“ 春の海 ひねもすのたり のたりかな ”
この句に代表されるように、春の海は穏やかこの上ない。
少しくらい風があっても、春の陽光をキラキラ反射させる海面は輝いていて心地いい。
今は秋。春の話に夢中になるわけではないが、春の海を今一度思い起こしていただけると、同じ波穏やかな瀬戸内海でありながら、秋の顔と春の顔の違いが分かりやすいか思う次第。
秋も深まってくると、大した風でなくても海面はなんとなく騒がしい。小舟を揺らすほどの小波やうねりを持っている。そこへ、少しでも風が出ると、すぐに波頭が白く浮き立つ。いわゆる白波が立ち始める。
そうなると、砂浜に打ち寄せる波も、バッサ~ザワザワ大きな音としぶきを伴って、海の恐ろしさを実感させる。
小学5年生や、4歳児のお供で、誰も足跡をつけていない引き潮の砂浜を散歩する。そこには春ののたりのたりもなければ、夏の夕凪もない。そこにあるのは、冬枯れでもない静けさであり、物語の一つも浮かんできそうな、秋ならではの物思いたくなる風情がある。 まさに ♪ 今はもう秋 誰もいない海・・・ ・・・♪
小さな小さな足跡、大きな足跡を砂に印しながら歩く。 小石を見つけては立ち止まって海面にサイドスロー。
投げた小石が海面を二回三回とジャンプするのを、自慢でじいちゃんに見せたがる。「じいちゃんも投げて!」とせがむ。肩が痛いからなど弱音は吐けない。顔で笑って本気で投げて見せる。まだ負けていないじゃろっと。
そんな波間の向こう、近くの漁港から出た漁船が、今が旬の太刀魚釣りをしているのが見える。
大潮の時など、海面が盛り上がるように潮が高くなる。すると漁をしている船が、手の届くあたりまできているような錯覚を起こす。秋の海が春とは違う、などと言ってはみても所詮瀬戸内海。写真で見る限りのどかなものだ。
春夏秋冬それぞれの海にかかわるワンシーンをアップしてお目にかけるのが、海のすぐ近くに住んでいる者のある種責任みたいなものを感じていると思召せ。山もいい、紅葉もいい。されどやっぱり海のある景色はいい。