農天市場に素晴らしいものが持ち込まれました。
「山ブドウ」の実を十数キロも古い知人が、売れないだろうかと持参したのでした。
綺麗に洗われた、ユリの球根用のコンテナに二箱です。
持つとずっしりとした重さが手に伝わります。
「山ブドウ」と言っても、実は100パーセント純粋な山中での自生品では有りません。
知人が50本もの苗木を植え、五年間育て上げたものの初めての本格的な収穫だったとか。
本当の天然モノよりは粒がしっかりし、大粒に思えます。
昔々のその昔、若かりし父が「銀山湖(奥只見湖とも呼ぶ)」の工事にトラック運転手として従事し、
帰りに大きな南京袋にいくつも詰めて持ち帰ったことを思い出す。当時きっとスベルべは小学校の一、二年生だったはず。
その時の大量の「山ブドウ」の行く末、結末にはとんと記憶が有りません。
知人は試飲用に「山ブドウジュース」と「山ブドウワイン」も下さった。
この写真は、美味しい美味しいジュースです。そう、野性味、山の香りの強いジュースで逸品です。
もっと驚いたのは「山ブドウワイン」ですね。
いやー、もう香りと言い、雑味、渋みを全く感じさせない絶品。
一口口に含んだだけで、一人で思わず唸ってしまいました。
一口すすって、目を閉じたならばたちまち奥只見周辺の山中に迷い込んだような気持ち。
深山幽谷に遊ぶ仙人のような心地になってしまいました。
但し、問題はこのワインの醸造は完全に違法だと言うことですね。
ま、材料としてはこんな使い方も有るようですよ。ってヒント程度ですね。
価格が全く見当もつかないのでネットで調べたら、益々訳が分からない。
大体、「本年度分は売り切れ」の表示でしたがなんと価格は一キロ当たり800円から3000円。
800円だと安すぎるし、3000円ではちょっと手を出しかねる価格。
山菜評論家を名乗る「味の家 魚野川」の覚張さん(通称がくさん)にも多忙な中お話を伺った。
「うーん、その人の価値観だからねー」うーん、なるほど、なるほど。
貴重品として珍重したならば正に山の宝石で有ろうし、興味のない人にはただ酸っぱいだけのちっぽけなブドウ。
一時期奥只見の主のような存在だったかの「開高健」大先生だったら、どんな評価をしたのかなー。
いや、ひょっとしたら作り主の事を慮って書かないだけで、密かに愛飲していたのかも知れない。
今度機会が有ったら、大先生が定宿にしていた「伝之助小屋」の人に聞いて見ようかしらん。
もう、時効成立でしょうから、御当局の手入れ、ガサ入れも心配無用でしょうから(笑)。
彼の随筆には宿で果物の写真入りのレッテルを貼った果実酒用の35度の焼酎を、
小皿に貰ったマーガリンを舐めながら飲んだ話なんてさも美味しそうに書いているけれど、
あの大グルメにしてグルマンの開高大先生があの素晴らしい「山ブドウワイン」の味を知らなかったとは、
私にはとても考えられない、いや想像さえも出来ない事ですねー。
さて、そこでですが、週末にはもう一度何キロかの「山ブドウ」が持ち込まれるのですよ。
貴重品だと信じるお方がお出ででしたら、ぜひ農天市場までお越しください。
もう本当に、今年度はこれでおしまいですからね。