Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ストップ・メイキング・センス 4Kレストア

2024-02-22 | 映画(さ行)


◾️「ストップ・メイキング・センス 4Kレストア/Stop Making Sense」(1985年・アメリカ)

監督=ジョナサン・デミ
主演=デビッド・バーン クリス・フランツ ティナ・ウェイマス ジェリー・ハリソン

トーキングヘッズを初めて知ったのは、1985年のアルバムLittle Creatures。名曲Road To Nowhereなど強烈な個性を感じるけれど、旧作を真剣に聴くほどハマったバンドではなかった。たぶん"ニューウェイブ"やら"ノーウェイブ"とカテゴライズされた音楽に、どうも苦手意識があったせいだと思うのだ。ちゃんと聴いてたのはメジャーなブロンディくらいで、アート・リンゼイとか坂本教授がいかに褒めても「わからん」としか思えなかった。トーキングヘッズもそんな流れで、デビッド・バーンの強烈な個性とパフォーマンスを当時の僕はカッコいいとは思えなかったのだ。

「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミ監督がトーキングヘッズの1983年12月のコンサートを記録した映画「ストップ・メイキング・センス」。噂には聞いていたけど、苦手意識から避けていて、4Kレストアによる今回の再上映で初鑑賞。84年以前のトーキングヘッズはほぼ曲を知らないのが不安要素だったけど…

観てよかった!😆

普通のコンサートを記録した映画とは撮り方が全く違う。最後の方まで観客が映像に映ることがない。冒頭、ラジカセとアコギを持ったデビッド・バーンがステージに向かう足元から映画が始まる。アコギ一本のPsycho Killerから、曲ごとに一人一人メンバーが加わっていく演出。

通常、コンサート会場の臨場感を表現するために、映画は僕らを観客の一人にする。そのために前にいる聴衆の頭がフレームインしたり、踊り狂う人や歓声をあげる女の子が挿入されたり。そのアーティストがいかに観客を熱狂させているのかが描かれる。ライブエイドの完全再現がすごかった「ボヘミアン・ラプソディ」。クィーンを演じた人々は確かにすごいのだけれど、声出しオッケーの応援上映までしちゃうのは、あの場にいられたらいいのに!という気持ちがあるからだ。アーティストへの憧れと同時に、Radio GAGAで手を天に突き上げるオーディエンスの一人になりたい!という気持ちがあるのだ。

だけど本作はパフォーマンスを観ることだけに集中させてくれる。これ以上にない特等席に招待されたようなものだ。巧みな編集で、アイコンタクトを交わすメンバーたちの表情まで生き生きと捉えられている。デビッド・バーンの痙攣ダンスにこっちまで緊張させられるが、ティナ・ウェイマスの笑顔が挟まるだけでなんかほっこりしてしまうw。

ステージで起こっていることの全体像を見せる曲もあれば、演出過多のPVみたいにデビッド・バーンの芸を見せる曲もある。また、カメラがステージにいるのに、演奏する手元を過剰に撮らないのも印象的だった。演奏テクニックを見せつけるようなコンサートではないからだ。楽曲への理解があっての演出と言えるのでは。

観客の姿が見られるのはクライマックスとも言えるTake Me To The Riverのあたり。オリジナルの演奏はどこかおどろおどろしい感じすらある曲なのに、なんだこの盛り上がりは!😆♪。映画「コミットメンツ」でもパワフルなステージが印象的だった曲だが、このシーンの盛り上がりに、思わず立ち上がりそうになる。

繰り返し観たくなる気持ち、よーくわかりました。84年以前のトーキングヘッズ、ちゃんと聴きます!😆




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ジャッキー・チェンの秘竜拳

2024-02-18 | 映画(さ行)


◾️「ジャッキー・チェンの秘竜拳/少林門」(1975年・香港)

監督=ジョン・ウー
主演=レオン・タン ジェームズ・ティエン ジャッキー・チェン サモ・ハン・キンポー

Filmarksでフォローしている方が書いていたテレビの映画番組育ちのルーティン。
「新聞のテレビ欄でその日の映画をチェックして、赤ペンで丸をつける。その夜が楽しみだった。」
同世代には、まさに映画ファンあるあるだと思うのだ。それに触発されて思い出したことがあり、本作を配信で再鑑賞。何故って、当時テレビ放送という機会がないと、その映画に出会えなかったからだ。

