映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

運命じゃない人

2008年10月13日 | 映画(あ行)
運命じゃない人

エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ

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様々な思惑を胸に秘めた男女の運命の行方を描いています。
一夜の出来事なのですが、登場人物何人かの視点から繰り返し出来事が語られます。
一人の視点では決して見えない事実が別の人の視点から現れてくるという多重構造。
そのつぎつぎと入れ替わることの真相に、驚かされるのです。
実に良く練られたストーリーです。

主な登場人物は、
恋人に裏切られ婚約破棄をして飛び出してきた孤独な女、真紀。
普通に”いい人”のサラリーマン、宮田。恋人がなぜか突然失踪し、失恋中。
その失踪した恋人、あゆみ。実は彼女の正体は・・・?
宮田の親友、私立探偵の神田。
そして、あゆみの新しい愛人、ヤクザの組長。

ここで、神田は普通にいい人の宮田を大変大事に思っていて、
彼を傷つけまいとする。
ここがこの物語の要だと思います。

失恋し、落ち込む宮田に、彼は言います。
「もう、こんな年でクラス変えも学校祭もないんだから、
運命の出会いなんか待っても無駄。
自分から行動しなければダメ。」
う~ん、説得力ありますね。
そこで、運命の出会いでなく、意識的にナンパで声をかけた相手。
それが、真紀であったというわけ。

結局宮田は、裏のばたばたした事情は何も知らないのです。
彼だけが純粋なラブストーリーを奏でている。
他の人々は皆欲特まみれ。
こういう対比も効いています。
この、しゃれたつくりに、思わずにんまり。
そういう作品です。

ちなみに、例によってTUTAYA DISCUSの予約から実際に届くまで数ヶ月を要してしまいました。
面白い作品なので、在庫を増やすべきだと思いますが・・・。

2004年/日本/98分
監督:内田けんじ
出演:中村靖日、霧島れいか、山中聡、山下規介


グイン・サーガ123/風雲への序章

2008年10月12日 | グイン・サーガ
風雲への序章 (ハヤカワ文庫 JA ク 1-123 グイン・サーガ 123)
栗本 薫
早川書房

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さて、たまげましたね。
栗本さんの後書きですね。
はい、この本の題名が「序章」となってるんですが、つまり、これまでの123巻が、これからのさらに壮大な物語の序章であったなんていうんですよ。
ここまで、約30年ストーリーを語り続けてきたこともすごいですが、今、またさらに新たな海へ漕ぎ出そうというその心意気に感服します。
いま、健康を損ねている彼女の状況を考えると、もう壮絶といっていいような・・・。
ファンとしてはもう、ひたすら黙って読み続けるしかないです!

さて、この本は前半が、ケイロニアできっちりその地位を固め、腰を据えて国づくりに励もうとするグイン。後半が、お久しぶり、ゴーラにて傷も癒え、また新たなる野望に燃えるイシュトバーン。
たしかに、これからまた大変なことが起ろうとする序章、となっていますね。
ここからは、まさにケイロニア、ゴーラ、そしてパロという国と国同士の大きな抗争劇になるんですね。
栗本さんは、イメージとして三国志のようなものを持っているようですよ。
とりあえずイシュトは、またパロにいってリンダに求婚するなんていってる。
若き日の二人がいっそうロマンティックに思い出されますねえ・・・。
なんて遠くまで来てしまったのでしょう。
もちろんここでリンダがすぐにハイなんていうわけがない。
早速波乱が予想されます。
また、ここではとうとうイシュトが、自分のもう一人の息子のことを知ってしまいますね。
そうそう、そのスーティのことは、あれから全く触れられていない。一体どうしていることやら。
多分、また、あっと驚く意外なときに、意外な姿で登場して来るんだよ。
それまで、この物語が続けば良いですが・・・。
将来、ドリアンやマリニア、スーティ、そして外伝で誕生したグインの子どもがまた、新たな災いや幸いを生み出してゆくのだろうと想像されるけど・・・
それを考えると、やっぱり、ここまでは「序章」と思えるくらい、ストーリーはまだまだ続くことになっちゃいますね。
吟遊詩人も、こんな長いサーガは語りきれないですよ。
覚えられないし~。
でも、語るべき名シーンは、イヤになるくらいたくさんありそうです。
一体どのような展開になることやら、一巻先も予想がつかない。
だからこそ、読み続けているわけですが、また2ヶ月先を待ちたいと思います。
この先は一巻一巻が、とても貴重になりそうな気がする・・・。

