昨日は新国立劇場のタンホイザーを見てきました。前回のオペラは1年2か月前の新国立劇場。同じワーグナーのニュルンベルクのマイスタージンガーでした。その前が4年前に同じタンホイザー(同じプロダクション)。なんだかワーグナーばかり見ている印象です(笑)。タンホイザーといえば5年以上前のバイエルン国立歌劇場来日公演が強く印象に残っています。現在大活躍中のペトレンコ指揮。タイトルロールはクラウス・フロリアン・フォークト。その感動は今でも鮮明に思い出すことができます。25年以上前のルネ・コロ演じたタンホイザー(ハンブルグ国立歌劇場来日公演)も記憶に残っています。さて今回はどうでしょうか。久しぶりのオペラ、期待に胸が膨らみます。
まずは公園の概要です
- 【指 揮】アレホ・ペレス
- 【演 出】ハンス=ペーター・レーマン
- 【管弦楽】東京交響楽団
- 【バレエ】東京シティ・バレエ団
- 【領主ヘルマン】妻屋秀和
- 【タンホイザー】ステファン・グールド
- 【ヴォルフラム】デイヴィッド・スタウト
- 【ヴァルター】鈴木 准
- 【ビーテロルフ】青山 貴
- 【ハインリヒ】今尾 滋
- 【ラインマル】後藤春馬
- 【エリーザベト】サビーナ・ツヴィラク
- 【ヴェーヌス】エグレ・シドラウスカイテ
ペーター・レーマン演出の新国立タンホイザーは2007年が初演で今回が4回目のプロダクションとなります。2007年の初演は義父と見に行きました。そして前回(3回目)の2019年にも見ているのですが、今一つ印象に残っていないのです。実際に幕が開くと記憶が蘇ってきました。演出は極めて伝統的なもので安心して音楽に専念できます。これでよいのです。参考までに前回の感想を引用しておきます。
2007年の公演は義父と見に行きました。楽劇なのだからもっと舞台に変化を持たせて欲しかったと語っていたのを思い出しました。でもオーソドックスで安心して音楽に集中できるので個人的には不満ありません。ヴェーヌスブルクの映像はちょっとグロテスクかな(失礼)? ~引用終わり~
今回のヴェーヌスブルクの映像は、ヴェーヌスがとても魅力的だったので素敵でした(笑)。
今回は奮発して1回中央の座席(S席)を確保。舞台が目の高さの真正面に見え、歌手の声は正面から直接聞こえてきました。指揮者(アレホ・ペレス)の指揮ぶりも見えます。1幕のバレエも間近で見られて素晴らしかった。今回は新国立劇場専属のバレエ団ではなく、東京シティ・バレエ団だったのです。
オーケストラピットに入ったのは前回と同じ東京交響楽団。超低空飛行というか心配になるほど抑え気味でした。主役の合唱を引き立たせるために脇役に徹したのでしょうか。でもアンサンブルはとても素晴らしく、安心して舞台に専念できました。個人的には、2幕の幕切れなど、もっと音量的なダイナミクスが欲しかったかな。オペラ劇場専属のオーケストラではないので難しいのかもしれません。前回公演の記事を読み返すと昨日と同じ感想が記載されていました。
昨日の主役は新国立唱団でした。いつもながらハーモニーの美しさに心が熱くなります。2幕、3幕と涙が出そうなほど素敵でした。アカペラの合唱はそのまま昇天しそうなほど感動的です。一昨年聞いたニュルンベルクのマイスタージンガーでは、コロナ仕様の演出で、ソーシャルディスタンスを意識して合唱団も疎ら。迫力的に苦しそうでした。一方、今回はコロナ以前の姿に戻って舞台上は密状態(笑)。やはり迫力ありますね。もちろんマスクはしていませんし、前回のように椅子を消毒するようなコロナ期ならではの演出も皆無でした。
さて、タイトルロールのタンホイザーを歌った世界的に活躍中で新国立でもお馴染みのステファン・グールドさん。期待通り、素晴らしく力強い歌唱で苦渋に満ちた3幕のローマ語りは圧巻です。官能の愛と精神の愛の狭間で苦悩し、自暴自棄に陥ったタンホイザーを見事に演じていました。新国立ではジークムントやジークフリートの圧倒的な歌唱が脳裏に焼き付いていますが、あれから5年以上経過してややピークは過ぎたかなという印象。声が太く低音に深みが出てきた一方、高音は少し厳しそうで、やや擦れる場面も散見されました。もともとバリトンに近い声域をもっているので、ドラマティコやヘルデンテノールとしてまだまだ活躍が期待できそうです。
官能の愛の世界の女神を演じたエグレ・シドラウスカイテさんは、タンホイザーを上回る迫力と声量に圧倒されました。リトアニア出身のメゾソプラノで新国立劇場には初登場のようです。
エリザベートを演じたサビーナ・ツヴィラクさんも、容姿、歌声、演技ともに素晴らしかった。艶やかな声がホールいっぱいに響き渡ります。あまりの素晴らしさに圧倒されましたね。スロヴァニア生まれのソプラノで新国立劇場には初登場のようです。
牧童を歌った前川依子さんの透明な歌声にもしびれました。
代役で出演したヴォルフラム役のデイヴィッド・スタウトさんは朗々と歌うタイプ。3幕の夕星の歌はしんみり聞かせてくれました。ただし主役の中では声量的には少し控えめで、3階席まで声が美声が十分に届いたのか若干心配になりました。
領主ヘルマン役の妻屋秀和さんは日本離れした容姿が魅力。歌唱力に加え、最近はますます貫録が増してきましたね・・・
感動的なフィナーレの合唱の中、3時間15分のオペラの幕が下りました。久しぶりのオペラを十分に堪能して帰路につきました。
幕間の休憩中のロビーの様子。ようやくコロナ前の賑わいが戻ってきました。
1階のオープンスペースに展示されていたのはアイーダーの舞台セット。今年は新国立劇場開場25年を迎えます。実は1997~1998年の開場記念で演奏されたゼッフィレッリ演出の豪華絢爛なアイーダは見ていないのです(ローエングリンは見てます)。今回25年周年を記念してアイーダの公演が行われるので4月8日のチケットを会員先行予約でゲットしました。こちらも楽しみです。
(おまけ)
京王線の各駅にこのようなポスターが掲示されていました。受験シーズン真っ只中です。