ジャッキー・チェンがブレイクした80年代初頭。出演した未公開作が、"本邦初公開"として、テレビで放送されることもしばしばあった。本作は「ジャッキー・チェンの秘竜拳」のタイトルで、ある日のテレビ欄に名前が挙がった。しかしそれは、野球中継が雨で<中止の時>という条件付きだった。
🙏「うおーっ。今夜××球場付近は雨になりますように!」
結果、雨天のため中止!やたっ!!😆

…と記憶している。

※調べてみた。Wikiに83年3月20日月曜ロードショーで初放送との記述があるが、20日は日曜日。また、月曜ロードショーの放送記録を記したブログによると21日(月)は別の映画を放送している。20日のナイター中止枠?

少林寺の修行僧だったシーが絶対的な力を手にする為に、武術を弾圧する清朝の役人と組んで、武道家を次々に殺害していた。少林寺は武術に優れたユン・フェイを下山させる。シーの野望を阻止することはできるのか?

ジャッキーはユンに協力する若者役で、主演ではない。兄の復讐の為に日々を耐えてきたストイックな役を演じている。悪役の一人を演じているのはサモ・ハン・キンポーで、武術指導も担当する大活躍。脇役にユン・ピョウ、そして監督はなんとジョン・ウー!今の目線で観るとなかなかのメンバーなのだが、ビッグネームになる前の作品なので、なかなか貴重。

初期の作品だし、ジョン・ウーらしさは感じられないかなと思っていたが、愛した女が死んだ為に剣を抜かなくった剣豪が出てくるのは「狼 男たちの挽歌最終章」を思わせる。お約束の白い鳩は出てこないが、二丁拳銃ならぬ二刀流の剣士が背面ジャンプして切りかかる場面が出てくる。これを「男たちの挽歌Ⅱ」の、二丁拳銃で背中から階段落ちする場面と重ねるのは深読みのしすぎだろうか?ww。

今回再鑑賞したが、当時はジョン・ウー監督なんて全く知らなかったし、サモハンも意識して観てなかったので、よい再発見ができた。何にせよ、ジャッキーやブルース・リー以外が主演の王道カンフー映画を観たのはこれが初めてだったし、この年は他にもジャッキー未公開作がテレビで放送されたので、ますます興味が高まったのでした。



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千年女優

2024-02-11 | 映画(さ行)


◾️「千年女優」(2001年・日本)

監督=今敏
声の出演=荘司美代子 小山茉美 折笠富美子 飯塚昭三 津田匠子

パプリカ」に満点つけておきながら、今敏監督の旧作を観ていなかった。昨年リバイバル上映で「パーフェクト・ブルー」を観て、演出と表現の凄さに圧倒された。そして未見だった「千年女優」が、再びFilmarksの上映企画で映画館で観られるありがたい機会が。

しかし、なかなかレビューをまとめられずにいた。一つの理由は検索してネタバレ考察の数が尋常じゃなく多いことだ。それだけ多くの人を考えさせた映画である。論客になる気はないし、自分が感じた「すげえ」をうまく言葉にできない気がしたのだ。もう一つの理由は、2024年新年早々に観たせいだ。関東大震災の年に生まれ、大きな地震の度に何らかの転機が訪れた千代子の人生。そのインタビューの真っ最中にも再び地震が起こる。スクリーンのこっち側で元日に起こったばかりの地震災害を思うと、心穏やかではいられなかった。映画は楽しんだけれど、地震の場面の度に現実に引き戻されてしまう。

そんなこっちサイドの事情こそあるが、この映画は自在に時空を飛び回り、そのイマジネーションに圧倒される。千代子が子供の頃に出会った"鍵の君"に憧れ、彼にいつか巡り合いたいとどれだけ思い続けたのかが、彼女の半生と共に描かれる。

「パプリカ」も映画愛なしに語ることのできない作品だったが、本作も然り。映画の撮影現場で起こった出来事が語られる一方で、千代子が演じた歴代のヒロインが"鍵の君"を追いかけ続ける。いつしかインタビューしに来た立花源也も映画の中に入り込んでいく。幾度も千代子の出演作品を観て、現場も知っている源也だから、インタビューしながら、場面を再現して会話しているのが現実なんだろう。

