◼️「エール!/La famille Belier」(2014年・フランス)
監督=エリック・ラルティゴ
主演=ルアンヌ・エメラ カリン・ヴィアール フランソワ・ダミアン
本作のリメイクである「コーダ あいのうた」は大好きな作品。アカデミー賞受賞した報を目にした時は、思わず声あげちゃったw。そのオリジナル版に挑むの巻。どうしても比較してしまうのは申し訳ない。
「パリタクシー」のレビューにも書いたけど、僕は若い頃、人情ものフランス映画を観ると、とっても感動して高評価する一方でどこかむずがゆい気持ちになっていた。でき過ぎな程にいい話だし、ホロっ🥲ときちゃう。でも、こんなに善人はいないとか、素直に感動するのをためらう気もちも捨てきれないでいた。「幸せはシャンソニア劇場から」「バティニョールおじさん」「ピエロの赤い鼻」「チャップリンからの贈りもの」などなど。
でも今の年齢のせいなのか、近ごろそういう映画が心地よくなっている。2024年に観て気づきをくれた「アイミタガイ」に出てくる、「今はそんな話を信じたい」って台詞にすっごく共感したのだ。そんなタイミングで本作を観たのはよかった。若い頃にこの映画に出会っていたら、多分むずがゆい感動作としか捉えられなかったと思えた。
リメイク作品は観る順番で印象が変わってしまうところがどうしてもある。今回「エール!」を観ていい話だとは思ったし、リメイク同様に同じところで泣かされたし、キャストの演技も素敵だ。この作品あってのリメイク「コーダ」だったことを確信。
だけどリメイクは万人向けの訴求力が違う。言葉は悪いが後出しジャンケンのようなものだから、同じく作品のテイストなら改変された演出がよく見えてしまいがち。コーラスの発表会、両親だけがポーラの歌声を聴けない場面。「エール!」は周囲の反応とそれがわからない家族が客観的に映されている。「コーダ」はこの場面を両親の主観ショットに変更して、しかも唐突に無音にする演出に改変。娘の歌声が聴こえないもどかしさや周囲との感じ方の違いで戸惑う様子がより強く描かれている。それだけに娘の喉元に手をあてて歌を感じようとする次の場面がさらに涙を誘うことになる。
でも家族の描写は「エール!」の方が自然で微笑ましく感じられた。娘が初潮を迎えたことを喜びまくる母親、頑固な父親、エッチなことに興味津々の弟。母親の演技がオーバーアクトに感じられた方もあったかもしれないが、意思を伝えるのに身振りは大きくなるものだと思う。リメイクでは家族と社会の関わりがより強くて描かれて、健聴者のヒロインが家族と離れがたい状況が強調されている。これはそれぞれの良さだろう。
音楽教師とのレッスンで歌うEn Chantant(歌と共に)は歌うことにまっすぐなヒロインが感じられるし、オーディションで「いい選曲だね」と褒められるJe vole(青春の翼)の伸びやかな歌声も感動的。でもミシェル・サルドゥのJe vais t'aimerなんて、狂おしい大人の愛の歌を高校生男女に歌わせるセンスがよくわからない。フランス語や音楽文化に通じている人なら、感じ方も違うんだろうな。リメイクではマーヴィン・ゲイやデビッド・ボウイで馴染みがあったし、オーディション場面はジョニ・ミッチェルのboth sidesで、歌詞が聴覚の有無という意味にも捉えられてそれがさらに涙を誘った。また「コーダ」観たくなってきたw
「エール!」のサントラとヒロインを演じたルアンヌの楽曲を配信で聴いている。言葉はわからないけどフレンチポップスは響きが心地よくって好き。映像と音楽が一体になる瞬間の美しさが感じられる素敵な映画でした。
「パリタクシー」のレビューにも書いたけど、僕は若い頃、人情ものフランス映画を観ると、とっても感動して高評価する一方でどこかむずがゆい気持ちになっていた。でき過ぎな程にいい話だし、ホロっ🥲ときちゃう。でも、こんなに善人はいないとか、素直に感動するのをためらう気もちも捨てきれないでいた。「幸せはシャンソニア劇場から」「バティニョールおじさん」「ピエロの赤い鼻」「チャップリンからの贈りもの」などなど。
でも今の年齢のせいなのか、近ごろそういう映画が心地よくなっている。2024年に観て気づきをくれた「アイミタガイ」に出てくる、「今はそんな話を信じたい」って台詞にすっごく共感したのだ。そんなタイミングで本作を観たのはよかった。若い頃にこの映画に出会っていたら、多分むずがゆい感動作としか捉えられなかったと思えた。
リメイク作品は観る順番で印象が変わってしまうところがどうしてもある。今回「エール!」を観ていい話だとは思ったし、リメイク同様に同じところで泣かされたし、キャストの演技も素敵だ。この作品あってのリメイク「コーダ」だったことを確信。
だけどリメイクは万人向けの訴求力が違う。言葉は悪いが後出しジャンケンのようなものだから、同じく作品のテイストなら改変された演出がよく見えてしまいがち。コーラスの発表会、両親だけがポーラの歌声を聴けない場面。「エール!」は周囲の反応とそれがわからない家族が客観的に映されている。「コーダ」はこの場面を両親の主観ショットに変更して、しかも唐突に無音にする演出に改変。娘の歌声が聴こえないもどかしさや周囲との感じ方の違いで戸惑う様子がより強く描かれている。それだけに娘の喉元に手をあてて歌を感じようとする次の場面がさらに涙を誘うことになる。
でも家族の描写は「エール!」の方が自然で微笑ましく感じられた。娘が初潮を迎えたことを喜びまくる母親、頑固な父親、エッチなことに興味津々の弟。母親の演技がオーバーアクトに感じられた方もあったかもしれないが、意思を伝えるのに身振りは大きくなるものだと思う。リメイクでは家族と社会の関わりがより強くて描かれて、健聴者のヒロインが家族と離れがたい状況が強調されている。これはそれぞれの良さだろう。
音楽教師とのレッスンで歌うEn Chantant(歌と共に)は歌うことにまっすぐなヒロインが感じられるし、オーディションで「いい選曲だね」と褒められるJe vole(青春の翼)の伸びやかな歌声も感動的。でもミシェル・サルドゥのJe vais t'aimerなんて、狂おしい大人の愛の歌を高校生男女に歌わせるセンスがよくわからない。フランス語や音楽文化に通じている人なら、感じ方も違うんだろうな。リメイクではマーヴィン・ゲイやデビッド・ボウイで馴染みがあったし、オーディション場面はジョニ・ミッチェルのboth sidesで、歌詞が聴覚の有無という意味にも捉えられてそれがさらに涙を誘った。また「コーダ」観たくなってきたw
「エール!」のサントラとヒロインを演じたルアンヌの楽曲を配信で聴いている。言葉はわからないけどフレンチポップスは響きが心地よくって好き。映像と音楽が一体になる瞬間の美しさが感じられる素敵な映画でした。