なかなか捨てられずにしまってあった、使い古しのシェーバー
新たに買ったために要らなくなった古いオーブンレンジと扇風機を処分するよう頼まれた。
こういった不要の電気製品や金属類を無料で回収している業者が、わが家のすぐ近くにある。
仰せに従って回収業者に持ち込もうと、重い腰を上げたときにふと思い出した。
洗面所にある背高戸棚の引き出しに、古ぼけた電気製品が眠っていることを。
こちらも「そろそろ処分したら?」と催促されて数カ月が過ぎた代物である。
戸棚の引き出しに眠る古ぼけた電気製品とは、ここ10年ばかり愛用してきた歴代のシェーバーたち5台。
思い切って処分するに当たって、このたび買った最新鋭のブラウン製も並べて記念写真を撮った。
これで一区切り、思い切って業者に持ち込むことにした。
何故にここまで、古ぼけたシェーバーを処分するのに未練をおぼえるのか。
高価な品、衝動買いの安物。値段はともかく、使用期間はそれぞれ多少異なるが、少なくとも2年くらいは毎朝愛用したものばかり。
出勤前に、お出かけ前に、顎から頬にかけて、念入りにシェープアップする小道具として必要欠かせない、男前を上げるグッズである。
しかも、「こいつはヨーロッパに連れて行ったヤツだ」「これは安物だが随分重宝したなー」、などと一つひとつに何かの物語や思い出が刻まれている。およそ10年くらいの短い期間であろうが、これらの5台はいろんな日々を眺めてきたのであろう。
毎日の日記に象徴されるショートショート自分史。色々書き留めた随筆系のものや、頭を悩ませた小論文的なものを連ねて作り上げる自分史。
色んな形がある自分史ではあるが、この古ぼけた、処分するしかないシェーバーにさえ、短い短い自分史を重ねることは出来そうである。
そんなわけで、案外簡単に処分するのがつい惜しくなったりする。でも思い切って回収業者に渡そう。思い出は引き出しに残して。