師走ともなればフイールド到着は9時近くになる。夏時間より1時間は遅いけれどそれなりの理由があって、作業場所のほとんどが日照が届かなくなることもあり気温が低かったり朝露で濡れているからなのだ。昔々、週刊誌だったか「濡れにぞ濡れし」とか言う連載があったけれどまだ中学生だった小生には読む事は憚られたのだった。
この朝のフイールドは朝露ビッショリでまさしく「濡れにぞ濡れし」を眼前一望のもと、晒していた。だからこそ日陰の植生部には入らずとも眺めれば地味なものの結構美しい風景でもある。朝露をビッショリと付けているのはチゴザサだったか名前が出てこない昨今では断定も出来ないのだが風景を楽しむだけなら名前など野暮である。通りすがりに美人だからとて「君の名は?」なんてセクハラまがいだし美人ではないと思われた側からはそれまた問題が生ずる。まあ、姥捨て山の草本・木本相手なら気兼ねは無い。
ロシア民謡の一節「朝露踏んで 牛を追っていたら 森の中から熊が出た云々」は少年期にソノシートで覚えた歌だが近年は街中にも熊が出没する。平たく言えば野生動物も文明開化の時代になったのだろう。近々、九州・四国地方にも熊が海を泳いで生活圏を広げそうだというニュースがあったが、生き物である限りフロンティア精神にあふれた先駆者は必ずいる一方で絶滅への道程を辿るしかない生物もいる。しかしなあ永田町界隈の動物は威之志士様の跋扈蹂躙より手に負えない絶滅には程遠い獣たちであることよ。「嘘つきは泥棒の始まり」とか「恥を知る」なんてしつけは無かった獣なのだろう。強いて言えば、なあなあ仕立ての脚本とセットで嘘ッ腐物語の三文芝居が生活の糧かあ。世の中には太平安楽の場所もあるのだった。