お盆を目の前にして、どうしてもこの時期にやっておかなければならないことがる。
お墓掃除という一仕事である。
こればかりは、暑いのなんの言ってはいられない。毎年の恒例行事であり、8月の最初の土日か、その前の週末と、自分で決めたことなのだから。
今は亡きお袋が「おまえらに墓石まで迷惑はかけられん」といって、自分の貯金を出して、代々の墓石に替えて建立したものだ。
まだ新しい。掃除をしてもし甲斐のある光沢を見せ、結果をはっきり感じさせる。
バケツ3杯の水を我が家から運び、柄杓でかけながらタオルで念入りにこする。
拝み石など本体は動かせないが、お花立て・家紋石・香露台など動かせるものは全て移動させ、磨いて磨いて磨き上げる。
間違ってもタワシなど使ってはいけない。ひたすらタオルでこする手仕事。
そのようにして汗をいっぱいかくから、気持ちの中まで洗われた気分になり、清々しくお盆を迎えられる。大手を振ってお墓参りが出来る。
大げさにいえば、こういったことの一つ一つが、家を守るということなのだろう。
実はこの墓掃除、厄介なのは藪蚊との闘いである。作業を始めると同時に、ハエほどの大きさのシマシマの藪蚊がもぶれてくる。
お墓の掃除をしながら殺生もおかしなものだ、と思いながらも最初の2・3匹ははたいて落とす。次から次へ獲物にたかるハイエナの如くまとわりつく。
手も足もじっとしていることなく、動かしているのに「スキあらば・・・」と波状攻撃をしかけてくる。敵も、滅多にやってこないチャンスとばかりに、死に物狂い。藪蚊さん、ご期待に添えなくてごめん。早々に仕上げて帰った。
墓石を掃除するたびに思う。「孝行をしたいときには親はなし、さりとても石に布団は着せられぬ」。せめてもの罪滅ぼしに石を洗う。
気持ちの中ではこするのではなく、そ~っと撫でている思いがする。
(写真の墓石は我が家のものではありません。ネットから拝借)