満足度★★★★☆

 


トウキョウソナタ

2008年10月11日 | 映画(た行)

ホームドラマ。
そういうと、食卓を囲んだ家族がご飯をほおばりながら話が弾んで、
励ましたり、けなしたり、笑ったり、
まあ、そのような光景が思い浮かびます。

しかし、この作品では家族四人食卓を囲んでも無言。
家族として一つ家に住んではいるものの、それぞれが自分の殻の中にいて孤独。
けれど、現代、実はそれは特殊なことではないのだろうと思います。
すごくリアル。
実のところ、現実に近すぎて、見るのがつらくなってしまうほどです。

リストラされたことを家族に言うことができず、毎朝スーツを着てきちんと家を出る父。
大学には入ったものの、目的を見失い、米軍に入隊しようとする長男。
父親に反対され、やむなく給食費を使い込んでピアノを習う次男。
こんな中で、小泉今日子演じる母が、なんだか不思議な雰囲気を漂わせていました。

彼女は一人ひとりをきちんと見ています。
ただ、その見返りを求めることをすでにあきらめている、というような感じでしょうか。もうすでに崩壊しつつある家庭を、
必死に立て直そうとするでもなく、見放すわけでもない。
ただぼんやりと距離を置いて眺めながら、
なお、自分のポジションを探しているように思える。
この亡羊とした雰囲気が、つまり、この映画全体の雰囲気のような気がします。


この映画のラストには、苦笑させられます。
それぞれが煮詰まって、大変な一夜を明かすのです。
一人は留置所。
一人は車にはねられて路上。
もう一人は強盗と逃避行の末、海岸に。
(長男はアメリカなので、とりあえず出てこない。)

そしてあくる朝、皆とぼとぼと、やはり家に帰ってくるのですね。
どうしたって、そこしか行き場がない。
平日の午前、一人ずつ帰宅。
みな、一夜を外で明かしたことは一目瞭然なのに、
それぞれ呆然としながら、やはり会話なく、皆で黙々と朝ごはんを食べ始める。
でも、ここの無言は不思議と共感を持った無言なんです。
だから家族は侮れない。
ここから、家族の再生が始まるのです。
誰かが謝るでもなく、皆で抱きしめあうでもない。
それは再生と意識できるほどではないほんのささやかな変化なのですが。
悲しみとおかしみが隣り合わせの、味わい深い作品です。

ラストで少年が奏でるやわらかなピアノのソナタが胸にしみました・・・。

2008年/日本/119分
監督:黒沢 清
出演:香川照之、小泉今日子、小柳友、井之脇海

「トウキョウソナタ」公式サイト


憑神

2008年10月10日 | 映画(た行)
憑神

TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)

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浅田次郎原作の映画化です。
時代は幕末。
主人公別所彦四郎(妻夫木聡)は、代々将軍の影武者を務める家柄の次男。
婿養子先から離縁されて兄夫婦の家に居候という情けない立場ながら、
なんと、さらにまたとんでもない災難を呼び寄せてしまった。
それは、貧乏神、疫病神、死神。
まともに行けば財産を失って、病に冒され、ついには死に至るという、救いようのない運命が待ち受けるはずでした。
しかし、宿替えといって、自分に取り付いた神を別の人に押し付けてしまうことが(まれに)できる。

彦四郎は、はじめの貧乏神を宿替えさせることに成功したのですが、
なんと貧乏神は彼の元妻の家に取り付いてしまったので、
愛する自分の元妻、息子が住む屋敷を失ってしまった。
災難を人に押し付けるなどということは二度としない、と彼は思う。
なんともまじめできちんとしていて、また、思いやりがあるのですよ、この方は・・・。
それでなぜ兄があんなふうにちゃらんぽらんなのか、謎ですね。

そういう気持ちの健やかさに負けるというか、ほだされてしまうというか、
次に来る疫病神、そして死神も、なにやら本領を発揮し損ねている。
しかし、彼らもやはり仕事・・・。
彦四郎は最後の「死」を免れることができるのか・・・。
ここのあたりで、単なる江戸ものでなく、
幕末に舞台を持ってきたことが生きてくるのです。
次第に武士として人間として、誇りを持った生き方に目覚めてゆく彦四郎。
・・・よいですね。
最後の武士ですね。

