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キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない

2023-12-04 | 映画(さ行)

◼️「青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない」(2023年・日本)

監督=増井壮一
声の出演=石川界人 瀬戸麻沙美 久保ユリカ 東山奈央

青春ものにありがちなのが親の不在というシチュエーション。あだち充の「みゆき」、「エロマンガ先生」のように兄妹が二人暮らしになる背景を一応説明しているものもあれば、家計がどうなってるのか不明な「みなみけ」、最後の最後に唐突に親が現れる「けいおん!」もある。でも、あの年頃にとって親は主人公がやりたいことへの障害(例えば「俺妹」)だったり、過剰な期待を押し付ける身近な圧力(例えば「ガルパン」)だったり、大きな存在である。それは現実でも同じだ。

「青春ブタ野郎」は主人公梓川咲太を中心とした複数ヒロインものだが、いわゆるハーレムアニメではない。彼女たちのトラブル解決のために奔走する彼の活躍が、ヒロインたちを笑顔にしていく。とんでもない危機も苦労もあるけど、異性の友達があんなにいて居心地のいい世界なのは間違いない。本作は咲太自身の思春期症候群にまつわるエピソードだ。

テレビシリーズの桜島麻衣のエピソードでは、世間の誰も自分の存在を認識しない事態が描かれた。今回、その状況に陥るのは咲太自身だ。それも家族から認識されなくなり、世界から認識されなくなる。これまで本編に登場しなかった母親は、妹の世話を咲太が押し付けられた原因でもある。母親を頼ることのできない存在だと咲太が心のどこかで思っていたことが、今回のトラブルの引き金となる。そして、彼はこれまでのヒロインに囲まれた平穏な世界と、彼が認識されない世界との間をさまようことになる。そんな主人公最大の危機を救うのが…。

身近な人のことを、知ってるつもりで何も知らない。それは無関心だったり、意識の中で存在を消すことでもある。青春時代に仲間や異性といることが楽しくて、居心地がよくて、身近な存在である家族が目に入らなかったり、気が回らなかったこと。誰しもがあることだ。それを一風変わった話に仕上げた本作。でも実は普遍的なテーマでもある。親不在になりがちな青春もので、家族の再生が描かれるのは実は立派な試み。それを兄妹の劇場版2部作としたセンスがいい。

今回もヒロインたちが素敵だ。推しの桜島麻衣はやっぱりサイコー♡。皮肉混じりの二人のやり取りが好き。咲太の相談役であるリケジョ双葉理央も頼れる存在で好き。今回も落ち着いた喋りでアドバイスをくれる、淡々とした種崎敦美の台詞まわし。僕の脳髄はフリーレン様と重ねてしまったww。 




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