■「モールス/Let Me In」(2010年・アメリカ)
監督=マット・リーヴス
主演=コディ・スミット・マクフィー クロエ・グレース・モレッツ イライアス・コティーズ
スウェーデン映画の秀作「ぼくのエリ 200歳の少女」を「クローバーフィールド/HAKAISYA」のマット・リーヴス監督でハリウッドリメイク。今年の1月にオリジナル版を観て僕はとても感動していただけに、ハリウッドリメイクにかなり不安があった。折しも「トワイライト」シリーズでハリウッドはハーレクインロマンス的ヴァンパイヤブーム。ハリウッドリメイクは決して成功作とは限らない現実もあるし、少年少女の恋愛を軸に軽ーい映画になっちまったらどうしよう・・・。実際に設定年齢を引き上げてその線を狙う企画も出たらしい。が、リーヴス監督がオリジナルの年齢にこだわったと伝えられる。オリジナルのイメージを損ねたくない僕は、その話を聞いて"わかってる"人が撮るのなら期待できるのではないか・・・と、自分の中の観たい映画リストに名を連ねて地元での公開をひたすら待った。そして2週間限定公開・・・行くしかないでしょう。
強引なハッピーエンドに持って行かれるかと思ったのに、オリジナルを尊重されているのは嬉しかった。まったく同じストーリーを違ったキャストで撮っているようなリメイクなので、どちらが好き?と言われたら先に観た方の先入観が勝ることになるのではないかと思う。オリジナル版にあった、北欧の寒々とした閉鎖的な空気感と主人公の孤独感。ハリウッド版が過去のツーショット写真を見せたり、事件を追う警察官が強調されていたりと工夫されていること。それぞれの良さも光っている。スペイン映画「オープン・ユア・アイズ」のリメイク「バニラ・スカイ」や、フランス映画「ニキータ」のリメイク「アサシン」は、それぞれに監督の個性が発揮されていた。それからすると「モールス」はオリジナルや原作小説のよさをマット・リーヴス監督が十分理解した上でのリメイクとなっている。だがそれ故に、新しいものを求めて観た人には期待には違わないが物足りなさを感じるかもしれない。結局、先に目にした方が勝ち・・・かもしれない。個人的には、鑑賞後に論議を呼んだボカシ場面の謎(=物語の核心)がハリウッド版ではどうでもよくなっているのが、やや不満。しかし一般に受け入れられやすく少年少女と最後まで思わせておく方がよいというハリウッドらしい選択なのだろう。
主人公オーウェンを演じたコディ・スミット・マクフィー君は、色白の自信なさげな感じがよく出ている。昔ならヘンリー・トーマスやルーカス・ハースあたりが演じそうな役柄を、上手に演じている。注目の若手クロエ・グレース・モレッツ嬢は、「(500)日のサマー」の脇役でも強烈な印象を残したが、ここでも説得力のある演技。彼女の可憐なルックスだから、オリジナル版にあった「本当は女の子じゃない」という実は物語の核心がどうでもよくなったとも言える。「女の子じゃなくても、私のこと好き?」と聞く場面でも、"だって、女の子じゃん!"と観客は疑いすらもてない。結局好きずき・・・とも言えるリメイクなのだが、僕はハリウッド版も好き。それは舞台が80年代に設定されていて、カルチャークラブが流れたりパックマンが登場したりするから?