この作品で貧乏神、疫病神、死神、これらが変なメークやらCGでなく、
ごく普通の姿で出てくるところがいいです。
特に、西田敏行の貧乏神はすばらしいですね。
いやはや、役者の力を感じさせられます。
また、死神がなんと森迫永依ちゃんというかわいらしい女の子なのも、意表を突いている。
他の登場人物もそれぞれがはまり役、
たっぷり楽しめて、そして、しんみりしてしまう作品なのでした。

2007年/日本/107分
監督:降旗康男
出演:妻夫木 聡、香川照之、西田敏行、赤井英和、江口洋介、森迫永依


のぼうの城

2008年10月09日 | 本(その他)
のぼうの城
和田 竜
小学館

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今、ベストセラーとなっている歴史小説。
時は乱世。
天下統一を目指す秀吉の配下、石田三成の軍勢にも落ちなかった城、忍(おし)城。これはその総大将、成田長親の物語。

成田長親は周りの人々からは「のぼう様」と呼ばれています。
「のぼう」とは、すなわち「でくのぼう」の略。
武術もダメ、馬にも乗れない。
農作業は大好きなので田植えや麦踏を手伝おうとするけれど、
何しろ不器用なので農民たちにとっては迷惑でしかない。
手伝いを農民に断られ、しょんぼり落ちこんだりする、なんとも情けないお侍・・・。
しかし、人々はこの、のぼう様が大好きなんですね。
決して威張らず、何をやっても不器用、しかし、その善意だけは伝わる。
みなすごく親しみを感じてしまうのです。
また、その城を守る他の面々もまた、ユニーク。
彼らの会話が、もうこれまでのいかめしい歴史小説の枠を超え、
活き活きとかっこよい。
長親の穴を埋めるかのように彼らは頭が良く、そして強いのであります!
これがまた心地よい。
戦に巻き込まれたくないはずの農民たちもが、力を貸そうとやってくる。

石田三成の立てた作戦は水攻め。
長大な堤防をめぐらせ城を水没せしめようというもの。
人気だけがとりえのこの男は、果たしてどのように立ち向かうのか・・・!

戦国時代を生き抜く各地の武将たちも大変だったようですね。
誰の味方につき、誰を敵とするのか。
判断を誤れば、すなわち一族の滅亡。
だからこそいろいろなドラマがあって、
このあたりの歴史は様々な本やTVドラマになったりするわけです。
そんな中でもこの本は格別現代人の感覚にマッチし、テンポ良くユニークで面白い。

長親の幼馴染であり、またこの城の参謀的存在でもある丹波は思うのです。
こいつは、バカのフリをしているだけなのか、
それとも天然のバカなんだけど、たまたま言うことがハマっているだけなのか・・・。
彼にしても計り知れないのですが、結局読者にもわかりません。
バカを装うだけの利口さはない。
そのようには思えますが。
何はともあれ「将器」という意味では、確かにそれはあるのでしょう。
欲を言えばその辺、
つまり、のぼう様の本心を垣間見せるような部分がちょっとあると良いと思いました・・・。

次の作品もぜひ読みたい気がします。

満足度★★★★☆


灯台守の恋

2008年10月07日 | 映画(た行)
灯台守の恋

ハピネット

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しっとりした大人のはかない恋を描いています。
舞台はフランス北西部ブルターニュ地方、ウエサン島。
小さな漁業の島ですが、ここに一つの灯台があり、沖を行く船の大事な道しるべとなっている。
この灯台には数人の灯台守の仲間たちが二人ずつ組んで交代で勤務。
この灯台、岬の先端にあるのではなくて、海中に立っているので、
灯台に入る時は船を使い、ロープに宙吊りにならないと入れないという、なかなか大変なもの。
さて、その灯台守の一人が亡くなり、代わりに経験もないよそ者が本部からまわされてきた。
名前はアントワーヌ。
彼は同じ灯台守のイヴォンと、その妻(亡くなった灯台守の娘でもある)マベの家に世話になる。

さて、しかし、この小さな島の人たちは、この新米が気に入らない。
この地方はもともとイギリスから渡ってきたケルト人の子孫の地といわれており、
フランス語とは別の言語も持っている。
フランスでありながら、また独自な文化を持つ地方なのですね。
そのため田舎にはありがちですが、余計に結束が強くまた排他的でもある。
アントワーヌはどこへ行っても、冷たくよそよそしい仕打ちを受けてしまう。
しかし、真っ先に親しく接してくれたのは美しいマベ。
またその夫イヴォンも、はじめのうちはアントワーヌが気に入らなかったのですが、彼の人柄を知るにつけ、だんだん親しみを見せるようになり、
よき灯台守の相棒となっていく。

