一人ひとり名前を呼ばれて、校長先生から「入学許可」
初めてこの手に抱いた孫。
嫁いだ娘夫婦が我が家の近くに新築して引っ越してきたのが16年前。間もなく第一子が誕生した。
それが、私たちにとっての初孫、ことし15歳。高校入学という大きな節目を迎えた、孫兄ちゃんである。
持ち前のバイタリティと、天性のバランス感覚を、早くに見出したお父さんの影響もあって、幼いころからスキーを始めた。
小学校6年から3年間、冬休みの2週間は全て、夕張レーシングチームの強化合宿の一員として北海道で過ごした。
親許でのクリスマスもお正月もない、他人の中での3年間が、彼にとってはさほど苦にはならなかったのだろう。
高校は「できればスキー部があって、本格的に練習できるところに行きたい」という夢を膨らませていたようである。
念願かなって、島根県の、スキー部はもちろん全寮制を持つ県立高校になんとか入学できた。
宍道湖から山間に向かうこと約70km。広島県三次市から約40㎞の、スキー場が至る所にある、まさしく山間地。
冬場には雪が多くて交通も遮断されることもあるという町。これも自らが選んだ高校。住めば都になっていくことだろう。
学校に通じる道路には、至る所坊主頭立っていて、クルマに向かって慇懃に頭を下げ「おはようございます、こちらへどうぞ」と、心地よい誘導をしてくれる。何人の前を通過したろうか、決められたスペースに案内され駐車した。
坊主頭の大声を憚らない、極めて礼儀正しい彼らは、全て野球部員ということだった。
雪深い山間部の高校で野球部?という素直な疑問を持ったが、いつかは甲子園目指して練習に練習を重ねているということだった。
スキー留学を受け入れる高校というばかりではなく、意外とと言っては失礼だが、多様な教育理念を持った普通高校である。
進学にはもちろん重点を置いており、女子寮も完備してあるという。
駐車場でのちょっとした立ち話の中でも「滋賀・神戸・京都・東京」といった遠方から来た保護者と言葉を交わした。
こりゃ困った、兄ちゃんは学力で付いていけるじゃろうか・・・などという心配が出てきた。
まあいい、15才から22才くらいまでの花の青春を過ごす中で、自分の本当にやりたいこと、本当の夢を見つめてくれればいい。
周囲にいるいろんな人との交流の中で、自分を見つけ出す日は来るのだろう。
親許を離れた寮生活の3年間。食べ物の好き嫌いをなくし、どれほどの成長を見せるのか。夢は膨らむばかりである。
女子は近代的なブレザーが制服となっていたが、男子は昔ながらのガクラン、詰襟であった。 ガンバレ、にいちゃん!!