けれどそのやり取りが千代子の映画世界とつながるイメージになることで、二人の思い入れが伝わってくる。千代子が時代劇からSFまで演じた歴史と時代から、その年月は千年に達する。なんて壮大な恋絵巻。他の映画で感じたことのないトリップ感がある。映画館で観られて本当によかった。

千代子に千年長寿の酒を飲ませる老婆は「蜘蛛巣城」を思い出させる。また老婆が回す糸車が場面転換に用いられるのは、「無法松の一生」で同様に使われた車輪のイメージに重なる。映画の中で映画に入り込み、そこに現実世界の映画が重なる。地震というリアルがなければ、僕ももっとのめり込んで観ていたに違いない。

実績のある声優陣もいい仕事。脇役ながら、鍵の君役の山寺宏一と、彼を追い続けた官憲役の津嘉山正種。このイケボ二人は強い印象を残してくれる。音楽は本作で今敏監督と初めて組んだ平沢進。「パプリカ」同様に素晴らしい独自の世界を響かせる。

ここまで綴ってみると、繰り返し観て考察したくなる人の気持ちがわかってきた気がする。でも解釈は人それぞれ。千代子の最後の台詞「だって私、あの人を追いかけてる私が好きなんだもん」じゃないけれど、解釈を頭の中で楽しんでいる自分が好きなのかもしれない。




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サン・セバスチャンへ、ようこそ

2024-01-23 | 映画(さ行)


◾️「サン・セバスチャンへ、ようこそ/Rifkin's Festival」(2020年・アメリカ=スペイン=イタリア)

監督=ウディ・アレン
主演=ウォーレス・ショーン ジーナ・ガーション ルイ・ガレル エレナ・アナヤ

アレン先生の新作が映画館にかかる幸せ。ハリウッドでのバッシング(自業自得ではあるけれど)から、出演を拒む人々もいるし、出演者からもよく言われない昨今。製作の場をヨーロッパに移して撮った本作は2020年の作品だけど、映画館にかかってよかった。観られないかと心配していた。いろいろあっても、作品は作品で楽しみたいもの。

本作を観て思った。アレン先生、ある意味やっぱり懲りてない(個人の感想です)。主人公モートを演ずるウォーレス・ショーン、撮影当時70代後半。彼を主役に据えて、妻の浮気に悩みつつ、旅先で会った女医さんにほのかな片思いをする主人公を演じさせるんだもの。90歳に近づいたアレン先生だが、自分の分身である主人公像にまだまだそういうキャラクターを登場させるのは元気な証拠かも。おっさんの片恋と言えば日本人には「男はつらいよ」だけど、最後の方は寅さんも恋愛最前線から退いていた。その頃渥美清はまだ60代だったんだから。

本作はスペインの観光映画としても良いだけれど、映画ファンをニヤリとさせる描写が素敵だ。妻の仕事で嫌々映画祭を訪れた主人公が、毎夜ヨーロッパの名作映画の中に自分が登場するモノクロームの夢を見る。ウェルズ、フェリーニ、ゴダール、アレン先生のお手本イングマル・ベルイマンなどなど名作がパロディとして示される。「市民ケーン」のパロディ場面では、ちゃんと窓の向こうにもピントが合っているパンフォーカスも再現する芸の細かさ。クラシック好きにはたまんねぇ…♡と思ったけれど、知性をひけらかす主人公と重なって、観る人によっては嫌味に感じてしまうかもしれない。かつて映画を教えていた主人公モートは、さらに日本映画の知識まで披露して、場を白けさせてしまう。

そう言えば、前作「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」でも、エル・ファニング嬢に黒澤明やビットリオ・デ・シーカについて語らせたりしていたな。アレン先生の趣味嗜好なのだろうが、もしかしたらこれは現代ハリウッドに対する皮肉なのかも。いや僕の深読みかもしれないけど、
👓「これこそが映画だぞ。」
と言ってるように僕には感じられた。だって、「勝手にしやがれ」のパロディ場面とか、すっごく楽しそうだったんだもの。