ところが、いつしかアントワーヌとマベはお互いを意識し、惹かれあっていることを自覚してゆく。
イヴォンは無骨ではあるけれど、深くマベを愛しており、
また何かとアントワーヌの面倒も見てくれる、すごくいい人なのです。
それがわかりすぎているほどわかっているので、
二人はイヴォンを裏切ることができない。

ある祭りの夜、イヴォンは灯台の当番に当たっており、
アントワーヌとマベはとうとう耐え切れず罪を犯してしまいます。
花火の打ち上げられる中でのそのシーンは、切なくもロマンチック・・・。

まあ、悲恋に終わることは想像つくと思いますので、これ以上語るのはやめましょう。
荒涼としたこの地の雰囲気は最果ての地と呼ぶにふさわしく、
それだけで、なんだかもの悲しい気がしてきます。
それがこの悲恋の物語にいっそうの効果を上げている。

ここで、イヴォンが本当に味のある人柄なのが見所です。
彼は手先が器用で、灯台の仕事の傍らいつも椅子を作っているのですね。
あまりたくさん作るものだから、彼の家ばかりでなく、
近所の店や教会にまで彼の椅子があふれかえっている。
お祭りの花火をこっそり盗んで、灯台から花火を上げてみせる。
島の人々の拍手喝采。
そんな彼が妻の不倫を知ったとき・・・。
こんな切なさもあって、いっそう物語に深みを添えているわけです。
この恋は、はかなく終わりますが、
それだけではすまないおまけが・・・。
まあ、じっくり味わっていただきたいですね・・・。

2004年/フランス/105分
監督:フィリップ・リオレ
出演:サンドリーヌ・ボネール、フィリップ・トレトン、グレゴリー・デランジュール、エミリエ・デュケンヌ


12人の怒れる男

2008年10月06日 | 映画(さ行)

ヘンリー・フォンダ主演で名高い1957年アメリカ作品「12人の怒れる男」のロシア版リメイク。
設定はほとんど同じです。
殺人容疑を受けた少年が有罪か無罪かを、12人の陪審員たちが審議する。
その、元祖版は、それこそ遠い昔に、テレビの洋画劇場で見ただけですが、
まあ、うっすらと記憶はあります。
けれど、これはその結末を知っていたとしても、
決して退屈せず、じっくり見てしまう、ずっしりした手ごたえの作品。

舞台はロシア。
チェチェンの少年が、元ロシア軍将校の養父を殺害したという容疑で、
検察からは最高刑(終身刑)を求刑されている。
市民の中から選ばれた12人の陪審員。
全員男性ですが、職業はバラバラ。
(なぜ、全員男性なのかと、ふと思う・・・???)
題名が「怒れる男」だから・・・、なんていったらそれこそ怒っちゃう。
皆は、これは有罪に決まっているし、あっという間に話は決まって、お終い、そう思っていた。
陪審員室が改装中のため、建物が続いている学校の体育館に案内され、
そこで審議をするようにといわれる。
なんだか、この辺までは皆ほとんどお祭り気分。
学校の体育館に、ちょっと懐かしい気分になり、
ボールを蹴ってみたり、ピアノを弾いてみたり。
私はここのシーンがなんだか好きです。ただの会議室よりも、ずっといい。
初めての体験に少し無邪気にはしゃいでいる、そんな雰囲気です。
しかし、彼らはその後、いやというほど長く、そこに缶詰状態になってしまうのですが・・・。

まずはたった一人の人物が、
「少年の一生がかかっている問題を、そんなに簡単に有罪と決めてしまって良いのか・・・」と、異を唱えます。
有罪:無罪が11:1。
さっさと終わらせたいのに、なんで余計なことを言うんだ・・・と、他の皆からにらまれる。
しかし、この状況から、時には口論となり、時には実験も交えながら論議が進んでゆくのです。
この12人はそれぞれの名前も明かさないのですが、それぞれの抱える問題やつらい過去を明かしつつ、真相らしきものが浮かび上がってくる。
それは次第に、現在のロシアが抱える問題をも浮かび上がらせて行くわけです。
ここに、あえてロシアでリメイクしたことの意義があります。

