漢文には返り点がある。
なぜ返して読むのか。古代中国語は、日本語とは語順が異なる言語だからだ。
日本語と異なる語順の言語を、原文をそのままの形にしておいて、日本語読みしてしまおうと生み出されたのが返り点だ。あたりまえのことだが、返り点は、日本語と語順の異なる場合だけつけられる。
適当につけられているのではない。
「花咲かず」を漢文では「花不咲」と書く。
古代中国の人は「花が咲かない」と言うとき「花不咲」と書く。
「咲」という動詞内容より「不」という否定がより大事だという意識が働いているのだろう。
日本語は、現代語で考えてもそうだが、ものごとの結論は最後の最後にあきらかになる。
動詞の後ろに助動詞がつき、その動作をしたのかしなかったのか、未来のことか過去のことかを表明するのは後回しになる。
漢文の助動詞は、とりあえず主語のあとにすぐ置かれる。
助動詞だから、その後ろには必ず動詞がある。
「漢文には返って読む文字がある」というおおざっぱに理解するのをやめて、この字(語)は助動詞だから、下の動詞から返って読む、という意識をもつとよい。
これらの語にもどっている語がVであることがわかる。
以下の数個が漢文の助動詞にあたる。
〈助動詞〉
不レV・弗レV「~ず」 … ~ない
見レV・被レV「~る・らル」 … ~される
可レV「~べし」 … ~できる・~するとよい
得V「~う」・能 V「よク~」 … ~できる
勿レV・毋レV・莫レV・無レV「~なカレ」 … ~するな
欲レV「~ントほつス」 … ~しようとする・~しそうだ
「能」は読み方は副詞ぽいが、可能の助動詞だ。
否定とセットになると、「不レ能レV(Vするあたはず)」となり、ビジュアル的にも助動詞になる。
他にもあるけど、覚えるのはこれだけでいい。