■「リンダリンダリンダ」(2005年・日本)
ブルーハーツを初めて聴いたのは大学3年だったかな。同じ音系サークルだった後輩からレコードを借りた。日頃ボブ・ディランとかブルース・スプリングスティーンとか聴いていたヤツが、ニッポンのパンクロックを「いい!」と言う。どうしちゃったの?と思いながら針を降ろした。ストレートなパンクロックって社会への不満を発散する不良ぽい音楽という偏った先入観が僕にはあった。しかしブルーハーツのファーストアルバムは、歌詞が聴く側に突き刺さるような迫力と社会性を持っている。
戦闘機が買えるくらいの/はした金ならいらない
別にグレてる訳じゃないんだ/ただこのまんまじゃいけないってことに気づいただけさ
結局僕は先輩とこのアルバムのほぼ全曲をコピーバンドで演奏したなぁ。
「リンダリンダリンダ」は高校の学園祭をめぐる3日間のお話。急に出演することにしたバンドはボーカル不在。勢いで韓国からの留学生をボーカルに据えることになるし、3日間で演奏も仕上げねばならない。メンバーはいろいろとグズグズしながらも、懸命に頑張る。次第に絆が深まっていく様は観ていて爽快だ。映画自体は淡々とした描写が多いし、挿入される夢のエピソードに至っては無駄としか思えない。しかし恋に悩む乙女の心情、留学生が本当に日本の学生と交流したいと願う心情は静かだが確実にスクリーンから伝わってくる。これはジワジワくるタイプの映画だと思う。これを書きながら思い出すと、けっこういい場面あったよなぁと感じられる。それもブルーハーツを演奏するという同じ体験があるから、特に共感できているのかもしれないな。
前田亜季チャン(綺麗になりました)が思いを寄せる男子とのすれ違いエピソードは微笑ましくて印象的。それに彼女たちを支える脇役たちの何とも言えない魅力。校舎の屋上で喫茶と称して一人でギター弾いてるアウトローみたいな女子(ライブで歌う♪すばらしい日々がいい雰囲気!)や、軽音楽部の顧問の先生、香椎由宇チャンの元カレ・・・みんなとても温かい。特に先生はきっと10数年前にブルーハツやってたんだよ、きっと。舞台の袖からライブを見ている視線に、自分を重ねてしまう。ラストのライブシーンは音楽でひとつになれる快感が、こっちまで感じられる。でもどこか物足りないのは、きっと彼女たちがグズグズ遠回りばかりしているのがじれったく思えたせいだろうなぁ。