途中で、電気が切れてしまい、やむなくろうそくの光の中論議が続きますが、
徐々に秘密が解き明かされていく、その雰囲気に効果満点。
最後には誰もが少年の無罪を確信するにいたる
・・・と、ここまで書いても有名作品のリメイクということでネタバレにはなりますまい。
ただ、この作品ではさらなる問題があって、
少年の冤罪を晴らすだけでは少年を救うことにならないのです。
いわば未完のハッピーエンド。
そういうところにまた、魅力のあるストーリーとなっています。

ここでは、この囚われた少年のイメージになぞらえ、
体育館の中に小鳥が一羽迷い込んでくるのです。
彼ら12人の論議の輪の中を飛び回る。
最後にこの鳥はこの体育館から吹雪の下界へ飛び立ちます。
そう、そこがたとえ生きていくのに厳しい世界であっても、自由は尊重されるべき。
いいラストシーンですねえ・・・。

終わってみればすごく長い作品でした。
舞台はずっと体育館の中。
途中、戦闘に巻き込まれた少年の過去のシーンや、
留置所の少年のシーンが挿入されてはいますが。
陪審員が味わった長ーい時間に付き合わされている感じですね。
しかし、それは大変密度の高い、充実した時間、というわけです。

当然、日本でもまもなく始まるという裁判員制度にも思いがいたるわけですが、
まあ、今日はここでそれを述べるのはやめておきましょう。

2007年/ロシア/160分
監督:ニキータ・ミハルコフ
出演:セルゲイ・マコヴェツキー、ニキータ・ミハルコフ、セルゲイ・ガルマッシュ、ヴァレンティン・ガフト

「12人の怒れる男」公式サイト


ハンコック

2008年10月05日 | 映画(は行)

「ハンコック」なんて、まだやってたんだっけ???
そうなんです。
実は私、もう一ヶ月以上前に見たのです。
しかし、あまりまともな記事にならなかったのでUPしないままだったのですが、
まあ、やっぱり一応載せておこうかと・・・。

         * * * * * * * *

さてと、またもやアメリカのヒーロー者。
これもあまり見るつもりはなかったのですが、時間的に他に都合の良いのがなかったので、まいいか、という感じで。
ハンコックは超人的力を持ち、銃弾をはじき、空を飛び、おまけに不老不死。
そこで事件が起こり要請があれば飛んでいって力を貸そうとするのですが、
力が有り余って、道路や周囲のビル、車、
とにかくあたりのものが大損害をうけることになる。
アル中で横柄な態度。
街中の人からクズ呼ばわりの嫌われ者・・・。
「ダークなヒーロー」とはまた別の、とんでもないヒーローです。

そんなある日、PR会社に勤めるレイが列車に衝突する寸前にハンコックに助けられるのです。
実に人の良いレイはハンコックが人々に好かれるよう、イメージ回復のアドバイスを申し出る。
その妻メアリーは、評判の悪いハンコックがお人よしの夫に近づくことを快く思っていない様子・・・。
彼女はハンコックに言うのです。
お願いだからレイを傷つけるようなことはしないで、と。
大変レイを思っているそのけなげな姿に、ちょっと感心したりして・・・。

ところがところが、そのメアリーの正体は・・・!
ここから、ストーリーは全く別の様相を呈してきます。
一体この話はどういう話なのかと、戸惑ってしまいました。
嫌われ者のヒーローが努力して人気を得る。
ついでに大きな事件を片付ければそれでめでたしめでたし、と、そんなところでも良かったのじゃないかな。
メアリーの秘密が割れたあたりから、テーマがずれてしまって、意味も不明だし、なんだか竹に木を接いだ印象。
結局メアリーの心はどっちにあったんでしょう。
レイとのことは、単に安息の生活を送るための手段だったのでしょうか?
結局ラブストーリーとしても失敗のように思えるんですね。

ハンコックは、いっそオリンピックに出ればよいのですよ。
彼なら、確かに欽ちゃん走りでも、らくらく優勝。
どの競技も金メダル。
異種競技でいくつメダルが取れるか挑戦してみよう!なんちゃって。
まあ、一度出たら後は出場禁止でしょうね・・・。
競技場が破壊されるので。