妻スーを演じるジーナ・ガーションの衰えぬ美貌、ゴダールを演じたことがあるルイ・ガレルが新進監督の役。男と女のドラマ、まだまだ撮れるぜ、というアレン先生の心意気が感じられた。それしか撮れねぇじゃん、という感想も聞こえてきそうだけど。でも、男と女の話を、ちょっと笑えてちょっと切実に、安心して観られるレベルで撮ってくれるのはアレン先生しかいないもの。
👓「これが男と女だぞ。いろいろあってちょっと懲りたけど…いや、やっぱり懲りてねぇぞ。」
とアレン先生は、スペインの太陽の下で笑ってる気がした。




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ジョン・F・ドノヴァンの死と生

2024-01-21 | 映画(さ行)


◾️「ジョン・F・ドノヴァンの死と生/ The Death and Life of John F. Donovan」(2018年・カナダ=イギリス)

監督=グザヴィエ・ドラン
主演=キット・ハリントン ナタリー・ポートマン スーザン・サランドン ジェイコブ・トレンブレイ

どこからこの映画の感想を書こう。正直迷っている。グザヴィエ・ドラン監督作を観るのはこれが2本目。だから偉そうなことは言えない。だけどこの物語で、あれこれ考えさせられた。それを思いつくままに綴らせていただく。

家族にも誰にも言い出せずに抱えている気持ち。それを遠慮なく打ち明けられる人がいるなら、それは大切な存在だ。僕は絶対に失いたくない。ジョンが11歳の子役少年と続けた文通は、周りに理解されない孤独を抱えていた二人にとっては何事にも代え難いものだったに違いない。ジョンの死後10年経って、少年だったルパートがそのやり取りを出版することがこの映画の始まりだが、本編ではその手紙の内容で全てを明らかにすることはない。

そんじょそこらの映画なら、ジョンの素顔に観客だけは迫ることができ、結論めいたものを示してくれる。だが「僕らは理解されない」という台詞にもあるように、二人のやり取りを明らかにしたところで、万人に分かってもらえることはできなかったかもしれない。この映画は批評家に酷評されたと聞いた。感想を読んでると好意的な感想も共感する声も多い。分かってもらえなかったのはグザヴィエ・ドラン監督自身でもある。

ルパート少年が、大人たちからまるで嘘つきの狼少年みたいに扱われる場面は観ていて辛かった。さらに憧れのジョンにも裏切られるようなことになる。ジェイコブ・トレンブレイ君の叫びは耳に残っている。さらに大人たちが嘘だと罵ったジョンとの文通を、今度はマスコミが騒ぎ立てる。ジョンに同性愛の相手がいると騒がれたから?小児性愛と勘ぐった?それとも美談にしたかった?誰も本当のことを分かっちゃいないのに。

この映画は、母と息子の物語でもある。ナタリー・ポートマンが演ずるルパート少年の母は、女優のキャリアを捨てたシングルマザー。宿題の作文で息子の気持ちを知った母が、少年を追う場面は胸に迫る場面だった。また、スーザン・サランドンが演じたジョンの母親も出番が少ないが、最後には理解者であろうとしている気持ちを示す。浴室で家族で話し、ラジオの音楽で歌う場面も印象的だった。

僕自身も、分かってくれない、分かり合えない人々に日々苛立っていて、一方で分かってくれる誰かがいることを大切に思っている。だからこの映画で、ハートに刺さった場面や台詞がいくつもある。「"秘密の存在"は望むものじゃない」とか、いい表現だよな。だけど映画の感想としてうまく言葉にできない。

それはこの映画が、尺の割りに様々なテーマを織り込んでいるからかもしれない。元々はもっと長尺だったと聞くから、編集で言葉足らずになってしまったとも思える。しかし、それでも共感を呼んでいるのは、気持ちに向き合う真摯な映画だからだ。ポスタービジュアルと同じく、真正面から登場人物を捉えたショットが心に残っているのも、その理由なのかも。




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劇場版SPY×FAMILY CODE:White

2023-12-24 | 映画(さ行)

◼️「劇場版SPY×FAMILY CODE:White」(2023年・日本)

