今年の夏はどういうわけか「蚊」がいない。これも天変地異の前触れか、不気味なほど蚊がいない。
それでなくても暑くて寝苦しい夜中に、耳元でブ~~ンなどと囁かれると、一気に眠りが覚め、我が耳、我が頭を平手で張ってみる。
再びやって来る様子があると手探りでスプレーを探し、目くらめっぽう吹かしまくる。やっと落ち着いて眠りにつく。
同じ耳元で囁くのなら、蚊の羽音よりもっと優しい蚊の泣くような声の方がいいのかも。
毎夏そんな経験を繰り返して来たのに、今年はそんな悩みの回数が極めて少ない。これは有り難いことである。
夜中の眠りを妨げるにっくき蚊の襲来ではあるが、ただあまりにも無さすぎると「なんで蚊がおらんのじゃろうか」気にかかる。
いなきゃそれでいいじゃん、という話ではあるがそうばかりも言っていられない。
日本の夏に蚊は付き物であり、蚊取り線香も日本の夏の風物詩の一つである。蚊を追い払うウチワだって風情がある。
なのに、夕方畑に出て水やりをするときも「やぶ蚊」がほとんど襲ってこない。
今年の夏も前半までは夕方の水やりなど、長袖カッター・長ズボン・帽子に手袋、腰に蚊取り線香という完全武装であったのだ。
だから刺すことも出来ないのに、それでも体中にもぶれつくほど集まって来ていた。
あの西日本豪雨災害とその直後からの「命にかかわる高温」のダブルパンチで、今年は蚊まで消滅したのだろうか。
可能性としてはあり得る。間もなく羽化する予定だった幼虫が、あの豪雨によって押し流されてしまったか。
また、雨に流されなかった幼虫も、その後の熱波にやられて絶えてしまったか。
何れにしても、夜の耳元の囁きから解放されて有り難いとは思うが、周りにいるべきものがいないのはやはり、何か一抹の不安を誘う。
生きとし生けるもの、やはり己の生命を全うさせてやりたいと思うのも人情というものか。
人間て天邪鬼な生き物ではある。
7月が往く。明日から8月、秋立つ日まであと7日。