今年の異様な暑さは今さら言うまでもなく、マイナス面の大きさに驚くばかりである。が、数こそ少ないが利点と言えることがらもまるで無いわけではない。人にとってもクマやサルにとっても美味しい秋の味覚「柿」が豊作といわれている。
❝ 渋柿や丸8年の恩知らず ❞ と言われる渋柿が丸々太って収穫される映像が流された、いや違ったオンエアーされていた。そして頭の奥にシミのように密かにくっついている遠い思い出がよみがえる。
今思えば我が子を奮起させる父親の期待感であったのかもしれない「渋柿じゃったのー」という嘆き節。
桃やクリは3年もすれば実を結び始める。そこへ行くと柿は実を結ぶまでに8年もの長きを要する。
苗を植えて8年間辛抱して手塩にかけた、その挙句が渋柿だった。となれば裏切られたという親父の気持ちが今にして少し理解できる。
だが待てよ、植えられたワタシが甘柿であると宣言したわけではない。宣言しないまでも甘柿たらんと少しは努力したのだろうと思うが、結果は渋柿だった。親父、ごめんね。
でもね、渋柿の言い分もちょっとっ聞いてよ。あの渋柿もちょっと長い目で眺めて太陽に当てておけば、それはそれは頬っぺたが落ちそうなほど美味しい熟柿になるんよ。一皮むいて軒下に吊るせば、これまた古来からの得難い甘味料であったのよ。
あまりにも早い結果を求めたばかりに期待外れの渋柿で終わっちまったね。
「栴檀は双葉より芳し」。栴檀になれなかった若気の至り。この季節の渋くて甘い思い出である。