監督=片桐崇
声の出演=江口拓也 種崎敦美 早見沙織

テレビシリーズを長女と毎回キャアキャア言いながら楽しんでいる「SPY×FAMILY」。アニメの劇場版は所詮ファンサービスなのだから、楽しんだが勝ちだ😆。とは言え、テレビ見てないのに子供や孫に映画館に連れて来られる大人たちも確実にいる。オープニングで疑似家族フォージャー家の面々の素性を、きちんと説明してくれるので、初めての大人もおそらく大丈夫。

調理実習でお菓子を作ることになったアーニャ。1等になると星(ステラ)がもらえるらしい。審査員となる校長が好きなお菓子を作ることに決めた一家は、校長の出身地にお菓子メレメレを食べる為に家族旅行に行くことになる。一方で緊急の重大ミッションが発生。ロイドを従来の任務から外して、その任務に就かせる話も持ちあがる。そのミッションに関わる悪事にアーニャが巻き込まれてしまう。疑似家族の運命は?東西対立の行方は?…と凝ったストーリー。

複数のハラハラ要素が併存する脚本は確かに面白い。これでもロイドがスパイだってバレない荒唐無稽なクライマックスは笑うしかないが、それがこのシリーズの魅力でしょ😂。堅いこと言わずに楽しむべし。

スパイ、殺し屋、超能力者それぞれの得意が発揮される場面を用意するのはなかなかの難題。テレビシリーズでは、それぞれが活躍する回はあっても、今回のように3人と1匹の活躍が凝縮される舞台が用意されているのは素敵なことだ。まぁ多少の無理矢理感はあるけれど。特にいつもはコメディリリーフになりがちなヨルさんが、サイボーグ兵士を相手に華麗なバトルを展開するクライマックスは最高🤩。惚れ直します♡。そして疑似家族の関係をそれぞれが大事に思う、いつもの展開にもほっこり。

それにしても今年は種崎敦美大活躍の年だったな。「青ブタ」双葉理央の頼りになる落ち着いた喋り、「フリーレン」の淡々と聞こえるのに力強くてお茶目な役柄。この劇場版のアーニャでは×××を連呼する!NOT エレガントォォォ!でもお子ちゃま大喜びだろうな💧。千葉繁大先輩の神様、素晴らしい🤣。






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1640日の家族

2023-12-21 | 映画(さ行)

◼️「1640日の家族/La vraie famille」(2021年・フランス)

監督=ファビアン・ゴルジュアール
主演=メラニー・ティエリー リエ・サレム フェリックス・モアティ ガブリエル・パビ

アンナとドリスの夫婦は里親として、生後18ヶ月だったシモンを4年半育ててきた。自分の子供たちとも良好な関係で、幸せな日々を過ごしていた。ソーシャルワーカーからシモンの実父が子供と暮らすことを希望しているとの連絡が入り、まずは週末だけ実父と過ごすことになった。それはアンナを"ママ"と慕うシモンだけでなく、アンナと家族の気持ちを揺るがすことになっていく。

育てる子供を愛すること、
その一方で愛しすぎてはいけない。

規則だからとドライに割り切ることも難しい。幸福そうな家族の様子から始まる映画は、だんだん葛藤のドラマに変わっていく。クリスマスは実父の元で過ごさなければならないが、父親は仕事で忙しそうだ。シモン自身は、雪山に行くアンナ一家について行きたい。アンナはソーシャルワーカーに相談せずに、山に連れて行くことを選ぶ。里子の先々の自立や親子関係と、子供自身の気持ち。そしてシモンを離したくないアンナの気持ちが交錯して、観ていて切なくなる。

フランス語の原題はLa vraie famille(本当の家族)、英題はThe Family。どちらもタイトルから"家族"の姿について考えさせる意図が感じられる。血のつながり、育ての親という関係だけでなく、愛し愛されて共に暮らすことが"家族"のカタチだと伝えたかったと思うのだ。

ところが邦題は「1640日の家族」。本編では一緒に暮らす4年半という期間を殊更に強調してはいなかったのに、無駄に情報量を増やした、言わばお節介な邦題だ。観客の受け止め方は様々だと思うけれど、1640日とわざわざ"終わり"を示すことでシモンとアンナ一家が期間限定の疑似家族でした、という残念な印象につながってしまう。愛し愛されてる関係は変わらないのに、タイトルで感じた先入観が鑑賞の邪魔になってしまう。

