ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

『炎の女』たちは今を焦がす!

2020-09-18 09:28:36 | 本と雑誌

 やっとこ文字が頭に定着する季節になった。あの暑さの中でもだらだらとページを繰ってはいたんだが、活字は軽くスルーして行ってたみたいだ。

 久しぶりの読み応え!『炎の女』~大正女性生活史~著:永畑道子、発行:新評論。

 実は以前、『女たちの昭和』を書くためにため込んでいた本だ。ちょっと見、引いてしまって後回しになりそのまま積ん読本に。だって、見ろよ、この装丁だぜ!

 なんかさぁ、妖しい際物っぽいじゃないか。写真はある、変なイラストは入ってる、目次もすべて細かく網羅、って、表紙にだぜ。さらに、本文中のハイライト的惹句がこれでもか!ってほど埋め尽くしている。この見掛けから、すぐにページを開くって、かなり勇気のいる話しだろ。

 ところが、いざ入り込んでみると、実に丁寧で誠実な内容だったんだ。大正を生きた女たちの姿が、その時代とともにくっきりと浮き上がって来る。それも、よくある女性本と違って、代表的人物の紹介なんかじゃなくて、隅から隅の女たちを几帳面に網羅しているんだ。製糸女工たちから米騒動を引っ張った漁村の母ちゃんたち、貧しさに喘ぐ農村の女たちやらそこを抜け出してたどり着いた女中や娼婦たちの暮らしぶり、中でも廃娼運動については詳しくたどれる。女子教育をめぐるせめぎ合いから、時代の先端を走った女たちの輝き、彷徨、挫折も広く取り上げ、最後は政治に立ち向かう女たちの戦いとして、普選運動に描写はたどり着いて終わる。ほんと、女たちを視点に見た大正という時代が、見事に浮かび上がって来る。

 思うのだが、大正の女たちがぶち当たった課題や壁って、今の時代につながるものなんだよなぁ。女性参政権の問題は、ジェンダーバリティに直結しているし、暮らしの場の貧しさは、非正規や母子家庭の貧困を思い起させる。戦う女たちには、伊藤詩織さんや、kutoo運動の石川さん、つぼみカフェの仁藤さんたちの顔がよぎる。男たちが頑なに縋る良妻賢母主義は今の政権担当者にしっかり引き継がれている。昭和前期という、戦争と圧政を間に挟んでしまって、大正という豊かな萌芽が見失われてるってことなんだろうな。

 あれもこれもと盛り込んだ内容だけに、個々の事情や人物像では掘り下げ不足は仕方ない。そこは、さらに関連の書物に手を出したいと気持ちを掻き立ててくれる。机の片隅にはすでに何冊も積み上がりつつある。

 読み終えて、改めて表紙を読むと、そこには著者の熱いほとばしりが込められいることに気づいた。

 「自立とは何か、夫によって養われる妻とは何か、大正初期のこの争いは、現代の主婦の存在にも通じる問題提起と受け止めることができる。」

 「民衆の蜂起は、つねに生活に根差す、やむにやまれぬ抵抗である。」

 「女たちのたたかいは、大正もいまも、土着のしたたかさを帯びている。」

 

 

 

コメント
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