2008/アメリカ/92分
監督:ピーター・バーグ
出演:ウィル・スミス、シャーリーズ・セロン、ジェイソン・ベイトマン、ジェイ・ヘッド
「ハンコック」公式サイト


乙女なげやり

2008年10月04日 | 本(エッセイ)
乙女なげやり (新潮文庫 み 34-7)
三浦 しをん
新潮社

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「乙女なげやり」 三浦しをん 新潮文庫

以前読んだ「夢のような幸福」の続編といって良いでしょう。
曰く「痛快ヘタレ日常エッセイ」。
テイストはほとんど同じなので、実はこれを読み始めて、
う~ん、わざわざ買うまでもなかったかなあ・・・とちょっと思ってしまいました。
しかし、おそるべし、あまりの面白さに、
いつしかそのような微々たる後悔は吹っ飛んでしまいました・・・。

ちょうど、TVで「白い巨塔」のドラマをやっていた時期に書かれたものなんですね。
たびたび、外科医財前教授の話題になる。
そうそう、あれは私も必死に見ていました。
つい、力が入っちゃいますますよね。
その雰囲気をしっかり思い出してしまいました。

その他、弟君とその友人ジロー君との怪しい交友とか、
母君を襲った悲劇とか、
いつもの彼女のヴィゴへの妄想愛などなど。
読みどころ満載です。

それで、思い出しましたが、先日見た「刑事ジョン・ブック--目撃者」という20年も前の映画にヴィゴ・モーテンセンがチョイ役で出ているのを発見しまして、
その時に、私は「しをんちゃんに教えてあげたい!」と思ったのでした。
まあ、考えてみればちょっと調べればわかることなんで、
言われなくたって彼女は見ているに違いない・・・。
たぶん、ごく最近も「イースタン・プロミス」を見て、大いに盛り上がったことでしょう。

「乙女なげやり」まさに、「言いえて妙」の題名ですね。
しをんちゃんにぴったり。
(・・・なんだか馴れ馴れしいけど、勝手に親しみを抱いてしまって、
しをんちゃんと呼びたい雰囲気になっちゃいました。)

バスの中で吹き出しそうになるほどの楽しいエッセイもいいのですが、
早く小説の方もドンドン文庫化して欲しいと切に思うのでした。

満足度★★★★


愛しの座敷わらし

2008年10月03日 | 本(その他)
愛しの座敷わらし
荻原 浩
朝日新聞出版

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高橋一家は晃一の転勤のため、東京からとある田舎町へ引っ越してきます。
駅からもかなり遠い、ある古民家(築103年!)を借り受けて住むことに・・・。
一家の家族構成は夫晃一、妻文子、長女中学生梓美、長男小4智也。
そして、晃一の母澄代。
それから、コーギー犬クッキー。
そして・・・。
なんとその家には「座敷わらし」が住み着いていたのです。

紺色の着物。
おかっぱ頭で、頭のてっぺんで髪を結んでいる。
丸っこいほっぺた。
けれど意外とやせっぽちで、女の子のように見えるけれど、男の子らしい。
いつでも誰にでも見えるわけではない。
悪さをするわけでもないし、特別、何かいいことをしてくれるわけでもない。
幽霊のように不意に現れたり、手鏡の中に写ったりするので、
はじめの内は怖がっていた一家ですが、
次第に気にならなくなってきて、むしろ現れるのを待ち望む。

目を寄せるようにして、つまんださくらんぼをじっとみつめたり、
背中に負ぶさったまま鼻ちょうちんを出して寝ていたり、
智也のけん玉に目を見張って「ふわあ・・・」と感心。
なんだか、小さな子の愛らしい描写がとても生き生きしていて、
読んでいても、この子が大好きになってしまいます。

民話でもよく語られる「座敷わらし」。
そもそもこれは何なのかというと、これがつらく悲しい由来があるのです。
この子達は、生まれてすぐに間引きされた子どもたちだというのです。
貧しい農村では生まれた子をすべて育てるだけの余裕がない。
やむなく、せっかく生を受けたその赤子を、
親の手でまた神様に返すことがそう珍しくはなかった。
その子どもがお乳とおんぶの要らない年になってから、この世へ戻される。
今度は悲しい思いをしないように、住み着く家を裕福にする力を備えて。
それで、座敷わらしのいる家は栄る、という言い伝えがあるのですね。