実の父親であるエディが、妻の死から立ち直って息子と暮らしたいと前向きな意思を示しているのに、映画での印象は身勝手な人物とも受け取れる。里親が主人公だから致し方ないのかもしれないけれど、エディのシモンに対する気持ちや、彼の願う"家族"をもっと知りたかった。また、アンナがシモンに対する正直な気持ちを示すことで、プロの里親(フランスでは里親は国家資格で、報酬も日本の倍だとか。)として不適格と扱われる様子は観ていて辛い。人を思う気持ちに嘘はないのに。

シモンを演じた子役ガブリエル・パヴィ君、大人たちの間に挟まれた難しい役柄を見事にこなす。いつか成長した姿をアンナ一家に見せられる、再会の日が訪れますように。





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スタンド・バイ・ミー

2023-12-18 | 映画(さ行)

◼️「スタンド・バイ・ミー/Stand By Me」(1987年・アメリカ)

監督=ロブ・ライナー
主演=ウィル・ウィートン リバー・フェニックス コリー・フェルドマン ジェリー・オコンネル

2023年12月13-17日に開催された北九州国際映画祭。「あなたの青春の一本」とのアンケートに、多くの人が答えた作品も上映された。30-59歳の層でNo.1だったのが「スタンド・バイ・ミー」とのこと。僕も大学時代に観たっきりだ。久々に観たくなって北九州芸術劇場にて再鑑賞。

この映画を公開当時に観た頃、街の映画館では子供を主人公に据えた映画あれこれ上映されていた印象がある。ウディ・アレンは「ラジオ・デイズ」、スピルバーグ は「太陽の帝国」、おどろおどろしい作品のイメージがあるジョン・ブアマン監督までもが「戦場の小さな天使たち」、みんな子供の話。どれも世間の評価も高い映画だったけれど、どの作品よりも僕らの心に強く心に残ったのは、間違いなく「スタンド・バイ・ミー」だった。

登場する4人の少年たちに共感できるポイントが観る人それぞれにある。亡くなった兄への劣等感、家庭環境のせいで不良扱い、憧れである父親から受ける虐待、臆病な自分への苛立ち。自分を肯定できない気持ちを抱える4人は、この短い旅の中で新たな面を発揮したり、本音を口にしたり、感情を露わにしたり。それは小さいけれど確かな成長につながっていく。

ゴーディとクリス、その後も信頼関係が続いたと語られるラスト。大学時代に観た時は、そういう友達との関係を今でも自分は大事にできているだろうか、と半ば反省するような気持ちになったっけ。今回改めて観ると、作家になったゴーディが訃報を知って過去を振り返る様子が胸にしみる。それをリチャード・ドレイファスが演じているのもいいキャスティング。ゴーディの亡くなった兄はジョン・キューザックだったのか😳。フットボールでの活躍を鼻にかけることなく、弟に優しく接してくれるいい兄貴。今観ると、これもいいキャスティングだな。

そしてベン・E・キング御大のStand By Meが心に沁みる。単純だけど印象深いベースライン、シンプルな循環コードだけで、こんなに世代を超えて愛されている名曲。ジョン・レノンやモーリス・ホワイトのカバーも素敵だけれど、キング御大の"そばにいてよ"と繰り返されるフレーズを聴くと、僕ら世代はどうしてもこの映画の場面とシンクロさせてしまう。あの頃そばにいてくれた誰か。自分を励まして理解してくれる誰か。みんなわかってくれる誰かにそばにいて欲しいんだ。87年にはリバイバルヒットしたんだよな。映画祭の上映では、地元高校放送部による前説があり、このエピソードをちゃんと紹介してくれたのは嬉しかった。古い歌だけど、この映画のおかげで僕ら世代にとっては、忘れられない一曲でもあるのだから。






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ゼロの焦点

2023-12-16 | 映画(さ行)


◼️「ゼロの焦点」(1961年・日本)

