僕らエイティーズ組にとって元春は重要なアーティスト。古きよきアメリカ音楽をルーツにしながら、どん欲に新しい音を求めている姿勢は、やたらとかっこよかった。そして歌詞が胸に突き刺さってくるのが、何と言っても魅力。僕が、日本のミュージシャンを詩人として意識したのはこれが初めてだったように思う。
きちんと韻を踏む歌詞が印象的だった アンジェリーナ
素敵なことは素敵だと無邪気に/笑える心がスキさ と何が大切なのか教えてくれた SOMEDAY
ギルバート・オサリヴァンみたいな優しさを感じた グッドタイムス&バッドタイムス
ラップに詩をのせることで言葉がますます突き刺さる コンプリケーション・ブレイクダウン
どれもが衝撃だったし、優しかった。
元春のアルバムで僕が最も聴いたのは、2ndの「HEART BEAT」。プロデュースは伊藤銀次(いい仕事!)。ガラスのジェネレーション はあの頃を思い出させてくれる。
”本当のことを知りたいだけ”
って訳もわからず好奇心ばかりが旺盛だったあの頃。悲しきRadio は音楽に身をゆだねることの楽しさを教えてくれた名曲。ピアノとストリングスのアレンジが素晴らしく感動的な 彼女も忘れ得ぬ名曲。高校生だったあの頃、僕は元春の歌からこれから続く人生の楽しさ、悲しみ、寂しさそれを学んだような気がする。でも元春はそれを快楽的にも感傷的にもならず、
”見せかけの恋ならいらない、本当のことを知ろう、街にでようぜ、ベイビー”
と僕らに語りかけてくれたんだ。元春と一緒に
つまらない大人にはなりたくない!
と叫んでいた僕らは、果たしてつまらない大人になっていないのだろうか?