“ 朝顔の 藍の時間に 刻合わす ” 五六歩
嘆き節を口ずさむような猛暑・酷暑に始まった8月。途中から、命を脅かせる猛烈な雨が連日続いた。
それでなくても、コロナ感染は拡大の一途をたどり、医療は崩壊寸前、入院診療不足等々、気持ちは沈むことばかり。朗や明を求めて立ち上がろうとしても、目に見えない抵抗に悩まされたり、手応えのなさに途方に暮れたり。そんな8月が往こうとしている。思えば、長く息苦しい夏であったような。
季節を色で表すなら「白」といわれる秋。今年はどんな秋になるのだろう。確たる根拠のないまま季節の移ろいによる変化に淡い期待をしてみたくなる。
そんな秋の訪れを先取りしたわけでもないが、この夏は文庫本にホンのちょっとだけ親しんだ。飛行機事故による突然の死から40年という節目を迎えた、向田邦子作品を今一度ひもといてみたくなった。
その中で言い得て妙と思わせる、こんな一節に出くわした。
『偏食・好色・内弁慶・小心・テレ屋・甘ったれ・新しもの好き・体裁屋・嘘つき・凝り性・怠け者・女房自慢・癇癪持ち・自信過剰・健忘症・医者嫌い・風呂嫌い・尊大・気まぐれ・オッチョコチョイ・・・・・・。きりがないからやめますが、貴男はまことに男の中の男であります。私はそこに惚れているのです。』と。
随分並べられたものである。小癪な!と舌打ちする前に、「ウ~~ン図星!アタシのこと、よく見てますね~」素直に脱帽!!せめてもの反論は唯一「風呂好き」だよ~ん。くらいのもんだ。さていったい貴男は、この中で「そりゃぁアタシにゃ関係ね~よ!」と言い切れる言葉がいくつあるでしょう。
これだから向田作品は面白い。しばらくは買い置きで間に合いそうだが、邦子さんの妹向田和子著なる「向田邦子の恋文」は手に入れたい一冊である。