今宵は、満月の中でも旧暦9月の最も美しいと言われる満月である。その上地球に一番接近して大きく見える上にきれいな、超の付くスーパームーンという触れ込みに誘われて、夕方あたりから少し期待しながら月の出を待った。
でも内心は、この雲の厚さじゃいくらスーパームーンと言えども、地上に待つ私の目に届かないのではないかと、ある程度覚悟をしていた。日暮れとともに益々雲は厚くなるばかり。結局期待も当ても外れてしまった。ただ早くから全面的な期待をかけていたわけじゃないので、ま、しゃーないかと言った程度の当て外れでもあった。そんなことを考えていたら、頭の中を久しぶりに百人一種が駆け巡った。
中でも月にまつわる歌が、上の句下の句別々にあれこれ浮かんでは消える。
そんな中でもただこれだけは他人に譲れない、いわゆる十八番(おはこ)で絶対に自分で取る、月を詠んだ歌がある。「光る君へ」ではないが万葉の世界、紫式部の作品である。
❝ めぐりあいて 見しやそれともわかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな ❞
今宵の場合は、巡り合えないままに雲に隠れてその余韻も浸れなかったスーパームーン。あきらめるより仕方がないね。やはり当ては外れないのに越したことはない。でも外れることの方が多い人生もある。