漢文の前置詞句は原則として副詞句なので、後ろに必ずVがある。
だから前置詞句を見かけたらいったん〈 〉でくくって、その文のSVをまずつかむと読みやすい。
我 〈 為 由 里 子 〉 作 炒 飯。
は、「我」がS、「為由里子」が前置詞句、「作」がV、「炒飯」がO。
我 為(二)由里子(一) 作(二)炒飯(一)。(私は由里子の為に炒飯を作る。)
我 〈 与 彩 〉 登 山。
は、「我」がS、「与彩」が前置詞句、「登」がV、「山」がO。
我 与レ彩 登レ山。(私は彩と山に登る。)
前置詞を覚えることで、その文のVが明確になる。
上記の文を否定文にするには、助動詞「不」を用いればよいが、まず結論ありきの漢文は、Sの直後に「不」がおかれ、その後に前置詞句、そしてVという語順になる。
我 不 〈 為 由 里 子 〉 作 炒 飯。
我 不 〈 与 彩 〉 登 山。
の語順なので返り点は、
我 不(下) 為(二)由 里 子(一) 作(中) 炒 飯(上)。
我 不(二) 与レ 彩 登(一)レ 山。
となる。とにかくまず初めに、前置詞句にレ点、一二点をつけてしまうのがポイント。
「於」、及び「於」の代役になる「于」「乎」だけは、英語の前置詞句のようにVの後ろに置かれることが多い。
我 学 漢 文 於 学 校。
のとき、「於」に返り点をつけて「に」と読んだ学者も昔いたが、名詞の送り仮名でそのニュアンスを読んでしまい、「於」自体は置き字にするのが通例になった。
我 学(二) 漢 文 於 学 校(一)。(我漢文を学校に学ぶ)。
「於」のつくる前置詞句は、例は少ないが副詞句ではなく形容詞句として名詞を修飾することがある。これも「於」が他の前置詞と異なる点だ。
センター試験98年追試にこんな文があった。
道之於孔老猶稲黍之於南北也。
「道之於孔老」がS。「孔子や老子における道というものは」の意味。
「猶」がV。「同じだ」。
「稲黍之於南北」がC。「南方の人にとっての稲、北方の人にとっての黍」
「也」は終助詞で断定。
「於」は通常Vの後ろに位置し、英語の前置詞と同じ働きをする。
「於」がVの前にある場合は「~に於(お)いて」と読む。
原則
助動詞と前置詞には返り点がつく。
助動詞の後ろ、前置詞句の後ろにはVがある。
返り点がいろいろ複雑についてても、最後に読んだ漢字(語)は、その文のVか、Vの助動詞である。
もっともよく使われる前置詞は「以」だ。
名詞が省略されて返り点がなくなり、接続詞に見えることもあるが、「以」の後ろには必ずVがある。
ちょっとしたコツ
「以(もって)」の後ろにVあり。
「而(ジ)」の前後にVあり。