人だ。
しかし、安倍首相の頭にはそれはもはやまったくなくなったということだ。
イスラム国の残虐性を見せつけられた国内世論も、対テロ首脳会議出席は当然だと考える者が大半だろう。
こんな時に安倍首相の対応を批判してどうする、などとメディアが情報操作し、世論がそれに傾き、その世論におされて、安倍首相の対テロ首脳会議出席を批判する野党は皆無だろう。
かくてきょうの産経新聞のスクープはその通りとなる。
しかし、今度こそ日本はイスラム国の敵対国となる。
邦人拉致にとどまらず、国内でイスラム国のテロが起きる。
9・11から始まったテロとの終わりのない戦いの当事国となる。
2・18日の安倍首相の対テロ有志連合首脳会議出席は、それほど大きな意味を持つのである。
はたしてこの事を指摘するメディアは現れるだろうか。
安倍首相のサミット参加を大きな誤りだと発言する有識者が現れるだろうか(了)
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