ポエム *** 文士と河童
9月11日(火)
バーのカウンターで on the rock のグラスを片手に、うつむき加減で、陰りを見せている文士の横顔
レトリックなやや着崩した着物の袖が グラスを握った手首を浮き
立たせている
人間失格・メロスは走って・ それでもって河童の独り言を聞いている・
カミユの”異邦人”の 世界に照らしている、
まぶしい太陽がそこにも差し込んでいる。
生と死 の境界線を 容赦なく、照らしつける。私は、人間失格 ・
俺 も 右同じ ・ 否、仮面をはがせば、誰だって同じ。
いたたまれずに、穴倉に入る代わりに 太陽を浴びて、”醜態” という
肌に浸み込んだ”カビ”を干そう良心ある人々の善良なる人々の、
偽善と欺瞞で 盲目になっているひとたちの、罵倒を覚悟でその身をさらす。
それでも、湿った仮面の下にある 腐りかけている細胞を持て余して、
女とともに、河童になった。
きちんと脱いだ下駄をはきそろえて、文士は河童を呼んだ。
”河童ってね! 子供の魂をもっててね、壊疽した肉体の奥にある、
純な魂 を 抜き取ってくれるんだって。
知らなかった?
河の童(わらべ)が、文士の童(わらべ)の魂を取り出して
洗ってあげたんだってさ。”
そんな童話を知ってか知らずか、わらべ歌をうたいながら、
文士は女と河童を 呼んだ。
”河童の”か”の字は、かくれんぼ! 河童の”パ”の字で、じゃんけんぽん。
あいこはなしよ、じゃんけんぽん。
負けたら、心をくれてやる。 鬼さん鬼さん、手のなるほうへ・・・”
こうして、二人は河童になった。
そして、最後の仕上げに、人間失格者も、情死者も、壊疽した肉体も、
on the rock の残り香も、みんな、河に流して・・・残ったのは、
彼の魂に降り注ぐ、本物の太陽の光だけ。
カビの臭いも罵倒のざわめきも消えて 昇華された文士のエッセンスとともに・・・・
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