さてこの高橋一家は、実のところ、家族ばらばら。
いつも帰りが遅く、家の中では存在感のない晃一。
あてにならない夫、認知症になりかけの姑に不満いっぱいの史子。
周りの空気を読むことばかりに気を使い、そのくせ友達がいない梓美。
喘息の持病がある智也。ちょっと気が小さいけど、心はやさしい。
息子夫婦との同居を始めてから認知症になりかけている澄代。

ところがこの家に越してきてから、どんどん絆を取り戻していくのです。
座敷わらしが魔法を使うわけではありません。
座敷わらしはただそこにいるだけ。
周りの人たちが勝手に新しい気づきをして、家族の結束を強めていくのです。

この、内部をちょっと近代的に改装した古民家の様子がステキです。
あまりに広くて掃除は大変そうですけど。
・・・そしてやっぱり夜は怖そう・・・。

私は、この作品を宮崎アニメで見たいと思ってしまいました。
きっと飛び切り愛らしく、いたずらっぽくもある「座敷わらし」になるだろうなあ・・・。
話し好きで人の良い米子おばあさんの様子も目に浮かぶようです。
こんな風に、時々、これは絶対宮崎アニメ向き!と思える作品を見つけるんですが、実現したためしはありません・・・。
宮崎アニメで見たい小説。
皆さんにはありませんか?

満足度★★★★★


刑事ジョン・ブック 目撃者

2008年10月02日 | 映画(か行)
刑事ジョン・ブック 目撃者 スペシャル・コレクターズ・エディ

パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン

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1985年作品・・・て、20年以上前ですね。
多分以前にTVの洋画劇場なんかで見ました。
アーミッシュという変わった生活をしている人たちが出てくる刑事モノ、
そういう記憶だけはあったわけです。
近頃、このアーミッシュと呼ばれる人たちの生活に興味があるのですね。
それで改めてみてみました。

彼らはアメリカのペンシルヴァニア州などで、共同生活をしており、
宗教上の理由ですが、文明社会から離れて、厳粛な規律に従い生活している。
電気も電話もなし。
車もないので、移動は馬車。
「従順」「謙虚」「質素」を生活信条とする。
現在、そうした人々は約125000人ほどいるそうで、
これが意外なことに近年増加しているという。
つまりは、昨今のエコロジー重視の風潮も影響しているのではないでしょうか。
人間として、極力自然に近い生活をすることの意義が見直されているわけです。
また、こういうことはある程度の人数で町ぐるみでなければ実践できないのですね。もちろん自分で作れるものは自分で作るのですが、
作りきれないようなもの、
例えば、靴を作る人、馬車を作る人、鍛冶屋さん・・・
ほとんどのものが町の中で完結する分業体制ができていないとダメですよね・・・。
多分、かなりの長い間、人々はそうした中で暮らしてきたのでしょう。
今のような、大量生産、大量消費の時代ほうが異常なのかも。

さてさて、映画から全然話がずれております。
とにかく、この映画はアーミッシュという特異な人々のことを
世界に知らしめた記念的作品でもあるというわけです。

ストーリーは、アーミッシュの少年サミュエルが
偶然駅のトイレで殺人を目撃してしまうところから始まります。
その事件の捜査に当たるのが刑事ジョン・ブック。
20年前のハリソン・フォードは、やはりカッコイイです!
しかし、少年が目撃したその犯人は、警察の幹部。
麻薬取引がらみの汚職を隠蔽しようとしたための殺人でした。
ジョンとその少年はそのことで命の危険にさらされ、
アーミッシュの町に身を潜めることになります。

銃弾を受け傷ついた体が癒えたジョンは、アーミッシュの良き働き手となります。
早朝牛の乳絞りをしたり、村の人総出で納屋を作るのを手伝ったり。
そして、サミュエルの母(未亡人)との間に芽生える愛・・・。
すっかり、村になじんで居心地がよくなってしまうジョンなのですが、
いつしか、追手は迫ってきます。
ジョン・ブックは生還できるのか、また、このほのかな愛情の行方は・・・?
20年程度なら全然古さも感じず、とても面白く見ました。

「アーミッシュ青年その2」くらいの役で、ヴィゴ・モーテンセンを発見しました!!
うわーい、若い!。
ハンサム青年です!
古い作品にはこういう楽しみもあるんだなあ・・・。

1985年/アメリカ/112分
監督:ピーター・ウィアー
出演:ハリソン・フォード、ケリー・マクギリス、ルーカス・ハース、ヤン・ルーブス