監督=野村芳太郎
主演=久我美子 高千穂ひづる 有馬稲子 南原宏治 西村晃

2023年12月13〜17日の北九州国際映画祭で上映された旧作。
https://kitakyushu-kiff.jp/

映画祭では北九州出身の松本清張原作の映画が3本上映。セレクトしたのは、清張フリークでもあるみうらじゅん。そのうち1本がこの「ゼロの焦点」(1963)である。クライマックスで能登半島の断崖が登場し、緊張感ある謎解き場面となっている。現在の2時間枠サスペンスドラマの原型という意味でも観て損はない。みうらじゅんはこの作品で崖好きになって、グッとくるグッドクリフを探して(みうらじゅん「いい崖出してるツアー」歌詞より♪)、あちこち旅をすることになる。そんなきっかけとなった作品。

謎解き場面の回想を除いて、失踪した夫を探す新妻の姿を、カメラはとにかく捉え続ける。彼女と共に能登半島の寒空を歩いているような没入感。95分の尺で余計な情報がない映画だから、なおさら集中できる。モノクロの映像が日本海の曇った空や荒れる波をさらに冷たく感じさせ、クライマックスの崖で気持ちが高まってしまう。

物語に描かれた頃はお見合い結婚が主流だったし、駐留していた米国兵の相手を生業としていた女性たちがいた時代。過去や素性を深く知らずに結婚することはよくあることだったに違いない。ヒロインは夫の謎を追うことになるけれど、物語は女性たちの過去も紐解いていくことになる。

ラストに漂う悲壮感。やっぱり清張ものは面白い。





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青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない

2023-12-04 | 映画(さ行)

◼️「青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない」(2023年・日本)

監督=増井壮一
声の出演=石川界人 瀬戸麻沙美 久保ユリカ 東山奈央

青春ものにありがちなのが親の不在というシチュエーション。あだち充の「みゆき」、「エロマンガ先生」のように兄妹が二人暮らしになる背景を一応説明しているものもあれば、家計がどうなってるのか不明な「みなみけ」、最後の最後に唐突に親が現れる「けいおん!」もある。でも、あの年頃にとって親は主人公がやりたいことへの障害(例えば「俺妹」)だったり、過剰な期待を押し付ける身近な圧力(例えば「ガルパン」)だったり、大きな存在である。それは現実でも同じだ。

「青春ブタ野郎」は主人公梓川咲太を中心とした複数ヒロインものだが、いわゆるハーレムアニメではない。彼女たちのトラブル解決のために奔走する彼の活躍が、ヒロインたちを笑顔にしていく。とんでもない危機も苦労もあるけど、異性の友達があんなにいて居心地のいい世界なのは間違いない。本作は咲太自身の思春期症候群にまつわるエピソードだ。

テレビシリーズの桜島麻衣のエピソードでは、世間の誰も自分の存在を認識しない事態が描かれた。今回、その状況に陥るのは咲太自身だ。それも家族から認識されなくなり、世界から認識されなくなる。これまで本編に登場しなかった母親は、妹の世話を咲太が押し付けられた原因でもある。母親を頼ることのできない存在だと咲太が心のどこかで思っていたことが、今回のトラブルの引き金となる。そして、彼はこれまでのヒロインに囲まれた平穏な世界と、彼が認識されない世界との間をさまようことになる。そんな主人公最大の危機を救うのが…。

身近な人のことを、知ってるつもりで何も知らない。それは無関心だったり、意識の中で存在を消すことでもある。青春時代に仲間や異性といることが楽しくて、居心地がよくて、身近な存在である家族が目に入らなかったり、気が回らなかったこと。誰しもがあることだ。それを一風変わった話に仕上げた本作。でも実は普遍的なテーマでもある。親不在になりがちな青春もので、家族の再生が描かれるのは実は立派な試み。それを兄妹の劇場版2部作としたセンスがいい。

今回もヒロインたちが素敵だ。推しの桜島麻衣はやっぱりサイコー♡。皮肉混じりの二人のやり取りが好き。咲太の相談役であるリケジョ双葉理央も頼れる存在で好き。今回も落ち着いた喋りでアドバイスをくれる、淡々とした種崎敦美の台詞まわし。僕の脳髄はフリーレン様と重ねてしまったww。 




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