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お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

セカンドバージン

2011-09-25 | 映画(さ行)

■「セカンドバージン」(2011年・日本)

監督=黒崎博
主演=鈴木京香 長谷川博己 深田恭子

僕は日頃民放のテレビドラマをほとんど見ない。タレントと歌手と役者の境界線があいまいで、日頃ヴァラエティでキャアキャア言われてる連中が主役を張ってるドラマにほとんど興味がわかないのだ。おまけにその劇場版なんて、もはや映画とは言えないと心底思っていた。そんな僕が毎週真剣になって、原作本にも手を出したNHKドラマが「セカンドバージン」だった。17歳年下男性との恋愛、スキャンダラスなストーリー展開、自信にあふれたキャリアウーマンが恋で自分をさらけ出していく姿・・・主役の二人だけでなく、深田恭子、出版社社長の段田安則といった魅力ある人々も物語を一層深くしてくれた。誰かに語らずにいられなくなるドラマだった。ここまでハマってしまった自分にいちばん驚いたけど。

さて、その劇場版。何故か日頃一緒に映画に行かないわが配偶者も一緒に行くと言う・・・(監視?)。あれ?劇場内は異常に年齢層が高い・・・年配男性一人とか、超熟年カップル、中年女性の二人連れ・・・少なくとも夫婦50歳割引使ってる?と思うくらいの人が圧倒的に多い。NHKのドラマだったから?。それはさておき、テレビドラマのストーリーを2時間でおさらいする内容ではなく、ドラマではあいまいに描かれていた行さん(長谷川博己)との最期の日々が克明に綴られる。なるほど、視聴者が納得いかなかったのはそこだったのか。チャイニーズマフィアに撃たれてしまいました・・・くらいだったもんね、テレビ。もっと行さんが見たい!という女性ファンの要望があったのだろうけど。一方で週刊誌では鈴木京香が過去最大露出などと騒ぎ立てていたけど、あっけない。テレビの方が制約がある分だけ工夫があって面白かった。ほぼ全編マレーシアの小さな病院が舞台で、死を待つ行とるいの最期の日々が描かれるのだ。

テレビシリーズを見ていることが前提でないと厳しい映画かもしれない。二人の出会いや出版社の敏腕編集者として活躍したるい、時代の寵児となった行の日本での姿は完全にダイジェスト。そのあたりのつかず離れず、一進一退の関係にハラハラドキドキさせられただけに、僕は正直物足りなかった。過去のシーンでとても印象的なのは、二人が海辺でデートする場面。るいが「はぐれそうな天使」をハミングしながら海を見る。行はその曲を知らない。
「1985年ってまだ生まれてなかったの?けっこう流行った曲なんだけどな。」
「ずるいよ。るいさんが知ってて僕が知らないことがあるって。その曲教えてよ。」
映画館ではそのメロディーが聴き取れず、正直何の曲かよくわからなかった(エンドクレジット見るまでその曲と気づかなかった)。せめて口ずさんでくれないと・・・ここは演出に文句をつけたいところ。年の差カップルにありそうな会話だし、恋に突き進む幸せを感じながらもるいの心のどこかにある不安。それが「はぐれそうな天使」を使った意図なのかな。

「あなたが行クンとのエッチが欲しかったのよ。」と妻(深田恭子)に罵られるるい。しかしどんな状況の行をも受け止めるるいの姿は、恋愛という炎をくぐり抜けた後の女性の愛情。僕の大好きな映画である「コレリ大尉のマンドリン」(2001)で、「恋の気持ちが燃え尽きた後、それでもくすぶるものとして残るのが愛」という台詞がある。鈴木京香が演じた劇場版の中村るいはまさにその愛を体現する役柄だったのか。鑑賞後1日経ってそんな風に思えるのだ。倖田來未が歌う主題歌「愛を止めないで」が流れるエンドクレジット。「愛してる/あなたごと全部」という歌詞が心に残るのはきっとそのせい。

されど、これはあくまでテレビドラマの結末。劇場版は単独の映画としては成り立っていないと思うのね。「セカンドバージン」というタイトルである意味はやはりテレビドラマのストーリーでこそ生きている訳で、ストーリー上で最期の日々を描く劇場版ではおまけにすぎない。わが配偶者は映画館を出て「不完全燃焼なんじゃない?」と言った。僕もその時は確かにそう思えた。しかしすべてを超えてなおくすぶり続ける中村るいの愛情こそが、この劇場版のテーマなのだ。激しい性愛シーンがストーリー上必要なの時期はテレビシリーズで既に過ぎている訳で、そこを劇場版で期待するのは観る側の勝手。死を前にした二人が何を語ったのかというドラマの謎解きこそがこの映画の狙いなんだから。ラストシーンの「愛する人を覚えておくのは、死への反逆」という台詞もよかった。



コメント (2)
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