情けない!ボルト一つ外せないなんて。何度も行き来し、スペアタイヤも潤滑スプレーもハンマーも用意したって言うのに。すべては無意味、役ただず!役立たずは俺だ。
土砂降りの雨の中、必死で挑んでいるってぇのに、悪戦苦闘も結果がすべて。このまま路肩に軽トラ放置するわけにゃいかんぜ。それも、大量の薪材積んだまま。パンクしたタイヤ、あざ笑ってやがる。もう!すべてはお前のせいなんだからな、いや、やっぱり俺だ。調子乗って、限度越えの重量積んじまったんだから。
こうなりゃプロに頼るしかない。ボルト、外せないんですぅぅ、なんて、恥ずかしい限りだが、そんなことは言ってられない。呼ぶとすれば地元の自動車修理屋か?近くに農機具屋の作業場もある。どっちだ?いや、連絡ついたってすぐには来られないだろう、抱えてる仕事あるわけだし。それに費用もかかる。と、なりゃ、自動車保険のロードサービス利用だろうな。去年のクリスマス、プリウスでパンク修理頼んでるから、ちっと心苦しいが、車種は別、保険料の支払いも別だ、かまうもんかい。
さっそくサービースセンターに電話。事故の状況を伝えて、間近の修理業者の到着を待つつもり。ここで、とんでもない失敗をしでかしちまった!つい、お気楽に、過積載、なんて口走っちまったんだよ。とたん、口調が変わる担当者。「過積載だと無料ではなくなります」。あっ、そうだよね、そりゃそうだ。いや、ちっとちっとだけ積み過ぎたってだけで、それが主原因じゃないから、と繕うが、「上司の判断を仰ぎます」。うわぁ、口は災いの元だぜぇぇぇ。まっ、地元の業者呼んでも料金はとられるんだ、事実じゃあるんだし、諦めるか、と返答を待った。
「無料でお引き受けすることになりました」。偉い!立派!大度量!教職員共済。感謝の言葉とともに電話を切って、次は修理屋さんからの連絡を待つ。30分以内に到着するから近くから離れるな、の指示あり。どこ行くって言うのよ、この雨の中。
ようやく雨も小降りになった頃、どでかいレッカー車が到着。お、おい、レッカー頼んじゃいねえからね。降りてきた兄ちゃん、さっさとジャッキとインパクトドライバーとプロ用レンチを取り出し、ささっと、そう、ものの3分でタイヤ交換してくれた。さすが、プロの仕事だぜ。
助かったぁぁぁ。さらに、下ろしてあった薪材を軽トラに積むのも手伝ってくれた。なんと、心優しき若者じゃないか!聞けば、レッカー業者だって話し。そうか、そうか、覚えておくよ。
「あれっ、この冬タイヤ、釘刺さってますよ」。ええーっ!ま、まさかぁ。見れば確かに、ずぶりと釘。「抜かない方がいいですよ。近くならこのままそっと行って、その後交換した方がいい」。そ、そうだね、そういうことだよね。礼を言い、レッカー車が遠ざかるのを待って、そろりそろり、空気抜けるなよと祈りつつ、家まで4キロ、5分ほど慎重に走り通した。
なんてこったい!タイヤはパンク、持ってきたスペアは釘刺さり。ついてないんだ、今日は。もうこれで運搬は止めにしよう。わずか2回てのは口惜しいかぎりだが。と、半ば諦めつつ積んだ材木を下ろしたのだが、未練がましい。どうせ、この釘打ち冬タイヤはいつか交換しなきゃならんわけだよな、だったら、今すぐガソリンスタンド持ち込んで交換してもらおうか?そうすりゃまだ、何度か運べる。いや、すぐなんて無理、無理、無理。給油が仕事だもの。
自分で、も一度タイヤ交換挑戦してみる。ついさっきはめたばかりだから、錆び付きはなくなってる。だったら、今度は非力の俺だって。なんて、目論見は簡単に跳ね返された。やっぱ、今年は、前回の2回、今回の2回で打ち止め終了と白旗か。待て、待てよぉぉぉ。さっきのレッカー屋さん、薪材運びの道、途中にあるって言ってた。だったら、そこに持ち込んで、も一度付け直してもらおう。今度は釘のささってない奴を。
電話で了解をもらい、昼食もそこそこに軽トラを走らせる。やや入り組んだところだったが、難なく見つけて、事情を話して付け直しを頼んだ。いやぁ、こんな恥ずかしい、図々しい頼み、人の好い兄ちゃんだからできるんだ。嫌な顔一つせず交換を済ませ、空気圧もすべて調節してくれた。で、支払いはいくら?
「いりませんよ。タイヤ1本くらい」な、なんと、そこまで良い人だったのか!仕事をあけて、わざわざ待っててくれたって言うのに。ただじゃこっちの気が収まらないと、1000円札1枚押し付けて気持ちよくして、いざ、薪材置き場へ。
こうなりゃ頑張っちゃうよ。雨も止んだことだし、1回の積み込み量はぐっと減らして、回数で稼ぐ。2時過ぎから始め、作業員が立ち去る5時過ぎまで、粘りに粘って、3回運搬。本日5回、前回も含めれば7台分も運び込んだ。じゃんじゃか下ろし、積み上げて、我が家の薪置き場が薪材で埋まった。
おお、ここまでため込むと、薪切り・薪割りは新たな大仕事になるなぁ!なのに、チェーンソーは修理に出たまま。うーん、稲刈り前にゃすべて終わらせたいところなんだが・・・